トヨタ・プレミオ2.0G“EXパッケージ”(FF/CVT)/アリオンA15“G-plusパッケージ”(FF/CVT)
本物がわかる大人のセダン 2016.07.22 試乗記 内外装のデザインを大きく変更、装備の充実も図られた、トヨタのセダン「プレミオ/アリオン」。「ライバル車は存在しない」といわれるロングセラーの、クルマとしての見どころは? 最新型に試乗して確かめた。ルーツはかつての花形モデル
いささか不安である。この試乗記に興味を持つ人はどのくらいいるのだろう。プレミオ/アリオンは、自動車好きの関心を引く可能性が極めて低い。クルマの出来うんぬんではなく、ジャンル自体がマイナーだからである。5ナンバーサイズのFFセダンというのは、どう考えても現在の主流ではない。
ルーツをたどれば、1957年の「トヨペット・コロナ」に行き着く。1955年に「トヨペット・クラウン」が誕生して好評を博し、トヨタは一回り小型のモデルを作ってラインナップを広げた。先行した「ダットサン110型」が市場に浸透していて、コロナは苦戦を強いられる。ダットサンは「ブルーバード」と名を変え、1960年代前半にコロナとの熾烈(しれつ)な販売競争が繰り広げられた。世に言う「BC戦争」である。競い合うことによって技術が磨かれ、モータリゼーションが進展していった。コロナは日本を代表する花形モデルだったのだ。
ワゴン、ミニバン、SUVなどが人気を得るようになっていくと、中型セダンは次第に勢いを失っていく。2001年からコロナはもともとサブネームだったプレミオを新たな車名として採用し、イメージ一新を図る。同時に「カリーナ」の後継となったアリオンが姉妹車である。2007年に2代目となり、今回は2010年以来2回目となるマイナーチェンジだ。残念なことに、『webCG』にはその時の試乗記が見当たらない。最新の記事は、2008年3月のアリオンである。8年の長きにわたる不在は、このジャンルが下り坂だったことの反映だろう。
必要としている人がいる
それどころか、「このジャンル」なんてものがすでに消滅している。かつての好敵手ブルーバードは、「シルフィ」となったのを機に3ナンバーサイズを選択した。「ホンダ・アコード」はアメリカンサイズになって久しいし、「マツダ・カペラ」は「アテンザ」になると堂々たる体格を得た。5ナンバーサイズの上品なセダンというのは、新顔の「ホンダ・グレイス」があるものの、50年以上の歴史を背負うプレミオ/アリオンに対抗するのはいささか荷が重い。
だから、ユーザーは浮気のしようがない。コロナから何台も乗り継いでいるというケースも多いそうだ。クルマとともに年を重ね、今やターゲットは65歳以上。80歳オーバーの後期高齢者も珍しくはない。「いつかはクラウン」という言葉があったが、あれは終身雇用制の中で出世にともなって上級車種に移行していくというストーリーだった。会社組織と関係なければ、わざわざ大きいクルマを選ぶ必要はない。
地方の素封家では、派手な大型車は好まれない。エラそうにガイシャなんぞに乗っていると、地元では悪いうわさが立つ。金を持っていたら誰もがハイパワーなドイツ製プレミアムセダンを欲しがると思ったら大間違いだ。実るほど頭を垂れるのが日本の美徳である、かどうかは知らないが、確実にプレミオ/アリオンを求める層が日本全国に遍在している。
こうやって書き連ねてくると、つまらないクルマだと思われそうだ。とんでもない。5ナンバーセダンは決して“オワコン”などではない。実のところ乗る前にはそういう疑念を持たないでもなかったのだが、今では偏見であったと猛省している。
かつてのクラウンを思わせる
わかりやすい変更点は、フロントまわりのデザインである。昨今のトレンドを取り入れ、大型グリルを採用した。オーソドックスな上質さをまとうプレミオに対し、アリオンはモダンでスポーティーというのが当初からのコンセプトである。クラウンでいえば、「ロイヤル」と「アスリート」の違いだ。シルバーメッキの横バーを組み合わせたグリルの真ん中にゴールドの「P」エンブレムが鎮座するプレミオは、いかにも保守的な印象だ。メッシュグリルのアリオンのほうがずっと今っぽい。
クラウンではアスリートが圧倒的に人気だからこのクラスも同じかと思ったら、プレミオとアリオンの販売比率は3:2なのだそうだ。ラグジュアリーからスポーティーに移行したクラウンとは逆に、プレミオ/アリオンでは重厚感が支持されるようになってきたらしい。5ナンバーサイズだったころのクラウンとほぼ同じディメンションだから、プレミオにはかつてのクラウンを想起させる雰囲気がある。いずれにしても、1695mmという幅の中で抑揚のあるフォルムに仕上げるのは簡単なことではない。
内装もメーターまわりを中心に手を入れられている。落ちついてはいるが、古臭さを感じさせないモダンなデザインだ。場末のスナックにあるソファーのようなインテリアとは、とっくの昔に縁を切っている。レースのシートカバーは今もオプションで用意されているが、このクルマには似合わない気がする。
まったく気がつかなかったが、ステアリングホイールを少し大きくして安心感を高めるなどの地味な変更も行われているそうだ。シニア世代を相手にするための工夫もあった。障害物の接近を警告するインテリジェントクリアランスソナーは、危険な状態になると赤い画面に「ブレーキ!」という文字が現れるように変更された。従来は文章で注意を促したが、緊急時には直感的な表示のほうがいい。それはシニアでなくても同じなので、この方式は他車でも採用されることになっている。
日本の美しい5ナンバー
エンジンは従来と同じ1.5リッター、1.8リッター、2リッターの3本立て。試乗したのは1.5のアリオンと2.0のプレミオである。それぞれグレード名は違っていても、同等のパワートレインと装備を持つモデルが選べるようになっている。
1.5リッターエンジンというのは、このクラスにはさすがに力不足に思える。ターボなんて装備されていないし、パワーは109psにすぎない。確かに瞬発力はないし、急加速しようとすれば室内には騒音があふれる。しかし、ゆったりと発進して低速でのんびり走っていると、ギクシャク感のないナチュラルなしつけの心地よさを感じるのだ。それこそが、このクルマに求められる資質である。
2リッターに乗り換えると、走りの質がまったく違っていた。思いのほかスポーティーである。ワインディングロードでも存分に楽しめる。シニア向けで低速がメインだからといって、シャシーセッティングに手を抜いているはずもない。安全性能を高めることは、スポーティーな走りと両立する。乗り心地が柔らかすぎることもなく、ハンドリングもそこそこシャープだ。ヤンチャな青春時代をすごした団塊の世代には、こういうモデルの需要も多いのかもしれない。リアに「VALVEMATIC」のエンブレムが輝いているところなどは、昭和の走り屋が好みそうだ。
ハイブリッドモデルの設定は今回も見送られた。自宅周辺での使用がほとんどというユーザーが多く、燃費の優先順位は低い。予防安全装備が上級版の「Toyota Safety Sense P」ではなく「Toyota Safety Sense C」にとどまったのも、必要にして十分だからである。リアシートの6:4分割可倒式ダブルフォールディング機構、前席フルフラットシートというのは、いま見てもよくできている。後席のリクライニング機構も素晴らしい。くつろげるだけでなく、背もたれを後ろに傾けると隣接する部分がサイドサポートになるので、ドライバーが飛ばしても横Gに耐えられる。
そしてこのクルマの一番の美点はサイズ感だ。クルマがどんどん肥大化する中、けなげに5ナンバーサイズを守り続けている。日本の風土や道路事情に沿って定められたのが5ナンバーという区分である。「日本の美しい国柄を守る」などと言い募っている人々は、プレミオ/アリオンが示す日本の価値にこそ目を向けるべきだろう。
いたずらにサイズを拡大せずとも、ゆったりとした室内空間や至れり尽くせりのユーティリティーを確保できるということを証明した。相変わらず後方視界がよく、バックでの車庫入れが容易なのも良き伝統だ。プレミアムとかハイグレードとかのこれ見よがしな看板に目を奪われることなく、本物を見極めることのできる大人が選ぶクルマである。
(文=鈴木真人/写真=田村 弥)
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テスト車のデータ
トヨタ・プレミオ2.0G“EXパッケージ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1695×1475mm
ホイールベース:2700mm
車重:1270kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:152ps(112kW)/6100rpm
最大トルク:19.7kgm(193Nm)/3800rpm
タイヤ:(前)195/55R16 87V /(後)195/55R16 87V(ブリヂストン・トランザER300)
燃費:15.6km/リッター(JC08モード)
価格:268万6255円/テスト車=332万7937円
オプション装備:195/55R16タイヤ+16×6Jアルミホイール<スーパークロームメタリック塗装、センターオーナメント付き>+本革シート表皮 <パーフォレーション&ギャザー仕様>+SRSサイドエアバッグ<運転席、助手席>&SRSカーテンシールドエアバッグ<前後席>+快適温熱シート<運転席、助手席>+ドアスカッフプレート<フロント、リア/車名ロゴ入り>+ドアトリムオーナメント表皮<合成皮革、パーフォレーション仕様>+ドアアームレスト<合成皮革、ダブルステッチ>+コンソールボックス<アームレスト付き、合成皮革、ダブルステッチ>(31万4280円) ※以下、販売店オプション T-Connectナビ DCMパッケージ(21万9780円)/マルチビューバックガイドモニター(3万9960円)/ITSスポット対応DSRCユニット<ビルトインタイプ>+ナビ連動タイプ<ETC、VICS機能付き>(3万4182円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万3480円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:198km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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トヨタ・アリオンA15“G-plusパッケージ”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4590×1695×1475mm
ホイールベース:2700mm
車重:1200kg
駆動方式:FF
エンジン:1.5リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:CVT
最高出力:109ps(80kW)/6000rpm
最大トルク:13.9kgm(136Nm)/4800rpm
タイヤ:(前)185/65R15 88S /(後)185/65R15 88S(グッドイヤーGT3)
燃費:19.2km/リッター(JC08モード)
価格:226万9963円/テスト車=275万9365円
オプション装備:ボディーカラー<ブラッキッシュアゲハガラスフレーク>(3万2400円)/185/65R15タイヤ+15×6Jアルミホイール<センターオーナメント付き>(6万4800円)/SRSサイドエアバッグ<運転席、助手席>&SRSカーテンシールドエアバッグ<前後席>(6万4800円) ※以下、販売店オプション T-Connentナビ DCMパッケージ(21万9780円)/マルチビューバックガイドモニター(3万9960円)/ITSスポット対応DSRCユニット<ビルトインタイプ>+ナビ連動タイプ<ETC、VICS機能付き>(3万4182円)/フロアマット<ラグジュアリータイプ>(3万3480円)
テスト車の年式:2016年型
テスト開始時の走行距離:221km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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