トヨタ・サクシード1.5TX Gパッケージ(4AT)【ブリーフテスト】
トヨタ・サクシード1.5TX Gパッケージ(4AT) 2002.08.06 試乗記 ……152.3万円 総合評価……★★サクサクこなそう、サクシード!
「バン、バン、行こう!」というベタなコピーで売り出されたトヨタ(とダイハツ共同開発)の“新世代”商用車「プロボックス」&「サクシード」。旧「カローラバン」と旧「カルディナバン」を車種統合して開発費を捻出、シブチン(!?)トヨタとして画期的な、専用シャシー&ボディをもつ商用“ゴージャス”姉妹バンである。バン、バン、ババババ、バババ、バン!!
先代ではリーフスプリング(板バネ)を使っていたリアサスは、ニューモデルではコイルスプリングを用いた5リンク式のリジッド(車軸式)に進化。ライバル日産「ADバン(ウイングロードの商用版)」&同「エキスパート(アベニールの商用版)」の半独立式リアサス「トーションビーム」を横目で見ながら、完全独立サスに2階級特進しないあたり、いかにも慎重なトヨタらしい。
新世代カルディナバンことサクシード、ボディサイズからいうとカローラバンに吸収されたカタチだが、小柄なボディに大きな荷室。A4コピー箱90コが収納可(2名乗車時)。ちなみに、カルディナバンは74コ、エキスパートは79コ。ミカン箱でいうと、サクシードの39コに対して、エキスパートは35コ。サクシードは、35cmも全長短いのに!! さすがは四角いスペシャルボディだ。
商用バンは、日本の路上で最もトバすジャンルのクルマだけに、安全面にも配慮された。GOAボディほかを得て、2トンの「トヨタ・セルシオ」に、前、横、後から衝突されても大丈夫(双方、50km/h走行時)とトヨタは主張する。余談だが、フロントバンパーは樹脂製ではなく、通常ならその裏に隠れている補強材そのもの。コストダウンのためには、下着もキレイにしなくっちゃ!?
ガソリンモデルは、「平成12年基準排出ガス75%低減レベル」いわゆる3ツ星を達成したのがエライ。「鉛フリー燃料タンク」も隠れた環境性能(アルミメッキ鋼板だァ!)。
テスト車の「TX Gパッケージ」は、「休日は自家用で使うヒト用」の5ナンバー乗用車版。乗用車基準で見ると、「乗り心地」や「快適性」はもうひとつだけれど、平日は、クルマのなかで伝票書いて、弁当食べて、サクサク仕事をこなして、サクシード(成功)……って、ベタですね。出口の見えない不況ニッポンで、もっとマジメに働け、と?
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
2002年7月2日に発表されたコマーシャルバン、つまり商用車。新開発のシャシーと専用ボディが与えられた。カルディナバンの後継モデルにあたるのが「サクシード」、カローラバンのそれが「プロボックス」。両者の違いは、前後バンパーほかコスメティックな差異のみ。後席と荷室の寸法が、わずかにサクシードの方が長いけれど、基本的な構造は変わらない。
動力系は、1.5リッター(4AT/5MT)と1.4リッターディーゼルターボ(5MT)、プロボックスにはさらに1.3リッター(4AT/5MT)が加わる。駆動方式はFFをベースに、ガソリン車にはビスカスカプリングを用いた4WDが用意される。
いずれにも後席の面積を広げ、サイドプロテクションモールを付け、165/80R13タイヤ(サクシードの上級グレードは175/65R14)を履いた5ナンバー(乗用車)モデルがカタログに載る。エンジンは、1.5リッターのみだ。
(グレード概要)
サクシードは、トリムレベルによって、下から「U」「UL」「UL Gパッケージ」がラインナップされる。乗用車版「サクシードワゴン」は、5ナンバー登録のため(だけ)の「TX」と、一般乗用車市場も狙った「TX Gパッケージ」の2種類がある。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★
車内を「職場」にするための幾多の工夫。何でも放り込める「ワイドフリーラック」ことフタなしグローブボックス、ノートパソコンや弁当が置けて、伝票も書ける引き出し式「インパネテーブル」、センターコンソール下部の鍵付き物入れ「センターボックス」は(超)簡易金庫だ。右手を伸ばせばインパネ右端にカード、コイン、さらにはペン差しまで! 左右前席間には「A4バインダー立て(パーキングブレーキに被さりにくいよう左側に傾く工夫付き)」、オプションながら一般的なコンセント「AC100V電源」も設置可能だ。サンバイザーの裏にカードや耳掻き(!)などを挟むことを考慮して、その部分の天井はやや凹む。灰皿は、次にガスステーションに寄るまでもつように、と、400ccの大容量。うへェ……。そのほか、ステアリングホイールの向こうの大きな速度計も専用パーツだ。見やすい。6段階の照度調整ができる。
(前席)……★★★
サクシードは、ビニール表皮を全廃、ファブリックを標準とする。全グレードに、シート全体を上下に動かせるハイトコントロールが付く。足の短いセールスパーソンには嬉しい装備だ(従業員の福祉のため、今後、トヨタがコストダウンの要求に負けませんことを!)。座り心地はソフト一辺倒で、短い試乗時間内では快適だった。バックレストは、追突されたときに、頭部が急激に後退しないよう、背もたれが沈むWIL(頸部傷害低減)構造をとる。加えて、受動安全装備として、前席にはダブルエアバッグが標準で装備される(助手席側レスオプションあり。−1.8万円)。また、プロボックス&サクシードでは、前後ドア内部のベルトラインが、側面衝突に備えて強化された。
(後席)……★★
プロボックスの上位車種たることを最も声高に主張するのがリアシート。はなから背もたれを倒して荷室とつなげることを前提につくられたプロボックスのビニールシートと比較すると、こちらは布が使われ、ラゲッジルームを拡大するときも座面を前に倒してからバックレストを倒す「ダブルフォールディング」式が採られる。ヒトが、「モノとして扱われる」屈辱感なしに座ることもできる。ワゴン版には、ヘッドレストが2つ付くし。
(荷室)……★★★★★
「畳もコピー機も」運べると謳われる文字通りの荷室。切り立ったリアドアと、大きな開口部がプロ仕様だ。重いものをひきずり出せるよう、バンパーレベルがフロアより低い。サクシードのラゲッジはプロボックスより15mm長く、A4コピー箱をひとつよけいに積めるという。床面最大幅136cm、奥行きは115cm。カーペットも、相対的にちょっと上等。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
「VVT-i(連続可変バルブタイミング機構)」を備えた1.5リッター“BEAMS 1NZ-FE”ユニットは、最高出力109ps/6000rpmと最大トルク14.4kgm/4200rpmを発生する。ピストン頂部の形状を変えて燃費を稼ぎ、エグゾーストマニフォルドを薄く短く細くして三元触媒の立ち上げを早めることで環境性能を改善した。3ツ星レベルの「超-低排出ガス」対応、かつ2010年燃費基準を達成(ワゴンの4WDを除く)。組み合わされるトランスミッションは「Superインテリジェント4段AT」だから、動力系に関しては、「ヴィッツ」「カローラ」といった乗用車と何ら遜色ない。ただし、単なる5ナンバーワゴンとして考えると、室内へのノイズの侵入は、絶対的には大きい。
(乗り心地+ハンドリング)……★★
まったくの空荷での“ちょい乗り”だったため、商用バンとしての評価はできない。
街乗りでは、細かい突起などを越えるときにリアサスが跳ね、リジッドを感じさせた。軽いとソフトに、加重がかかると硬くなる「非線形たる型コイルスプリング」が後脚に採用されたというが……。一方、高速巡航は安定していて、“商用バン”を感じさせない。ブッ飛ばす白バンがますます増えそう(!?) 特に意識することはなかったが、プロボックス&サクシードのブレーキには、先代よりひとまわり厚い「ベンチレーテッドディスク」が奢られた。EBD(制動力を前後に適正分配する)付きABSが、全車に標準装備される(レスオプションあり。−3.2万円)。
(写真=林渓泉)
【テストデータ】
テスト日:2002年7月17日
報告者:webCG青木禎之
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2002年型
テスト車の走行距離:−−
タイヤ:(前)175/65R14/(後)同じ
オプション装備:ハイマウントストップランプ(0.8万円)/ワイヤレスドアロック(1.7万円)/アクセサリーソケット(1.1万円)/ラジオ+2スピーカー(1.2万円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8):高速道路(2)
走行距離:−−
使用燃料:−−
参考燃費:−−

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
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