スバル・レガシィTS typeR(4AT)【ブリーフテスト】
スバル・レガシィTS typeR(4AT) 2001.12.05 試乗記 ……261.3万円 総合評価……★★★★スプリンターよりマラソンランナー
いうまでもないことかもしれないが、レガシィは国産ツーリングワゴン市場を開拓した先駆者である。以前、富士重工の竹中恭二社長に、1970年代半ばに同社が経営難に陥った原因を伺ったことがある。竹中氏によれば、大手メーカーのマーケットに迎合したクルマづくりが「敗因」だったという。そこで、「自分たちが作りたいクルマを、自信のある技術でつくろう」と開き直った結果がレガシィの成功だったそうだ。こういう話を聞くと、判官贔屓(?)もあわさって、レガシィを応援したくなるというもの。
しかしひとつ疑問なのは、レガシィツーリングワゴンの中でも280psの「2ステージツインターボ」を搭載するGTグレードが人気である点だ。ユーザーの支持のみならず、メーカーとしても高出力バージョンをプッシュしている感がある。ツーリングワゴンというクルマの本質を考えると、これには合点がいかない。ツーリングワゴンは「短距離走」よりも「長距離走」を目指すべきだと思うのだが、いかがなもんでしょう。たとえば、かつて本欄でテストした「GT-B Eチューン」(5MT)のテスト燃費は7.0km/リッター。走行条件が異なるので単純比較はできないが、こちらNAのTS typeRは9.0km/リッター。イニシャルコスト、ランニングコストともに懐に優しいうえ、無給油で走ることができる距離も違う。そんなこんなで、たったの(?)155psしかないTS typeRは、非常に興味のあるツーリングワゴンだ。
【概要】 どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年6月17日に登場した3代目レガシィ。看板モデルたる「ツーリングワゴン」、車高を上げ、SUV的な性格が与えられたワゴン「ランカスター」、そしてスポーティセダン「B4」に大別される。ツーリングワゴンは、ボディサイズを5ナンバー枠にとどめたまま、ホイールベースを20mm延長して室内空間を稼ぎ、ボディ剛性を上げ、リアにマルチリンク式サスペンションを採用した。エンジンは、3.0リッター6気筒を筆頭に、2.5リッターNA(自然吸気)、2リッターターボ、同NAのDOHCとSOHCがラインナップされる。駆動方式は、全車4WD。
2001年5月22日のマイナーチェンジにより顔つきが変わり、エンジンは吸気システムレイアウトが変更されたことで、中低速トルクを増大。さらにリアサスペンションの剛性を上げる(ターボモデルはフロントサスペンションも改良)などの改良が施された。
(グレード概要)
TStypeRは、2リッターDOHC16バルブNAユニットを搭載したモデル。可変バルブ&吸気システムを搭載し、同排気量のSOHCユニットと比較して18psと1.0kgm大きい、155ps/6400rpmの最高出力と20.0kgm/3200rpmの最大トルクを得る。当然、シングルカムモデルよりスポーティな位置づけで、倒立式フロントダンパー、1インチ大きな16インチアルミホイールなどを装備する。
SOHC、DOHC問わず、2リッターNAモデルAT車の4WDシステムは、「アクティブトルクスプリット4WD」。これは、駆動力を基本的に前後半々に分け、状況に応じて電子制御でトルク配分をコントロールするものだ。ちなみに、ターボモデル(AT車)は、前:後=35:65をベースとする「VTD-4WD(不等&可変トルク配分電子制御4WD)」を採る。
【車内&荷室空間】 乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★
ひとことで言って、黒を基調にしたデザインが古臭い。メーター類の視認性がいいのは認める。スイッチ類の操作性もいい。けれども、「10年前のクルマだよ」と言われたら信じてしまいそうなたたずまい。デザインが新しいほうがいいというのは自動車評論的な見方で、ユーザーにとってはホッとする居心地のいい空間なのかもしれないが、それにしても新味にかける。機能の部分に文句はないが、官能に訴えてこない。商用バンではなくて、愉快な場所に遊びに行くクルマなんですから。楽しいのがマッキントッシュのオーディオだけというのは寂しい。
(前席)……★★★★
見た目は何の変哲もないシート。だがいざ座るとひしひしと伝わってくる真面目なつくり。室内を広く見せるために座面長を短くするクルマもあるなか、フトモモの裏からヒザの裏までしっかりサポート。コーナリング時のホールド性能に優れるのはもちろん、ロングドライブでの疲労感低減にも一役買う。バックレストのクッションもグッドで、お金をケチっていない印象。真面目といえば、無骨なデザインのドアミラーが、抜群の視認性を確保している点も真面目。
(後席)……★★
5ナンバー枠に収まり、なおかつこれだけの後席レッグスペースと頭上空間を確保したのは立派。よその3ナンバーワゴンは何をやっとるか、と、他社にとんだトバッチリ。ただし、スペース効率は立派なれどシートのできはいまひとつ。まず座面長が短いために体をホールドしてくれない。よって、コーナーでは体を支えるのが難しく、バックレストが薄くて固いこともあって疲れる。前席に傾けた情熱を後席にも。やればできるんだから。
(荷室)……★★★★
リアサスのラゲッジルーム内への出っ張りが小さいため、全体にスクエアな形状。フロアもたいらで、有効床面積は広い。ただし、パーセルシェルフを用いると天地方向がグッと低くなることは知っておくべき。全体に荷物は積みやすい。フロアをめくると下が掘り炬燵のようになっているのも、使ってみると予想よりモノが入って便利。
【ドライブフィール】 運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★
市街地を走る限り、最高出力155ps/6400rpmを発生する排気量1994ccの水平対向4気筒DOHCユニットに力不足は感じない。高速道路での100km/h以上からの加速感や、山岳路での急勾配の登り坂ではもうちょっとパンチがあれば、とも思うが、信号待ちからの発進加速くらいならこれで十分。ちなみに、ボア×ストロークが92.0×75.0mmのフラット4は、最大トルク20.0kgmを3200rpmという低回転で生み出す。ツインターボ280psの動力性能にはシビレますが、一方、TSの朴訥な印象のエンジンで目的地まで心穏やか。朴訥、と書きましたが、4500rpmから上まで回したときの音とフィールは「ソリッド&シャープ」で、スポーティな気分も味わえる。黙々と仕事をこなす4ATは印象的でないけれど、それはATに対する誉め言葉。シフトショックはごく小さく、限られた出力をスムーズに路面に伝える。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
ハンドリングには大いなる感銘を受けた。エンジン縦置きレイアウトによる素直な動力伝達が功を奏してか、あるいは重心が低い水平対向エンジンのメリットがいかされてか、アンダーステアはごく軽微。操舵に応じて、素直にノーズが向きを変える。ヤバイ! と思うと、前後輪に適切なトルクを配分するスバル自慢の4駆システムが助け船。「安全」と「ファン」のバランスポイントがすこぶる高い。しかしながら、路面のザラザラを率直に車内へと伝える乗り心地はちょっと安っぽい。主犯は、テスト車の7〜8分山になって美味しいところを使い果たした感のあるポテンザRE030と見る。長〜くつき合いたいクルマだから、OEMタイヤも長く使いたい。路面の不整に煽られてもすぐに姿勢を整えるフラット感は評価できる。
(写真=河野敦樹)
【テストデータ】
報告者:佐藤健(NAVI編集部)
テスト日:2001年10月3日から4日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2001年
テスト車の走行距離:4149km
タイヤ:(前)205/50R16/(後)同じ(いずれもブリヂストンポテンザRE030)
オプション装備:HIDヘッドランプ、スポーティパック(ルーフスポイラ-と濃色ガラス)、マッキントッシュオーディオ
走行状態:市街地(3):高速道路(6):山岳路(1)
テスト距離:319.1km
使用燃料:35.4リッター
参考燃費:9.0km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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