第275回:ブリヂストンの全輪駆動電動アシスト自転車に乗ってみた
2015.01.24 エディターから一言ブリヂストンサイクルは2015年1月19日、新型電動アシスト自転車「アルベルト e」を同年2月下旬に発売すると発表した。
体験試乗会も行われた、製品発表会の様子をお伝えする。
過酷化する通学事情
このたび発表されたアルベルト eは、通学用自転車として人気の高い「アルベルト」に電動アシスト機能を搭載したものだ。
「通学用自転車に電動アシスト」と聞いて「若いんだから、自分の足でこげよ」などと思ってしまったが、近年は特に地方において、通学環境が悪化の一途をたどっており、通学用電動アシスト自転車のニーズが高まっているというのだ。
アルベルト eの開発を担当したブリヂストンサイクル 商品企画一課課長の瀬戸慶太さんは、商品説明プレゼンテーションの中で、少子化に伴う高校の廃校や、過疎化による鉄道・バス路線の廃線で「通学の過酷化」が深刻だと強調した。
ブリヂストンサイクルの調査によると、自転車通学者のおよそ35%が、片道30分以上かけて通学しているそうだ。
1日60分、距離にして15kmを年200日通うとすると、年間走行距離は3000kmにもなる。下手をするとお父さんの「プリウス」よりも長い距離を走っていることになるかもしれない。
地方都市を舞台にした青春映画などで、自転車通学のシーンを目にするとほのぼのとした気分になるが、「過酷通学」の経験者には「あんな生易しいものじゃない」という感想を持つ人も多いのだろう。
「全輪駆動」の電動アシスト自転車
こうしたニーズに対するブリヂストンサイクルの答えが、シリーズ累計100万台のベストセラー通学自転車、アルベルトの電動アシスト化だ。
アルベルトは、アルミ製のフレームにチェーンではなくベルトドライブを組み合わせた、メンテナンスフリーと高耐久性が特徴の自転車だが、アルベルト eはその特徴を受け継ぎながら電動アシスト化するために、通常の後輪ではなく前輪を電動アシストする方式を採用する。
つまり、後ろが人力、前が電動の「全輪駆動自転車」となるわけである。
メンテナンスフリーのベルトドライブに、従来型の「センタードライブ」と呼ばれるペダルクランク付近にモーターを設置した電動アシストシステムを組み合わせると、ベルトに対して負荷がかかり過ぎてしまうため、前輪をアシストする方式としたそうだ。
このシステムをブリヂストンサイクルは「BSデュアルドライブ」と名付けた。
全輪駆動の自転車というと「キワモノ」的な扱いをされがちであるが、アルベルト eの乗車感は非常に自然で、従来型の電動アシスト自転車よりもむしろ好印象だった。
特に、電動アシスト自転車に特有の、こぎだした瞬間にフロントが浮くような感覚がない。
あれはあれで力強さが感じられて個人的には好きなのだが、アシストの自然さという点では、前輪アシストに分があるようだ。
発表会場となったビルの地下駐車場に設けられた試乗コースにはスロープがあり、何度か上り下りしてみた。
坂を上る際のアシストも極めてスムーズ。後輪アシストタイプの「見えざる手」に押される感覚ではなく、地球の重力が減ったかのようなフィーリングだ。
どちらも通常の自転車に比べると超日常的な、全能感さえ覚えてしまいそうな魅力的な乗り味だが、アルベルト eのナチュラルでありながらも力強いアシスト感はこれまで経験したことのないものだった。
回生ブレーキも搭載
ひとつ心配なのは、前輪がスリップしてしまった際の挙動だが、前輪の空転を検知してアシストを制御するシステムを搭載している。実際に体験することはできなかったが、雨や多少の雪でも学校を休むことができない学生には、安心の装備だろう。
さらに、BSデュアルドライブでは前輪にモーターを持つことを生かし、下り坂などでブレーキレバーを握った際に、回生ブレーキを利用してブレーキをアシストするシステムを搭載している。
ブレーキアシストはさほど強力には介入しないようで、試乗した環境では効果をあまり実感できなかった。逆に言うと、それだけ自然だということだろう。
ブリヂストンサイクルでは、BSデュアルドライブ搭載車をアルベルト e以外にも拡大していくとのことなので、ぜひともよりスポーティーなモデルで、この乗り味を経験してみたいものだ。
さて、気になるアルベルト eの価格だが、27インチ5段変速のモデルがスポーティーなフレーム形状のS型、標準的なL型ともに13万1544円。26インチ3段変速のモデルはL型のみの展開で12万9384円。
電動アシストではない「アルベルト ロイヤル」よりも5万4000円高いが、3年間で9000km走行すると考えると、ぜいたくな金額とはいえない気がしてくる。
子どもたちが通学で苦労するか、それともお父さんお母さんがちょっとガンバるか、大いに悩むことだろう。
(工藤考浩)

工藤 考浩
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る 2026.6.6 相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメントで最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
NEW
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。