ジープ・グランドチェロキー サミット(4WD/8AT)
快適さと価格が魅力 2016.05.27 試乗記 ダイムラーとの協業によって誕生した現行型「グランドチェロキー」。5.7リッターV8エンジンを搭載した上級グレード「サミット」の走りを試すとともに、高級SUVとしての“お買い得度”を検証した。くるか!? ドロドロ音
現行の4代目グランドチェロキーは2010年に登場した。もうお忘れの方もいるかもしれないが、クライスラーは1998~2007年、ダイムラーと合併していた。その間にメルセデス・ベンツとの間でいくつかのプラットフォームを共用してそれぞれの製品を開発した。4代目グランドチェロキーもそう。発売されたタイミングにはすでに両社は袂(たもと)を分かっていたが、その前に開発した関係で「メルセデス・ベンツMクラス」(現「GLE」)とプラットフォームを共用している。その後、クライスラーはフィアットと結婚してFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)となった。4代目はつまり連れ子的な存在といえるかもしれない。
現行グランドチェロキーにはV6搭載モデルとV8搭載モデルがある。V6も悪くない。動力性能面で不満はない。ただ、クロスプレーンのV8エンジンが発するドロドロという音と回転フィーリングがないと雰囲気出ないじゃん、やっぱり。というのが、V8を搭載するサミットを今回の話の種に選んだ理由。
サミットが搭載するV8エンジンは、5.7リッター自然吸気のOHV。燃焼室の形状に由来してHEMI(ヘミ)エンジンと呼ばれる。エンジンを始動する。くるか? 待ち合わせ場所である早朝の東新宿にドロドロ音を轟(とどろ)かせるか!? と思ったが、全然こなかった。最新のヘミはアイドリングだと、かかっているのかいないのかわからないほど静かで、回転フィーリングはデッドスムーズだった。
家族もよろこぶ快適さ
若干肩透かしを食らったが、気を取り直して発進。アクセルを踏むと、遅れなく即座に加速Gを感じる。ガバッと踏んでガバッと加速するのはいいとして、微妙なアクセルワークにも、正確に、敏感に反応するのが素晴らしい。近ごろはやりの過給機付きエンジンじゃこうはいかない。過給機付きもよくできていて、ほとんどの場面でレスポンシブだが、発進時のタイヤひと転がり、ふた転がりの領域の反応のよさは、大排気量自然吸気のマルチシリンダーエンジン以外では成し得ない。
高速道路に入って、アクセルを深く踏んでエンジンに負荷をかけてみる。ここでようやくきました、ドロドロ音。待ってました! ただし想像していたより音量も振動も控えめ。まぁこれは洗練と受け止めよう。パワーは最高出力352ps/5200rpm、最大トルク53.0kgm/4200rpmというスペックから期待した通りのもので、2380kgの車重を忘れさせる。8段ATは頻繁に変速するものの、変速ショックも加速の途切れ感もほとんどないのでビジーという感じではない。
高速を降り、曲がりくねった一般道を行く。サミットに備わるエアサスは、悪路走行時に上げて、乗降時に下げるなど、車高を自由自在にコントロールできるだけでなく、乗り心地にも大きく貢献する。硬すぎず柔らかすぎず、道路の段差や不整部分をタン、タンと角を丸めてやり過ごしてくれる。この日の試乗とは別の機会にこのクルマの後席で長時間過ごしたが、後席がまた快適なのだ。前席の乗り心地はよいが、後席のそれはもうひとつというクルマがとかくSUVには多いが、グランドチェロキーは速度域を問わず快適なので、家族や仲間をよく乗せるという人にも薦められる。
パワーにものをいわせて山道をぶっ飛ばすのに最適なクルマとは言わないが、飛ばしたら飛ばしたで破綻なくこなす。コーナーの連続で2.4トンの巨体を右へ左へと振り回しても、必要以上にグラグラしないのは、これもエアスプリングとダンパー、それに前:ダブルウィッシュボーン、後ろ:マルチリンクで構成されるサスペンション全体のおかげだろう。
ライバルと比べてダントツに安い
さて、グランドチェロキー サミットは736万5600円。他のクルマと比較してみるとこの価格がバーゲンだということがわかる。大ざっぱではあるが、同じようなV8エンジンを搭載する、もしくは直4、V6+過給機で同程度のパワーを発生するライバルと比較してみよう。
・メルセデスAMG GLE43 4MATIC(3リッターV6ターボ):1150万円
・BMW X5 xDrive 50i(4.4リッターV8ターボ):1152万円
・アウディQ7 3.0 TFSIクワトロ(3リッターV6スーパーチャージャー):929万円
・ボルボXC90 T6 AWDインスクリプション(2リッター直4ターボ+スーパーチャージャー):909万円
・レクサスLX570(5.7リッターV8):1100万円
と、グランドチェロキー サミットがダントツで最も安い。中には必ずしもサミットと比較するのがフェアではないモデルがあるが、スペックや装備は大きくはかけ離れていないはずだ。これらの銘柄のうち、今度は価格が近いモデルを挙げてみる。
・メルセデス・ベンツGLE350d 4MATIC(3リッターV6ディーゼルターボ):868万円
・BMW X5 xDrive 35d(3リッター直6ディーゼルターボ):888万円
・アウディQ7 2.0 TFSIクワトロ(2リッター直4ターボ):804万円
・ボルボXC90 T5 AWDモメンタム(2リッター直4ターボ):774万円
・トヨタ・ランドクルーザー200ZX(4.6リッターV8):682万5000円
という感じで、国産車のランドクルーザーを除くと、ライバルは6気筒ディーゼルか4気筒ガソリンのいずれも過給機付きエンジンとなる。総合的に考えてグランドチェロキー サミットはコストパフォーマンスが高いクルマだ。大きめSUVのどれを買おうかと迷っている人に、はっきり何を買うべきか指南するのは難しいが、ひと通りドイツ車+ボルボ+レクサスあたりを試し、契約するその前に、グランドチェロキーにも一度は試乗してみるべきということはアドバイスしたい。
(文=塩見 智/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
ジープ・グランドチェロキー サミット
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4880×1945×1805mm
ホイールベース:2915mm
車重:2380kg
駆動方式:4WD
エンジン:5.7リッターV8 OHV 16バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:352ps(259kW)/5200rpm
最大トルク:53.0kgm(520Nm)/4200rpm
タイヤ:(前)265/50R20 107V M+S/(後)265/50R20 107V M+S(クムホ・ソラスKL21)
燃費:6.4km/リッター(JC08モード)
価格:736万5600円/テスト車=745万7200円
オプション装備:ボディーカラー<ブリリアントブラック クリスタルP/C>(5万4000円)/フロアマット(3万7800円)
テスト車の年式:2015年型
テスト車の走行距離:4927km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:499.9km
使用燃料:72.4リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:6.9km/リッター(満タン法)/13.3リッター/100km(約7.5km/リッター、車載燃費計計測値)
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塩見 智
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