スズキ・ハスラー ハイブリッドX(FF/CVT)
認定クラシックカー 2026.07.04 試乗記 スズキの軽クロスオーバーモデル「ハスラー」のマイナーチェンジモデルが登場。愛らしいフロントマスクにお化粧直しが施されたほか、先進運転支援装備が一段と充実。さらに走行性能の強化も図るなど、そのメニューは盛りだくさんだ。「ハイブリッドX」グレードのFFモデルに試乗した。さらに安全・安心に
最新のスズキ・ハスラー ハイブリッドXのFFモデルに乗り、中央フリーウェイの石川PAに着いたところで室内を見渡す。改良前とどこがどう違うのか? パーキングブレーキが電動化されている! アダプティブクルーズコントロール(ACC)に渋滞時の停止保持機能が加えられているからだ。もしもフットブレーキのままだったら、ストップ&ゴーのたびにガッチャンガッチャン、もしくはギギっとパーキングブレーキのペダルを踏み込んだり戻したりすることになる……かもしれない。
改良型ハスラーではスズキの軽初のブラインドスポットモニターとリアクロストラフィックアラートが全車標準装備になってもいる。前者は15km/h以上で走行中、斜め後ろから接近してきたクルマをミリ波レーダーで検知し、検知した側のドアミラーが光ることでドライバーに知らせる。後者は駐車場等で後退中に、接近するクルマをこれまたミリ波レーダーで検知して警告するシステムである。
「デュアルセンサーブレーキサポートII」という名前の衝突被害軽減ブレーキも全車標準装備になっている。単眼カメラとミリ波レーダーの組み合わせによって前方の車両と歩行者、さらに自転車、バイクも検知してドライバーに警告し、衝突の可能性が高まると自動的に強いブレーキをかけるシステムで、交差点の右左折時にも対応している。
車線維持支援機能なんて運転支援システムも標準装備する。ニッポンの国民車たる軽では、安全性にかかわる先進デバイスが当たり前になりつつあるとはいえ、スズキはそれを175万8900円で実現しているのだ。すごくないですか。
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シャシーにも改良の手
今回の一部仕様変更では、標準型ハスラーの顔にメスがちょこっと入っている。狭かったグリルがガバッと広げられ、もうひとつのハスラーとして2024年に登場した「ハスラー タフワイルド」なるタフ&ワイルド感を強調した別バージョンとの差異化が図られている。ハスラーとハスラー タフワイルド。グリルとバンパーを変えると、なるほど、雰囲気が変わる。
走行性能面では以下の改良が図られている。
- 電動パワーステアリングを見直し、低速域でのハンドル操作力を軽くした。交差点などでハンドルを切った際の戻りをスムーズに、高速域でのハンドル操作に対して、車両の応答遅れを低減した。
- 「アクティブコーナリングサポート」の採用。ESP(エレクトリックスタビリティープログラム=車両走行安定補助システム)を活用して、コーナリング時の車両姿勢の乱れを事前に予測し、前輪のブレーキを制御することで内側への巻き込みや大回り、つまりオーバーステアやアンダーステアを抑制する。スズキの主張によれば、これによって、乗員の体や頭の揺れが小さく、穏やかになり、快適性も改善している。
- エンジンアンダーカバーの追加により、車室内の静粛性が向上。
改良項目には上がっていないけれど、気になったのは足まわりのセッティングである。ハスラーって、こんなにシャッキリしていたっけ?
より真っすぐ走る……けれど
筆者がハスラーに触れたのは2020年のことで、出たばかりの第2世代のターボの4WDに試乗したのみである。以来、丸っと6年の空白があるので比較することはできないけれど、最新型の自然吸気のFFは、いちばん穏やかなモデルのはずなのに、バネもダンパーもハード方向に振られている……ような気がする。
それこそ電動パワーステアリングのプログラムを変更しただけなのかもしれない。にしても、筆者の記憶のハスラーより、舵への入力に対してフロントのサスペンションがきちっと仕事をしている。つまり、車線維持支援機能を持たせたことに関連して、足まわりの改良が加えられている……という印象を受ける。
高速走行時にACCをセットすると、自動的に車線を維持すべく、コーナーに合わせてステアリングが左右にちょっぴり動く。その際、グラリとロールしていたら、支援もままならない。ハスラーは最低地上高160mmのクロスオーバーだから重心は高めで、軽規格ゆえにトレッドは狭い。脚を固める必要がある、はずである。
少なくとも、乗り心地はちょっと前の軽。あまり動かない脚をゴムブッシュで対応している、みたいな感じがする。とりわけ一般道の凸凹路面でつらい。どうしたって揺すられる。軽なんだから仕方がない。その代わり、高速安定性は6年前に乗ったターボの4WDよりもヨカッタ。
乗っかるかたちのクラシック
ハイブリッドを名乗るものの、スズキのそれはマイルドハイブリッドである。自然吸気の657cc 3気筒DOHC 12バルブはツインインジェクション、圧縮比12.0で、最高出力49PS/6500rpmと最大トルク58N・m/5000rpmを発生。2.6PSと40N・mのISG(モーター機能付き発電機)が発進&加速時にアシストする。
ということだけれど、CVTのせいか、モーターのアシスト感はそれほどでもない。例えばゼロ発進時、ガバチョとアクセルを開けると、CVTの特性でエンジン回転がガーッと上がってから加速する。アイドリングストップの再始動時も、のんびりしている。パワーの流れを映し出すモニターを眺めていても、ISGはもっぱら発電に勤しんでおり、駆動力として活躍する時間は短い。ロックトゥロックが3回転半以上もあるスローなステアリングゆえ、ワインディングロードが楽しいわけでもない。エンジン音も快音とはいえない。
自然吸気の49PSだと、中央自動車道の談合坂SA手前の上り坂は少々つらい。非力ゆえ、ACCも前のクルマが加速すると、置いてけぼりになる。渋滞時はなおさらだ。高速に上がると、ラジオのボリュームを上げる必要もある。
それでもハスラーは魅力的だ。その理由の多くは、2014年発売の初代からほとんど変わらぬスタイリングにある。これって「日産Be-1」の系譜に連なっている、といえるかも……。丸目の愛らしいフェイスに、ミニ「ハマーH3」風の四角いボディー、2トーンのペイントはソフトトップにも見え、フロントスクリーンが立った室内からの眺めはクラシックカーを思わせる。クラシックの認定を受ければ、しめたもの。ハードウエアを超越した存在。サンダルも、下駄とか雪駄は文化ですから。
(文=今尾直樹/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝/車両協力=スズキ)
テスト車のデータ
スズキ・ハスラー ハイブリッドX
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=3395×1475×1680mm
ホイールベース:2460mm
車重:830kg
駆動方式:FF
エンジン:0.66リッター直3 DOHC 12バルブ
モーター:直流同期電動機
トランスミッション:CVT
エンジン最高出力:49PS(36kW)/6500rpm
エンジン最大トルク:58N・m(5.9kgf・m)/5000rpm
モーター最高出力:2.6PS(1.9kW)/1500rpm
モーター最大トルク:40N・m(4.1kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)165/60R15 77H/(後)165/60R15 77H(ダンロップ・エナセーブEC300+)
燃費:24.3km/リッター(WLTCモード)
価格:175万8900円/テスト車=210万6720円
オプション装備:ボディーカラー<フュージョンイエローパールメタリック×ガンメタリック ツートン>(4万9500円)/全方位モニター付きメモリーナビゲーション<スズキコネクト対応通信機装着車>(21万7800円) ※以下、販売店オプション フロアマット<ジュータン>(2万6180円)/ETC車載器(1万5400円)/ドライブレコーダー(3万8940円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:137km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:419.7km
使用燃料:23.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:17.8km/リッター(満タン法)/18.1km/リッター(車載燃費計計測値)

今尾 直樹
1960年岐阜県生まれ。1983年秋、就職活動中にCG誌で、「新雑誌創刊につき編集部員募集」を知り、郵送では間に合わなかったため、締め切り日に水道橋にあった二玄社まで履歴書を持参する。筆記試験の会場は忘れたけれど、監督官のひとりが下野康史さんで、もうひとりの見知らぬひとが鈴木正文さんだった。合格通知が届いたのは11月23日勤労感謝の日。あれからはや幾年。少年老い易く学成り難し。つづく。
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