ルノー・ウインド(FF/5MT)【試乗記】
脱力系遊びグルマ 2011.09.15 試乗記 ルノー・ウインド(FF/5MT)……255万円
大衆車をベースにつくられたファンカー、それが「ウインド」の実体である。その成り立ちは走りやパッケージングにどう影響する? “風”を名乗るフレンチオープンの乗り味を試した。
インポーターの英断
屋根が開くオープンカーだから、「ウインド」(風)。世界的に車名が底をついている今、こんなにシンプルな名前をルノーが所有しているとは思わなかった。まずこの車名に一本とられる。
ウインドは「トゥインゴ」ベースのコンパクトな2座オープンカーである。ATモデルはつくっていないし、今後、計画もないため、左ハンドル/マニュアルの本国仕様をエイヤッと輸入した。サイズに余裕のないコンパクトカーでは、オリジナルの左ハンドルを右に換えると、えてして機械的に副作用が出がちだ。ルノー・ジャポンの英断がうれしい。
ハード的にもう一本とられるのは、なんといってもこの電動オープン機構である。純粋2座コクピットの後ろには、リアウィンドウが立っている。オープンといっても、いわゆるタルガトップだから、屋根の面積が小さい。それを利用したすごくシンプルな開閉機構を採用した。
ロックを外し、スイッチを押すと、ルーフパネルが一枚のまま後ろに180度反転して、トランクリッドの上の収納スペースに収まる。その間たったの12秒。パワーウィンドウのような手軽さで開け閉めできる。
ただ、ひとつ気をつけないといけないのは、ルーフが垂直まで立ち上がるので、上空にスペースがいること。全高2メートルのウチの車庫ではコワくて開けられなかった。ぎりぎり大丈夫だとは思ったが。
2段式リフトパーキングなんかで自慢するのはやめたほうがいい。
渋滞でも楽しい!?
ウインドをプロデュースしたのはルノースポールである。それを端的に表すのがエンジンで、フロントにはもともと「トゥインゴ ルノースポール」用に開発された134psの1.6リッター4気筒DOHCが搭載される。あえて“フロントに”と書いたのは、このクルマ、リアウィンドウの両サイドにフィンが立ち、まるでミドシップに見えるからである。
パワーユニットは、5段ギアボックスのギア比を含めて、「トゥインゴ ゴルディーニ ルノースポール」と同じ。しかし、車重(1190kg)が70kg重いせいか、ゴルディーニほどのすばしっこさはない。というか、少し前に乗ったゴルディーニと比べると、本当に同じものなのかなというくらいエンジンそのものの表情に差を覚えたが、それもよしだ。ホットハッチ的な激しさも、スポーツカー! 的な肩ひじ張った気負いもないのが、このクルマの美点である。
134psといったって、しょせん、134psである。速く走ろうと思ったら、5段ギアボックスを駆使して積極的に運転しないといけない。それが楽しい。一方、屋根を開けておけば、渋滞をホフク前進していたって楽しい。
足まわりも、ゴルディーニやトゥインゴ ルノースポールほど硬くない。普通のフレンチコンパクトの硬さだ。アンコのたっぷりしたシートはコンフォート志向で、長く座っていても疲れない。シフトのタッチはわるくないが、アルミのプレスでつくった3つのペダルが、滑りやすくて具合が悪い。オーナーになったら、すぐになんとかしたいところだ。
今年のイチバン
土砂降りの雨の中も走った。そんなとき、ソフトトップだと雨の叩く音が恐ろしかったりするが、このクルマの耐候性はまったく普通のクローズドボディと変わらなかった。
オープン時でもボディの剛性感に不満はないが、閉めてあると、さらにしっかりする。クローズド時の2座コクピットは、余計に広くない。カプセル感覚のような、いい意味の閉所感があって、とても居心地がいい。
そのかわり、脱いだジャケットやカバンのようなものは、助手席以外に置くところがない。その点はミドシップスポーツカー並みである。
助手席に人を乗せたら、荷物はトランクだが、初めて開けると、そこはギャッとたまげるほど広い。トランクルームの上にルーフの専用収納スペースがあるので、深くはないが、面積が広い。ロードバイク(自転車)の700Cホイールが難なく入る。トランクルーム奥のコーナーには、ボディ剛性を補強する筋交いが渡してある。ちゃんと仕事してるな、ルノースポール。
トゥインゴといえば、「ヴィッツ」や「マーチ」より小さな大衆車である。その車台を使って、こんなこじゃれたファンカーをサラッとつくるところがニクイ。ルーフパネルをそのまま後ろに反転させるなんていう単純なソリューションも、今までありそうでいてなかった。こういうウイットに富んだ、肩の力が抜けた遊びグルマをつくらせると、フランス人は本当にうまい。早くも個人的2011年ベストカーかなと。
(文=下野康史/写真=郡大二郎)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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