ルノー・ウインド ゴルディーニ(FF/5MT)【試乗記】
よみがえるスポーツマインド 2012.04.27 試乗記 ルノー・ウインド ゴルディーニ(FF/5MT)……279万円
ルノーの2シーターオープン「ウインド」にファッション性を高めた上級グレード「ゴルディーニ」が登場。その走りを試した。
「ルノースポール」と「ゴルディーニ」
箱根山中のパーキングでクルマを止めたら、別件で来ていた某誌の編集長が「おしゃれだねー」と声を掛けてきた。もちろんドライバーのことではなく、「ウインド ゴルディーニ」への言葉だ。彼にとっては「ゴルディーニ=おしゃれ」に映ったらしい。
車名のゴルディーニは、かつてルノーで高性能エンジンの開発に携わったアメデ・ゴルディーニから取ったものだ。だからルノーがこの名前を、ボディーやインテリアを60年代テイストに仕立てたファッション性重視のスポーツモデルとして復活させたことに、違和感を抱いた人もいた。
ただしルノーは、彼が関与した第1号車ですでに「ドーフィン ゴルディーニ」と、ゴルディーニの名をブランドとして起用した実績がある。しかもこのドーフィン ゴルディーニと後継車の「R8ゴルディーニ」に乗った経験から言えば、どちらも硬派なスポーツセダンではなく、装備が充実し、快適性にも配慮した4ドアGTだった。
その後ゴルディーニの名前は、「アルピーヌ」ともども「ルノースポール(RS)」という新しい組織に統合された。高性能車としてのゴルディーニの血は、RSに継承されたわけだ。ただしそれは、モダンなスポーツモデルであり続けてきた。フランス人は先進を好み、レトロに背を向ける傾向があるから当然だ。ところが周囲の国ではここへきて、スポーティーカーには何らかの形でヘリテージ性を持たせることが当然になった。
だからルノーは、かつてのゴルディーニが持っていたエッセンスを、テクノロジーとファッションに分け、前者はルノースポールとして継承させ、後者を新生ゴルディーニとして復活させたのだろう。ゆえに本国ではRSではない「トゥインゴ」や「ルーテシア(現地名:クリオ)」にも、ゴルディーニは用意されている。
今のユーザーは、ミニバンにエアロパーツを装着することで分かるように、スタイルとパフォーマンスは別物と考える傾向がある。スポーティーという記号をテクノロジーとファッションに分けたルノーの手法は、時代にフィットしていると思う。