MINIジョンクーパーワークス クロスオーバー(4WD/8AT)
大人のためのMINI 2017.11.03 試乗記 フルモデルチェンジですっかり貫禄のついた「MINIクロスオーバー」に、ハイパフォーマンスモデルの「ジョンクーパーワークス」が登場。231psの高出力ガソリンターボエンジンと、シンプルながらも効果テキメンの4WDシステムがかなえる走りを試す。MINIクロスオーバーの“一番いいヤツ”
現在のMINIのラインナップは「3ドア」「5ドア」「コンバーチブル」「クラブマン」そしてこのクロスオーバーと、5つのボディーバリエーションで構成されている。プラットフォームの根本は同じながら、車格的には全幅1725mmの3ドア系に対して、クラブマン&クロスオーバーは1800mm。そして全長は4200mmを超える。車格面からみるに、後者の側は完全にCセグメント領域だ。
ヒエラルキーに縛られないところがその良さとはいえ、さすがに大きくなりすぎた……かと思いきや、日本市場でもその影響はほとんどないという。一方で、従来の車格感とユーティリティーを両立した5ドアは今や販売の中軸というから、ミニの商品企画は相変わらず巧みなところを突いているのだろう。
その5ドアを除いた4モデルに用意されるのが、スポーツグレードである「クーパーS」よりさらに走行性能を突き詰めたジョンクーパーワークス(JCW)だ。中でも直近で追加されたこのクロスオーバー版の価格は562万円からと、お値段の方も相当立派になっている。つまりはパフォーマンスのみならず、一番いいヤツ全部付きちょうだい的な要望にも応えるトップグレードとして認識されている……というのが市場的な本音でもあるのだろう。
それだけに装備は充実しており、JCWクロスオーバーではADAS(先進運転支援システム)系の装備やインフォテインメントも含め、ほぼほぼすべてのエクイップメントが標準搭載。それでもオプションを……ということであれば、性能面では電子制御可変ダンパーを、快適面では電動サンルーフやharman/kardonのHi-Fiオーディオを選ぶか、くらいなものだ。
走り味にはちょっとクセがある
パワートレインはクーパーS系が搭載する2リッター4気筒をベースに吸排気系やタービンなどに専用のチューニングが施されたもので、231psを発生。8段ATを介して0-100km/hを6.5秒で加速する。駆動系は前後の駆動配分をバリアブルに制御する「ALL4」のみ。これには幅広いユーザーニーズに応えつつ、運動性能をより先鋭化させた3ドア版JCWとのキャラクターをより明瞭に分けていくという思惑がみてとれる。ちなみに現在、日本市場でALL4のクロスオーバーを買おうと思ったら、このJCW以外ではディーゼルかPHEVを選ぶことになる。圧雪路でエンジンの気持ちよさを存分に味わいながら4WDを振り回すというニーズが今時どの位あるかは不明だが、このモデルはそういう希望にも応えてくれるだろう。
ロールをきっちり抑えて低偏平タイヤのソリッドなコンプライアンスを目いっぱい引き出しながらギュンギュン曲がる、文字通りのゴーカート的なフィールを先鋭化させたのが初代のJCW的味付けだとすれば、それは代を追うごとに慎重に穏やかになっているのではないだろうか。それを強く感じたのは現行の3ドア版JCWに乗ってのことだ。中途半端なスピードでは問答無用の平行移動的なマナーだった歴々とは裏腹に、ロール量は小さくもきちんとダイアゴナルな姿勢をつくっているというフィードバックがそこそこの速度でもドライバーにも伝わりやすくなった。
JCWクロスオーバーもそういう良さは受け継いでいて、ハイパワー化に伴うバネスタビまわりの固めっぷりはそれほど極端ではないから、姿勢の変化からくる情報量は想像以上に豊かだ。ただし操舵応答自体は、クイックなギア比を太い握りの小径ステアリングでコントロールするいかにもMINI的な構成に対し、イニシャルの重心や視点の高さからくる“位相ズレ”的な感覚が完全に拭えているわけではない。ちょっとクセのある初動に対する慣れの時間は必要になると思う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
これぞハイパワー4WDの醍醐味
その代わり、曲がり始めてからの動きはそのずうたいをすっかり忘れさせてくれるほどに軽やかだ。外輪を相当踏ん張らせている状態からのライン変更も自由度は高く、そういう領域では四駆の駆動配分もアンダーステアどころかイン側に向かわせるトレース性に寄与していることは、アクセルオンでググッとテールを沈ませていく姿勢からも伝わってくる。
ALL4はシンプルな仕組みながらレスポンスの良さを武器に悪路や雪道でもかなり使える四駆として定評があるが、オンロードのコーナリングでも気持ちよさを損なわない。クルマの好みにおいてスタビリティーを重視する向きなら、ALL4のためにあえて3ドアではなくクロスオーバーというJCWの選び方もありかと思う。あるいはどうしても背の高さが気になるというなら、同じALL4を持つJCWクラブマンという選択もありだろう。
目地段差など鋭利な凹凸を除けば、日常的速度域の乗り心地は総じてクーパーSぐらいのところは保たれる。それだけでなく微細な上下動などの吸収はこちらの方がより丁寧かもしれない。すべてとはいわずとも、時に標準車系を上回る質感の高いライドフィールをみせてくれる……とあらば、JCWクロスオーバーはやはりよわいも財布もある程度成熟したユーザーに向けてあらかたの場面での満足度を高めた大人MINIということになろう。
ホットハッチのなんたるかを知る3ドアに対して、動的キャラクターにこれほどのコントラストがつけられるということは、JCW枠内でみてもミニのユーザーの嗜好(しこう)がかなり多様化しているということを裏付けてもいる。当初はキワモノ扱いだった銘柄が年間30万台を売る一大ブランドへと成長した、その秘密がこの、かつての日本車をみるようなきめ細かなニーズのすくい上げということだろうか。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
MINIジョンクーパーワークス クロスオーバー
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4315×1820×1595mm
ホイールベース:2670mm
車重:1630kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:231ps(170kW)/5000rpm
最大トルク:350Nm(35.7kgm)/1450-4600rpm
タイヤ:(前)225/50R18 99W/(後)225/50R18 99W(ピレリPゼロ)
燃費:14.0km/リッター(JC08モード)
価格:562万円/テスト車=614万3000円
オプション装備:ボディーカラー<レベルグリーン・ソリッド>(11万6000円)/MINI Yoursスポーツレザーステアリング<3スポーク>(2万2000円)/ダイナミック・ダンパー・コントロール(7万7000円)/アラームシステム(5万5000円)/オートマチック・テールゲート・オペレーション<オープン/クローズ>(5万9000円)/ピクニックベンチ(1万6000円)/パーキングアシスト・パッケージ<PDCフロント&リア含む>(5万5000円)/harman/kardon製Hi-Fiラウドスピーカーシステム(12万3000円)
テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:1556km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:505.8km
使用燃料:45.4リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:11.1km/リッター(満タン法)/11.3km/リッター(車載燃費計計測値)
拡大 |

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。















































