クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

BMW 640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ(4WD/8AT)

とことん欲張り 2017.11.14 試乗記 河村 康彦 「BMW 6シリーズ」のラインナップに加わった、5ドアハッチバック「6シリーズ グランツーリスモ」に試乗。高級セダンとクーペの長所を併せ持つという、その実力やいかに? ポルトガル・リスボンからの第一報。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

モデルチェンジで新たな車名に

1976年に誕生し“世界で最も美しいクーペ”として名をはせた、E24型の初代BMW 6シリーズ。

その後、長い空白期間を経て2003年に復活した2代目以降、この由緒正しき名称は「5シリーズ」をベースとした2ドアクーペに与えられるとばかり思っていたが、さにあらず。フルオープンボディーの「カブリオレ」に4ドアの「グランクーペ」と、いつの間にかBMWはボディーバリエーションを拡充させ、予想外の大所帯になっていた。

そんな拡大戦略は“吉”だったという判断なのか、6シリーズファミリーには、「グランツーリスモ」という新たなボディー形態が加えられることになった。

もっとも、よりストレートに説明するならば、これまでは「5シリーズ グランツーリスモ」と呼ばれてきたものが、フルモデルチェンジを機に6シリーズ グランツーリスモへと名前を変えたというのが真実である。

そこには、「5シリーズはセダンとステーションワゴンという伝統的なボディーの本流モデルへと回帰させ、6シリーズを含む“偶数名モデル”と、BMWが“スポーツアクティビティービークル”と呼ぶSUVの『Xシリーズ』は、新たな顧客を開拓するモデルと再定義しよう」という戦略が読み取れる。

2017年9月のフランクフルトモーターショーでデビューした「6シリーズ グランツーリスモ」。日本では同年10月に発売された。
2017年9月のフランクフルトモーターショーでデビューした「6シリーズ グランツーリスモ」。日本では同年10月に発売された。拡大
「6シリーズ グランツーリスモ」のインテリア。センターパネルは、運転席側に向かって角度がつけられている。
「6シリーズ グランツーリスモ」のインテリア。センターパネルは、運転席側に向かって角度がつけられている。拡大
ドアのインナーハンドル周辺には、「グランツーリスモ」を示す「GT」の装飾が施される。
ドアのインナーハンドル周辺には、「グランツーリスモ」を示す「GT」の装飾が施される。拡大
今回は、3リッターの直6ガソリンエンジンを搭載する4WDモデル「640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ」に試乗した。
今回は、3リッターの直6ガソリンエンジンを搭載する4WDモデル「640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ」に試乗した。拡大
BMW 6シリーズ グランツーリスモ の中古車webCG中古車検索

 

スタイリッシュな実用車として進化

3070mmのホイールベースと1900mmという全幅(日本仕様車)は、5シリーズ時代と同様。一方で、全長が一気に10cmも伸びた6シリーズ グランツーリスモの方がむしろコンパクトに映るのは、どうやら、全高が25mm下げられ、ボディー後端部が60mm以上低くなったことが大きな要因であるようだ。

フロントパッセンジャーの頭上部分を頂点に、ルーフラインがボディーの最後端までなだらかな下降ラインを描き続ける6シリーズ グランツーリスモのプロポーション。それは、ボディー後端の高い位置に小さなデッキが設けられた5シリーズ グランツーリスモのそれよりも、はるかに“4ドアクーペ風味”が強く、スリークだ。

とはいっても、それはもちろん、同じ4ドアでもキャビンの薄さと小ささが強調され、よりルックス志向なグランクーペほどではない。すなわち、5シリーズから6シリーズへと立ち位置を改めたグランツーリスモは、広いキャビンに広大なラゲッジスペースというパッケージング上の特徴は受け継ぎながら、それと誰の目にもスタイリッシュに映るルックスとを両立させるという落としどころを探り当てたということだ。

一方、先代5シリーズ グランツーリスモのテールゲートは、ハッチバック車でありながら、リアウィンドウをボディー側に残したままリッド部分だけを開閉することもできれば、リアウィンドウを含むバックドアを丸ごとはね上げることも可能という凝ったものだったが、新型では潔く廃止。約150kgという大幅な軽量化を達成した裏には、この決断が大きく寄与しているのは確実だ。しかし、そんな特徴が消滅してしまったのは、ユーザーから思ったほど高い評価を得られなかった結果には違いない。

窓枠にフレームを持たないサッシュレスドアが、スタイリッシュなサイドビューを演出する。
窓枠にフレームを持たないサッシュレスドアが、スタイリッシュなサイドビューを演出する。拡大
後席の様子。写真は、オプションの「パノラマ・ガラス・サンルーフ」を装備するモデルのもの。
後席の様子。写真は、オプションの「パノラマ・ガラス・サンルーフ」を装備するモデルのもの。拡大
バックドアのほか、サイドのドアやボンネットにもアルミニウムを採用。軽量化が図られている。
バックドアのほか、サイドのドアやボンネットにもアルミニウムを採用。軽量化が図られている。拡大

本格ステーションワゴンも顔負け

2017年9月に開催されたフランクフルトモーターショーで初披露された時点で、発売当初のバリエーションとして明らかにされたのは「640i」「630i」、そして「630d」の3タイプ。

2リッター4気筒のターボ付きガソリンエンジンを積む630iはリア2輪駆動のみ。3リッター6気筒のターボ付きガソリンエンジンの640iと、同じくターボ付きのディーゼルエンジンを積む630dには、「xDrive」と名付けられた4WD仕様も用意される。

ポルトガルはリスボン郊外のホテルを基点に開催された国際試乗会で用意されたのは、そんな4WDシャシーを備えたガソリンエンジン搭載のトップグレード「BMW 640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ」。「Mスポーツパッケージ」や「パノラマグラスルーフ」、「インテグレイテッド・アクティブ・ステアリング」(4WS)などを装着したモデルだった。

大柄なサイズもあって、キャビンは、大人4人が長時間を過ごすのに十分な空間。リアシートも、ゴージャスなラウンジ風のデザインが印象的で、「天井が低め」という印象は伴うものの、フロントシートに対して末席という感覚など抱かせない仕上がり。40:20:40分割式のシートバックを前方に倒し、最大1800リッターという本格ステーションワゴンも顔負けの積載スペースを生み出すこともできる。ちなみに、このシートバックのアレンジは、ラゲッジルーム側からでも電動スイッチにより可能になっている。

最高出力340ps、最大トルク450Nmを発生する3リッター直6ターボエンジン。「6シリーズ グランツーリスモ」にはこのほか、2リッター直4ガソリンターボと、3リッター直6ディーゼルターボがラインナップされる。


	最高出力340ps、最大トルク450Nmを発生する3リッター直6ターボエンジン。「6シリーズ グランツーリスモ」にはこのほか、2リッター直4ガソリンターボと、3リッター直6ディーゼルターボがラインナップされる。
	拡大
「640i グランツーリスモ」の場合、0-100km/hの加速タイムは、FR車で5.4秒、4WD車は5.3秒を記録する。
「640i グランツーリスモ」の場合、0-100km/hの加速タイムは、FR車で5.4秒、4WD車は5.3秒を記録する。拡大
ラウンジを思わせる形状の後席。40:20:40の3分割可倒式となっている。
ラウンジを思わせる形状の後席。40:20:40の3分割可倒式となっている。拡大
荷室の容量は、先代にあたる「5シリーズ グランツーリスモ」比で110リッター増しの610リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで最大1800リッターまで拡大できる。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)
荷室の容量は、先代にあたる「5シリーズ グランツーリスモ」比で110リッター増しの610リッター。後席の背もたれを前方に倒すことで最大1800リッターまで拡大できる。(写真をクリックすると、荷室のアレンジが見られます)拡大

重さと硬さはやや気になる

前述したテールゲートの話題に加え、ドアやフロントフードのアルミニウム化、さらにはサスペンション関連の部品にも軽合金を用いるなど、さまざまな部位で軽量化が施されたとはいえ、車両重量は約2t。やはりそれが影響してか、スタートの瞬間には、少しばかり動きに鈍さが感じられるというのが、試乗しての率直な印象である。

一方で、ひとたびスタートを切ってしまえば、そこから先の動力性能には、ひとかけらの不満もない。0-100km/hの加速タイムは5.3秒で、最高速はリミッターが作動する250km/h。そんなスペックの通り、実力のほどは如実に表れている。

ランフラットタイヤを装着する影響もあってか、フットワークのテイストは全般に硬質だった。率直に言って、このモデルの狙いどころからすれば、さらにしなやかでストローク感に富んだ乗り味が欲しいと個人的には思う。

今回設定された試乗ルートでは、強い横Gを体験できるほどのコーナーに恵まれなかったため、正直、4WSのありがたみは実感できなかった。ただ、それは同時に、後輪が操舵されることによる違和感が全くなかったということでもある。全長5m超、ホイールベースが3mを超えるモデルだけに、日本ではむしろ低速時の“小回り制御”の方が有用だと感じられそうだ。

そんな6シリーズ グランツーリスモは、セダンでもステーションワゴンでもない。流行のSUVでもない。どこまでも欲張りな、いわば“究極のすき間狙いのBMW”なのだった。

(文=河村康彦/写真=BMW/編集=関 顕也)

エアロダイナミクスは先代よりも大幅に向上。空気抵抗係数を示すCd値は0.25(先代は0.29)と公表される。
エアロダイナミクスは先代よりも大幅に向上。空気抵抗係数を示すCd値は0.25(先代は0.29)と公表される。拡大
トランスミッションは8段AT。シフトレバーの周辺には、走行モードの選択ボタンやインフォテインメントシステムの操作スイッチがレイアウトされる。
トランスミッションは8段AT。シフトレバーの周辺には、走行モードの選択ボタンやインフォテインメントシステムの操作スイッチがレイアウトされる。拡大
テスト車の19インチアルミホイール。タイヤは、245/45R19サイズの「ピレリPゼロ」が組み合わされていた。
テスト車の19インチアルミホイール。タイヤは、245/45R19サイズの「ピレリPゼロ」が組み合わされていた。拡大
日本へは、今回のテスト車と同じ「640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ」と、同モデルをベースとした限定車が導入される。
日本へは、今回のテスト車と同じ「640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ」と、同モデルをベースとした限定車が導入される。拡大

テスト車のデータ

BMW 640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5091×1902×1540mm
ホイールベース:3070mm
車重:1910kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:340ps(250kW)/5500-6500rpm
最大トルク:450Nm(45.9kgm)/1380-5200rpm
タイヤ:(前)245/45R19 98Y/(後)245/45R19 98Y(ピレリPゼロ)
燃費:7.7-8.2リッター/100km(約12.2-12.9km/リッター、EU複合サイクル)
価格:1081万円
オプション装備:--
※諸元は欧州仕様のもの。車両価格は日本市場でのもの。

テスト車の年式:2017年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
 

BMW 640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ
BMW 640i xDriveグランツーリスモ Mスポーツ拡大
インフォテインメントシステムには、モニターの画面に触れることなく手先の動きだけで各種の操作可能な「ジェスチャーコントロール」機能が含まれる。
インフォテインメントシステムには、モニターの画面に触れることなく手先の動きだけで各種の操作可能な「ジェスチャーコントロール」機能が含まれる。拡大
先進安全装備については、車線の中央付近を走行できるようにサポートする「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」や、」、歩行者検知機能付きの「衝突回避・被害軽減ブレーキ機能」、「レーン・ディパーチャー・ウオーニング」などが備わる。
先進安全装備については、車線の中央付近を走行できるようにサポートする「ステアリング&レーン・コントロール・アシスト」や、」、歩行者検知機能付きの「衝突回避・被害軽減ブレーキ機能」、「レーン・ディパーチャー・ウオーニング」などが備わる。拡大
河村 康彦

河村 康彦

フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。

試乗記の新着記事
  • スズキ・エブリイJリミテッド(MR/CVT)【試乗記】 2025.10.18 「スズキ・エブリイ」にアウトドアテイストをグッと高めた特別仕様車「Jリミテッド」が登場。ボディーカラーとデカールで“フツーの軽バン”ではないことは伝わると思うが、果たしてその内部はどうなっているのだろうか。400km余りをドライブした印象をお届けする。
  • ホンダN-ONE e:L(FWD)【試乗記】 2025.10.17 「N-VAN e:」に続き登場したホンダのフル電動軽自動車「N-ONE e:」。ガソリン車の「N-ONE」をベースにしつつも電気自動車ならではのクリーンなイメージを強調した内外装や、ライバルをしのぐ295kmの一充電走行距離が特徴だ。その走りやいかに。
  • スバル・ソルテラET-HS プロトタイプ(4WD)/ソルテラET-SS プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2025.10.15 スバルとトヨタの協業によって生まれた電気自動車「ソルテラ」と「bZ4X」が、デビューから3年を機に大幅改良。スバル版であるソルテラに試乗し、パワーにドライバビリティー、快適性……と、全方位的に進化したという走りを確かめた。
  • トヨタ・スープラRZ(FR/6MT)【試乗記】 2025.10.14 2019年の熱狂がつい先日のことのようだが、5代目「トヨタ・スープラ」が間もなく生産終了を迎える。寂しさはあるものの、最後の最後まできっちり改良の手を入れ、“完成形”に仕上げて送り出すのが今のトヨタらしいところだ。「RZ」の6段MTモデルを試す。
  • BMW R1300GS(6MT)/F900GS(6MT)【試乗記】 2025.10.13 BMWが擁するビッグオフローダー「R1300GS」と「F900GS」に、本領であるオフロードコースで試乗。豪快なジャンプを繰り返し、テールスライドで土ぼこりを巻き上げ、大型アドベンチャーバイクのパイオニアである、BMWの本気に感じ入った。
試乗記の記事をもっとみる
BMW 6シリーズ グランツーリスモ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。