BMW G310GS(MR/6MT)
小兵ながら横綱相撲 2017.12.23 試乗記 BMWの世界戦略を担う小排気量モデル「G310」シリーズ。その第2弾として、BMW得意のアドベンチャースタイルをまとう「G310GS」が登場した。圧巻のブランド力を誇る、“GS”という看板を背負った最新モデルのライドフィールを一言で表すと?BMWが繰り出した必殺の得意技
「めちゃくちゃ乗りやすい!」。それがBMW G310GSの第一印象。しかし印象などというのは絶対値ではなく、過去の経験との相対値に他ならない。では何と比較して「乗りやすい!」と感じたかと言えば、ここで前に紹介した「BMW G310R」である。エンジンやフレームはまったく同じながら、フロントホイールをRの17インチから19インチに変更。ディメンションを改めた結果、見事なまでに乗り味を変えてきた。
そんな話を続けると、「じゃG310Rは乗りにくいのか」と誤解を招くかもしれない。そうではなく、先に発売されたのがRだったがために後発組の基準になっただけだ。歌やダンスのうまさを競うコンテストでも、後の組ほどインパクトが大きく感じられるのと同じです。それほどに印象という査定値は曖昧なのだ。
けれどG310GSにある種の絶対的な乗りやすさを覚えたのは事実。その感覚を導き出したのがBMWの“GSチューン”である。千代の富士の左上手とBMWのGSは、それを出された日には「ごめんなさい」という他にない、必殺の得意技なのだ。
オタメゴカシじゃない!
このままBMWの決め技について書きたいところだが、まずはG310シリーズについて触れておく。
313ccの排気量に由来する310は、BMWが新たにチャレンジした小排気量クラス。パートナー企業のTVSモーター・カンパニーがインドで製造しコストダウンを実現。各国各地域の排ガス規制や現地法令をクリアするスペックを備え、早い話が新興国市場を席巻するためにつくられたシリーズだ。これまで、そうした小排気クラスは日本メーカーの得意分野だったが、BMWもブランド力を誇示して急成長するマーケットに乗り込んできたのである。
いやいや、ブランド力だけでオタメゴカシにしないのがBMWの偉いところ。新開発の液冷単気筒エンジンは、吸気系が前で排気系が後ろの後方排気型という珍しい形式を採用。これがするするとストレスなくよく回る。その第1弾が、前傾するシリンダーに合わせるような前のめり感を強調したロードスポーツのG310R。それに続いたのがアドベンチャー系のG310GS、という図式だ。
これもG310Rの記事で書いたことだが、このモデルに対して取材チームは「もしバッジがなかったら?」というかなり意地悪な考察を試みた。では、G310GSに同じ問い掛けをしてみたらどうだろう。答えは、「ごめんなさい」。なぜならGSチューンは白鵬の左四つと変わらぬBMWの得意技だからだ。ふむ、それにしても相撲はどうなってしまうのだろう。
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排気量に関係ない存在感と扱いやすさ
G310GSのボディーからBMWのバッジやGSの文字を取り去っても、やはりG310GSはBMWにしか見えない。最近は日本メーカーもこの手のアドベンチャー系の新型を続々発表しているので、「もしかしたら?」と思ったりもするが、やはりシルエットだけでもGSの文脈を正しく受け継いだものだとはっきりわかる。
単純に言えば、オリジナリティーとクオリティーの差なのだろう。BMWには、横綱と呼ぶべき「R1200」を頂点に「F800」「F700」にもGSが用意されている。そのどれもが見まごうことなきGSルック。この形になったらBMWは勝ち星を計算できるのかもしれない。ゆえに、小兵ながらG310にも横綱相撲を取らせるためにGSを用意した。恐るべき独逸部屋の勝利への執念……。
話を最初に戻します。G310GSに乗りやすさを感じたのは、アップライトな乗車姿勢によるところが大きい。フロントホイールの19インチ化やサスペンションストローク量の増加等によって数十mmほどシートが高くなったが、上体が起きたことでハンドル操作が楽になったことに安心感を覚える人は少なくないと思う。昨今この手のアドベンチャー系が台頭してきた理由もそこにある気がする。排気量に関係ない存在感と現実的な扱いやすさ。これに尽きるのではないだろうか。
そんなわけで、グローバルのアドベンチャー場所は、BMWが新たな役者を用意したことでさらに期待感が高まった。個性豊かな力士たち。さて軍配はどちらに。って、どれだけ相撲が心配なんだ?
(文=田村十七男/写真=三浦孝明/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2075×880×1230mm
ホイールベース:1420mm
シート高:835mm
重量:170kg
エンジン:313cc 水冷4ストローク 単気筒 DOHC 4バルブ
最高出力:34ps(25kW)/9500rpm
最大トルク:28Nm(2.86kgm)/7500rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:30.3km/リッター(WMTCモード)
価格:66万9900円

田村 十七男
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