クルマが走るスマホになる!?
メルセデスの新しいマルチメディアシステムを試す
2018.02.26
デイリーコラム
スムーズさとレスポンスのよさに目を見張る
2017年1月、米国ラスベガスで開催されたCES(Consumer Electronics Show)で、メルセデス・ベンツは最新のインフォテインメントシステム「MBUX」(Mercedes-Benz User Experience:メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)を発表した。そして、2月3日に発表された新型「Aクラス」にそのMBUXが初搭載される。MBUXとは具体的に何ができるものなのか? Aクラスの発表会で垣間見えた性能の一端について報告する。
MBUX搭載車のインテリアには、メーターナセルがなく、ダッシュボード上にはメーターパネルとナビ画面を組み合わせたような10.25インチのディスプレイが2つ並んでいる。基本の操作はトラックパッドもしくは直接画面に触れて行うが、これまでの自動車用ディスプレイにみられた反応の鈍さはない。スマートファンやタブレットよろしくレスポンスのいい操作感を実現している。高精細な3Dの地図画像も指先の動きに合わせてスムーズに動作する。地図データはダイムラー、BMW、アウディの3社が共同所有するHere社によるものだ。
この最新システムには、米国の半導体メーカーであり、現在はAIコンピューティングカンパニーを標榜(ひょうぼう)するNVIDIA(エヌビディア)の技術が採用されている。同社のGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)は自動運転車の中枢を担うものであり、メルセデスのみならず、トヨタ、アウディ、ボルボ、テスラなどと業務提携していることでも知られる。
MBUX最大の特長は、AIを活用したこれまでにない音声入力の実現だ。従来のような、一度試すと二度と使いたくなくなる貧弱な言語理解能力ではなく、メルセデスが“自然言語認識”と表現するように、一般的な会話に近いレベルでの操作を実現している。さらにAIが学習を深めることで、より乗員の好みに順応していくという。
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まるで会話するかのように
MBUXに関するワークショップの冒頭で、なぜ音声入力に注力したのかについて、開発者のGeorges Massing氏(Director of User Interaction, Daimler AG)は、「子供の頃から自然に学んだ言語は感覚的に使うことができ、AIの活用によるタスクの解決や情報の取得など、その可能性は無限大にある。運転の妨げになる動作を最小限におさえることができ、何より刺激的で便利だ。技術の進化、データの処理能力が飛躍的に向上し、これまで不可能だったことができるようになった」と話した。
MBUXを起動させるためには、「Hey Mercedes!(ヘイ、メルセデス!)」と声をかければいい。もちろん、ステアリング上のボタンで起動することもできる。音声入力によってエアコンの温度を調整したり、電話をかけたり、好きな音楽を流したりとさまざまな操作が可能だが、先に“自然言語認識”と言っていたように、より一般的な会話で操作できる点が、既存のシステムとの大きな違いとなっている。
例えば「明日のアムステルダムはサングラスが必要?」とたずねれば、天気の話だと理解して現地の天気予報を読み上げ、詳細情報をスクリーンに表示する。「寒い」と言えば、エアコンの話だと認識して、自動的に設定温度を上げる。そんなフレキシブルさをもちあわせているのだ。
その際、スマートフォンの音声入力のように口元にマイクを近づける必要はない。車内に複数の乗員がいて、後席で子供が泣いており、ラジオがついているような場面でも、しかもネイティブスピーカーでなく、なまりのある言葉でも音声コマンドが入力可能なことを目指したという。対応する言語も豊富で、現在、世界で23カ国の言語をカバーしている(説明によると日本語も含まれていた)。
従来であればシート位置を覚えるだけだったメモリー機能もデジタル化によって拡張されている。複数のドライバーのシート位置やミラーの角度、車内温度、ドライブモード、好みのアンビエントカラーや必ず出発時に聞きたい好みの音楽に至るまで、さまざまな情報がクラウド上に格納され、もし仮に別のMBUX搭載車を所有していれば、データの共有も可能だ。曜日別にAIが他の楽曲を提案するようなこともあるという。またグーグルのAIスピーカーやアップルウオッチといったウエアラブル端末ともつなげることができる。
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■「MBUX」の操作の様子
ユニークな取り組みはカーナビにも
さらにMBUXは、ナビゲーションにも特徴的な機能をもっている。イギリスのベンチャー企業、WHAT3WORDSが提供するユニークなサービスを、自動車のナビゲーションシステムとして初めて導入したのだ。これは、地球上のすべてのエリアを3×3メートルのブロックに区分し、ランダムな3つの単語の組み合わせを割り当てたものだ。住所がない、伝えにくい場所や、郵便番号や番地がわからなくてもその3つの単語を音声もしくはタッチパネルで入力すれば、目的地にたどりつけるという。
例えばアメリカ・ニューヨークの「自由の女神像」の中心付近は「engine/winks/smile」、東京渋谷の「ハチ公像」の付近は「rainbow/sharp/sleep」となっている。
■「WHAT3WORDS」の解説
メルセデスの開発者は、「もう車内でスマホを探す必要はない。クルマは走るスマートフォンになる」と話していた。今回はデモ体験だったが、このシステムは今春から欧州で販売が開始されるAクラスに実装されるという。いずれ多くの自動車メーカーにとって、こうしたAIの活用は自動運転も含み合わせて必須になるだろう。日本語での実力を体感するのはもう少し先になりそうだが、今から楽しみだ。(文=藤野太一/写真・動画=ダイムラー/編集=堀田剛資)

藤野 太一
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