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ミシュランもオールシーズンタイヤに本腰 全天候型タイヤは次代のスタンダードになるか?

2025.10.16 デイリーコラム 世良 耕太
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“雪道も走れる”だけでは十分ではない

日本ミシュランタイヤは2025年9月2日、オールシーズンタイヤの新製品「ミシュラン・クロスクライメート3」と、オールシーズンタイヤカテゴリーで初となるスポーツ性能を備えた「ミシュラン・クロスクライメート3スポーツ」を同年10月1日より順次発売すると発表した(参照)。

同社がオールシーズンタイヤ購入時に重視したポイントを日本のユーザーを対象に調査してみると、2021年の調査では「非積雪路(ウエット/ドライ)」のグリップ」と「積雪路面での走行性能」が上位を占めた。ところが2024年の調査では「快適性(乗り心地/静粛性)が「非積雪路のグリップ」や「積雪路面での走行性能」を抑えてトップになった。また、2021年の調査では下位にランクされた「低燃費性能」が上位に進出してきた。

オールシーズンタイヤが普及するにつれて非積雪路面と積雪路面での性能が担保されていることがユーザーに浸透したため、夏タイヤが備えている性能を求めるようになってきたと推察できる。つまり、ドライ路面もウエット路面も雪道も過不足なく走り、乗り心地や静粛性といった快適性で眉をひそめるようなことはなく、さらにはスタッドレスタイヤ装着時に気になる燃費の悪化も、サマータイヤと同程度に心配のない性能を求めているということになる。

なんともぜいたくな話だが、昨今のユーザーが最新のオールシーズンタイヤに求めるのは、そうしたトータルバランスに優れた性能である。たまに雪が降ったときに「スタッドレスタイヤに履き替えなくても走ることができる」くらいでは満足しなくなってきたということだ。

2025年9月に導入が発表されたミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」。夏の大雨や冬の急な雪など、予測しづらい天候変化にも対応でき、日常の運転に安心感をもたらすとうたわれる。
2025年9月に導入が発表されたミシュランのオールシーズンタイヤ「クロスクライメート3」。夏の大雨や冬の急な雪など、予測しづらい天候変化にも対応でき、日常の運転に安心感をもたらすとうたわれる。拡大
ミシュランの「クロスクライメート3」(写真左)と「クロスクライメート3スポーツ」(同右)は、2021年8月に登場した「クロスクライメート2」の後継となるオールシーズンタイヤ。
ミシュランの「クロスクライメート3」(写真左)と「クロスクライメート3スポーツ」(同右)は、2021年8月に登場した「クロスクライメート2」の後継となるオールシーズンタイヤ。拡大
オールシーズンタイヤでありながら、スポーツタイヤに匹敵する高速安定性とハンドリング性能がセリングポイントとされる「クロスクライメート3スポーツ」。
オールシーズンタイヤでありながら、スポーツタイヤに匹敵する高速安定性とハンドリング性能がセリングポイントとされる「クロスクライメート3スポーツ」。拡大
「クロスクライメート3」のトレッドパターン。排水性と排雪性向上を狙い、従来の「Vシェイプトレッドパターン」にセンターグルーブを追加したデザインに進化している。
「クロスクライメート3」のトレッドパターン。排水性と排雪性向上を狙い、従来の「Vシェイプトレッドパターン」にセンターグルーブを追加したデザインに進化している。拡大

普及の立役者はグッドイヤー

ミシュランは2019年に同ブランド初のオールシーズンタイヤ「クロスクライメート」と「クロスクライメート+」、「クロスクライメートSUV」を国内で発売した。クロスクライメートが14インチサイズ、クロスクライメート+が15インチサイズ以上、クロスクライメートSUVはその名のとおりSUV用である。

2021年には進化モデルの「クロスクライメート2」を発売し、当時のマーケットの状況に合わせSUV向けの「クロスクライメート2 SUV」をラインナップに加えた。3代目のモデルにスポーツを設定したのは、スポーツカーやプレミアムカーのユーザーもオールシーズンタイヤに興味・関心があるとの調査結果を受けてのものだ。

スポーツカー/プレミアムカーユーザーは快適性に加え、高速安定性やハンドリング性能を重視するとのことから、クロスクライメート3スポーツでは特にハンドリング性能にフォーカス。クロスクライメート3に比べて明らかにスクエアなショルダー形状が、視覚面でもスポーツ性の高さを訴えかけてくる。

海外で普及していたオールシーズンタイヤを日本に持ち込み、普及させた立役者はグッドイヤーだろう。筆者は発売されたばかりの「ベクター4シーズンズ」を2011年に自分のクルマに取り付けた。性能に満足したので、2016年にクルマを入れ替えた際も、冬を前にベクター4シーズンズに履き替えた。

年に数回雪が降るか降らないかの非降雪地域で生活し、仕事で年に1度2度、積雪地域に行くか行かないかの生活をしている筆者にとって、オールシーズンタイヤはもってこいの選択だった。雪上走行で不安を感じたことはまったくなかった。ドライ路面での性能もしかりである。ノイズはやや大きめだし、転舵したときに手応えのしっかり感はサマータイヤに分があるといった違いは感じられたが、「そのまま雪道を走れる」オールシーズンタイヤのベネフィットの前にはかすんでしまう。だからこそ、10年履き続けたわけだ。

ミシュランはこれまで「すべての季節や天候に対し万能」というイメージを避けるためにオールシーズンタイヤといわず、「雪も走れる夏タイヤ」で通してきたが、今回の「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」の発売にあたっては市場の理解が進んだことを理由に、明確にオールシーズンタイヤをうたう。
ミシュランはこれまで「すべての季節や天候に対し万能」というイメージを避けるためにオールシーズンタイヤといわず、「雪も走れる夏タイヤ」で通してきたが、今回の「クロスクライメート3」と「クロスクライメート3スポーツ」の発売にあたっては市場の理解が進んだことを理由に、明確にオールシーズンタイヤをうたう。拡大
高速道路の「冬用タイヤ規制」でも、「スノーフレークマーク」や「M+S(マッド&スノー)」の文字が記されているオールシーズンタイヤを装着していれば、走り続けることができる。
高速道路の「冬用タイヤ規制」でも、「スノーフレークマーク」や「M+S(マッド&スノー)」の文字が記されているオールシーズンタイヤを装着していれば、走り続けることができる。拡大
海外で普及していたオールシーズンタイヤを日本に持ち込み、普及させた立役者はグッドイヤーだろう。「ベクター4シーズンズ」の初代モデルは2009年に上陸。2016年には第2世代の「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」に進化し、最新モデルの「ベクター4シーズンズGEN-3」は2022年に登場した。
海外で普及していたオールシーズンタイヤを日本に持ち込み、普及させた立役者はグッドイヤーだろう。「ベクター4シーズンズ」の初代モデルは2009年に上陸。2016年には第2世代の「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」に進化し、最新モデルの「ベクター4シーズンズGEN-3」は2022年に登場した。拡大
特徴的なV字型のトレッドデザインが目を引く「グッドイヤー・ベクター4シーズンズGEN-3」のトレッド面。センター部に向かって溝の幅を細くするなどの工夫で、パターンノイズの低減を図ったという。
特徴的なV字型のトレッドデザインが目を引く「グッドイヤー・ベクター4シーズンズGEN-3」のトレッド面。センター部に向かって溝の幅を細くするなどの工夫で、パターンノイズの低減を図ったという。拡大

オールシーズンタイヤがマッチするのは?

で、現在はというと冬を前にスタッドレスタイヤに履き替え、春に夏タイヤに履き替える生活を送っている。タイヤはホイールに組まれたまま販売店に保管してもらっている。冬と春に発生する保管料+履き替え料が各1万6720円で年間3万3440円かかっている。夏タイヤ+スタッドレスタイヤの生活にしたのは、新品の夏タイヤを履きつぶしたいという思いと、最近のスタッドレスタイヤの履き心地を確かめたい思いからだった。

現在は、ミシュランはいうに及ばず、ブリヂストン、横浜ゴム、トーヨータイヤなど、タイヤメーカー各社が趣向を凝らしたオールシーズンタイヤをラインナップしている。オールシーズンタイヤの実力を体感し、その進化ぶりを知ったいまとなっては、「またオールシーズンタイヤ生活に戻ってもいいかな」とも思っている。いや、「夏はサマータイヤを履くことにして、摩耗してきたスタッドレスをオールシーズンに組み替えてみる手もある?」などと思いを巡らせているところだ。

2024年にダンロップが発売した「シンクロウェザー」は、スタッドレスタイヤの弱点だったドライおよびウエット性能と、サマータイヤではカバーできない氷上および雪上性能を両立した画期的なオールシーズンタイヤとして登場した。サマータイヤの剛性感を維持しながら、氷上でもグリップ性能を発揮する。さらにノイズも抑えられ、オールシーズンタイヤの弱点のひとつに数えられる耐摩耗性も向上させたとの触れ込みである。

オールシーズンタイヤが総じて攻めの価格設定なのは、「スタッドレスタイヤ代と、履き替えや保管に必要な代金を考えればむしろ割安でしょ。履き替えのための手間もかかるわけだし」という考えが元にある。正論だ。摩耗が早くて買い換えのサイクルが短ければ元も子もない話になるが、少なくともベクター4シーズンズは長持ちした。非降雪地域で生活していて、たまに雪が降ったタイミングでクルマを使う可能性が少しでもあるなら、オールシーズンタイヤはうってつけ、だと思う。

(文=世良耕太/写真=日本ミシュランタイヤ、日本グッドイヤー、住友ゴム工業、横浜ゴム、webCG/編集=櫻井健一)

2024年にダンロップが発売した「シンクロウェザー」。スタッドレスタイヤの弱点だったドライおよびウエット性能と、サマータイヤではカバーできない氷上および雪上性能を両立した画期的なオールシーズンタイヤとして登場した。
2024年にダンロップが発売した「シンクロウェザー」。スタッドレスタイヤの弱点だったドライおよびウエット性能と、サマータイヤではカバーできない氷上および雪上性能を両立した画期的なオールシーズンタイヤとして登場した。拡大
水や温度などの外的要因に反応して、ゴムの特性が変化する新技術「アクティブトレッド」が採用された「ダンロップ・シンクロウェザー」。サイズは14インチから21インチまでの全100種類で、すべてメーカー希望小売価格が設定されている(2025年10月現在)。
水や温度などの外的要因に反応して、ゴムの特性が変化する新技術「アクティブトレッド」が採用された「ダンロップ・シンクロウェザー」。サイズは14インチから21インチまでの全100種類で、すべてメーカー希望小売価格が設定されている(2025年10月現在)。拡大
横浜ゴムのオールシーズンタイヤ「ブルーアース4S AW21」。コンパウンドにシリカと末端変性ポリマーを配合し、雪上性能とウエット性能の向上がうたわれる。2020年1月から、日本でも本格的に販売が開始された。
横浜ゴムのオールシーズンタイヤ「ブルーアース4S AW21」。コンパウンドにシリカと末端変性ポリマーを配合し、雪上性能とウエット性能の向上がうたわれる。2020年1月から、日本でも本格的に販売が開始された。拡大
グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズGEN-3」の雪上走行シーン。非降雪地域で生活していて、たまに雪が降ったタイミングでクルマを使う可能性が少しでもあるなら、オールシーズンタイヤは検討に値するタイヤといえそうだ。
グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズGEN-3」の雪上走行シーン。非降雪地域で生活していて、たまに雪が降ったタイミングでクルマを使う可能性が少しでもあるなら、オールシーズンタイヤは検討に値するタイヤといえそうだ。拡大
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