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スバルのBEV戦略を大解剖! 4台の次世代モデルの全容と日本導入予定を解説する

2025.10.17 デイリーコラム 佐野 弘宗
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新たに登場する2台のBEV

すでに発表されているとおり(参照)、2025年10月29日に開幕する「ジャパンモビリティショー2025」(JMS2025)で、スバルは大幅改良された「ソルテラ」と、量産電気自動車(BEV)の国内第2弾となる「トレイルシーカー」の日本仕様という、2台の新しいBEVを一般公開するという。

スバリストならご承知のように、トレイルシーカーとは2025年4月18日にはじまったニューヨーク国際オートショーで、改良型ソルテラとともに世界初公開されたBEVである(参照)。で、その1カ月後にトヨタが同じく北米で披露した「bZウッドランド」とDNAを共有する。

トレイルシーカーの車体サイズは公表されていないが、bZウッドランドの全長×全幅×全高は4830×1860×1620mm。トレイルシーカーも同等サイズとすると、スバルが2026年から北米で販売予定の新型「アウトバック」より、全長は50mmちょっと短く、全高は100mm以上低い。車体全体のプロポーションはむしろ「トヨタ・クラウン エステート(北米名クラウン シグニア)」に似るが、全長はクラウン エステートのほうが100mm大きい。いずれにしても、トレイルシーカーはソルテラよりひとまわり大きな上級BEVとなる。

さらに、スバルは続く2025年7月18日に、BEV第3弾となる「アンチャーテッド」も北米で公開した。これも、北米で2026年に発売予定としている。

アンチャーテッドは、プレスリリースで「ソルテラに対して全長は約170mm短く……」と語られているとおり、ソルテラの下に位置づけられるコンパクトSUVである。これまた具体的なサイズは未公表なものの、このクルマの基本骨格が、トヨタが2025年3月に欧州で公開した「C-HR+」と共通であることを、知っている人は知っている。C-HR+のスリーサイズは4520×1870×1595mmだ。

大幅に性能が向上した「スバル・ソルテラ」の改良モデル。
大幅に性能が向上した「スバル・ソルテラ」の改良モデル。拡大
2025年のニューヨークショーで発表された新型BEV「トレイルシーカー」。
2025年のニューヨークショーで発表された新型BEV「トレイルシーカー」。拡大
「スバル・トレイルシーカー」は「トヨタbZウッドランド」(写真)の姉妹モデルとなる。
「スバル・トレイルシーカー」は「トヨタbZウッドランド」(写真)の姉妹モデルとなる。拡大
同じく、「スバル・アンチャーテッド」(写真)は「トヨタC-HR+」の姉妹モデルだ。
同じく、「スバル・アンチャーテッド」(写真)は「トヨタC-HR+」の姉妹モデルだ。拡大
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どのクルマが日本に導入されるの?

ここまでに紹介したスバルの新しいBEVが、すべて北米で世界初公開されていることからも想像できるように、スバルは2025年中の改良型ソルテラ、そして2026年のトレイルシーカーとアンチャーテッド……と、3台すべてを北米に投入する予定だ。まあ、トランプ関税の影響などで不透明な部分もなくはないが、世界販売の8割近くを北米に依存しているスバルに、かの地で出し惜しみする理由はない。

いっぽう、この新スバルBEVトリオのうち、わが日本で乗れるのは「ソルテラと、JMS2025で公開されるトレイルシーカーの2台」と明かしてくれたのは、先日リポートをお届けした改良版ソルテラのプロトタイプ試乗会(参照)に顔を見せた、井上正彦さんだ。現在、スバルのBEVプロジェクトを指揮するプロジェクトゼネラルマネジャー(PGM)をつとめる井上さんは、先代の「XV(海外名は当時からクロストレック)」や「トヨタGR86/スバルBRZ」の PGM歴をもつ。つまり、生粋のスバルマンである。

ただ、 今の井上さんは「スバル商品事業本部のアライアンスBEV PGM」のほか、「トヨタ自動車ミッドサイズカンパニー主査」という肩書ももっており、「週5日のうち、だいたいスバルに3日、トヨタに2日」の配分で出社する日々とか。こうした井上さんの仕事っぷりに加え、スバルのBEVトリオのすべてにトヨタ版も存在していることからも、やはりスバルのBEV戦略がトヨタのそれと一体なのだということを、あらためて実感する。

このように、まさにトヨタとの二人三脚といっていいスバルのBEV事業だが、車種に応じて役割や責任は細かく分担されている。たとえば協業BEV第1号となった「スバル・ソルテラ/トヨタbZ4X」の生産はトヨタの元町工場だが、その次のトレイルシーカーとbZウッドランドの生産は、スバルの矢島工場が担当する。よって、その開発中につくられるプロトタイプなども、スバルが手がけた。矢島での国内生産となるトレイルシーカーが日本導入予定であるように、そのトヨタ版のbZミッドランドも日本で売られる。ただし、日本での車名は「bZ4Xツーリング」になるとか。

2026年からのスバルのBEV戦略について教えてくれた、井上正彦プロジェクトゼネラルマネジャー。
2026年からのスバルのBEV戦略について教えてくれた、井上正彦プロジェクトゼネラルマネジャー。拡大
新たに発表された「スバル・トレイルシーカー」(写真)と「アンチャーテッド」だが、日本に導入されるのはトレイルシーカーのみとなる。
新たに発表された「スバル・トレイルシーカー」(写真)と「アンチャーテッド」だが、日本に導入されるのはトレイルシーカーのみとなる。拡大
「スバル・トレイルシーカー」と「トヨタbZミッドランド(日本名:bZ4Xツーリング)」は、群馬県のスバル矢島工場で生産される。
「スバル・トレイルシーカー」と「トヨタbZミッドランド(日本名:bZ4Xツーリング)」は、群馬県のスバル矢島工場で生産される。拡大
スバルのメインマーケットである米国では、トランプ政権になって日本からの輸入車に15%の関税がかけられることとなったが、今のところ、BEVについては現地生産の予定はないという。
スバルのメインマーケットである米国では、トランプ政権になって日本からの輸入車に15%の関税がかけられることとなったが、今のところ、BEVについては現地生産の予定はないという。拡大

気になる“第4のBEV”も

他方で、井上さんが「国内販売の予定なし」と明言するアンチャーテッドは、 そのトヨタ版であるC-HR+でも、国内販売にまつわる情報は今のところ出ていない。アンチャーテッドとC-HR+もどこかの工場で一括生産されるはずだが、その拠点は公式には明らかでない。ただ、一部メディアはトヨタの高岡工場と伝えている。いずれにしても、両車種ともにトヨタが生産し、 アンチャーテッドは前記のとおり北米で、C-HR+は主に欧州と北米で売られるようだ。

さらに井上さんによると、スバル/トヨタのBEVラインナップは、これで完結ではないらしい。すでに姿をあらわしたBEVトリオに続く、第4のBEVの開発も進んでいるという。この第4弾を加えた“スバルBEVカルテット”は、2026年末時点で完成の予定。そしてその第4のBEVは、北米にあるトヨタ工場での生産が想定されている。

このクルマの詳細については「随時公開します」とのことだが、井上さんの説明のなかで示されたチャート表によると、第4弾の位置づけはトレイルシーカーと同等か ちょっと上級。そして、キャラクターはオフ風味のトレイルシーカーより洗練されたロングツアラーっぽい。

井上さんは、すでに発表済みの3台を「既存のスバルSUVにたとえると、アンチャーテッドがクロストレック、ソルテラが『フォレスター』、トレイルシーカーがさしずめアウトバックでしょうか」と表現する。で、前記チャート表で(検討中としつつも)第4弾のBEVが仮置きされたポジションは、北米専用モデルの「アセント」の近くだった。ということは、スバル第4のBEVは、大型3列シーターSUVということか。真実は知らんけど。

それにしても、つい最近まで“やってます感”のアリバイづくりとして、ソルテラがほそぼそと売られているだけにしか見えなかった(失礼!)スバルBEVだが、じつは用意周到に巨大プロジェクトが進められていたわけだ。われわれ外野からすると、動き出した……と思ったら次の瞬間には一大シリーズと なっていたわけで、素直に驚く。改良型ソルテラも明確に進化していてちょっと感心したが、日本人としては、次はトレイルシーカーに期待だ。

(文=佐野弘宗/写真=向後一宏、スバル/編集=堀田剛資)

日本導入予定のない「スバル・アンチャーテッド」だが、生産を担うのは日本国内のトヨタの高岡工場と報じられている。
日本導入予定のない「スバル・アンチャーテッド」だが、生産を担うのは日本国内のトヨタの高岡工場と報じられている。拡大
スバルが北米で販売する3列シートSUVの「アセント」。仮に“第4のBEV”がこれに近いポジションのモデルとなり、かつ北米のトヨタ工場で生産されるとなると、日本導入の予定は……あるのだろうか?
スバルが北米で販売する3列シートSUVの「アセント」。仮に“第4のBEV”がこれに近いポジションのモデルとなり、かつ北米のトヨタ工場で生産されるとなると、日本導入の予定は……あるのだろうか?拡大
「ジャパンモビリティショー2025」に出展予定の「トレイルシーカー」(日本仕様)のプロトタイプ。改良型「ソルテラ」の劇的な進化を見るに、トレイルシーカーの仕上がりにも期待せずにはいられない。
「ジャパンモビリティショー2025」に出展予定の「トレイルシーカー」(日本仕様)のプロトタイプ。改良型「ソルテラ」の劇的な進化を見るに、トレイルシーカーの仕上がりにも期待せずにはいられない。拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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