ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン(4WD/8AT)/ラングラー アンリミテッド スポーツ(4WD/8AT)
進化より大事なもの 2018.10.25 試乗記 70年を優に超える歴史を誇る、元祖クロスカントリーモデル「ジープ・ラングラー」。11年ぶりのモデルチェンジで誕生した新型は、従来モデルからどう進化し、何を受け継いだのか。オンロードとオフロード、双方の試乗を通して確かめた。受け継がれる伝統の形
11年ぶりにフルモデルチェンジを受けたジープ・ラングラーが、日本でも2018年11月23日に販売開始となる。何はともあれ最初に日本へ導入される仕様を報告したい。
2ドアの「ジープ・ラングラー」は、改良された3.6リッターV型6気筒エンジンを搭載する「スポーツ」というグレードが日本に入る。こちらは459万円。4ドアの「ジープ・ラングラー アンリミテッド」には2つの仕様があり、新開発の2リッター直列4気筒エンジン搭載のスポーツが494万円、3.6リッターV6の「サハラ ローンチエディション」が530万円となる。なお、より悪路走破性能の充実に重きを置く「ルビコン」は、2019年春以降に日本へ導入される予定で、いまのところ価格は未定だ。
当初導入されるいずれの仕様もトランスミッションは8段ATで、ラングラーとしては初となるフルタイム四駆システムを搭載している。この四駆システムでは「4H AUTO」モードを選ぶと路面コンディションに応じて自動で前後輪に駆動力を配分。「4H」または「4L」モードを選ぶとパートタイム四駆として機能し、センターデフをロックしてさらに強力なトラクションを発生させ、悪路走破性能を高めることができる。
オフロードコースと一般道の両方を走ることができた試乗会会場で目にした新型ジープ・ラングラーのデザインは、従来型とあまり代わり映えがしなかった。
ただしこれはラングラーのファンや、いずれラングラーに乗りたいと思っている方には朗報だろう。このラギッドな形だからラングラーに興味を抱くのであって、おしゃれなツルンとしたSUVが欲しければほかにいくらでもある。仮に「ポルシェ911」が「ランボルギーニ・ウラカン」みたいな格好になったらみんなそっぽを向くのと同じように、ラングラーが「レクサスUX」みたいな形になったらみんなガックリ肩を落とすだろう。
と言いながら乗り込んでみると、インテリアはすっかり現代風になっていてびっくり。基本的な造形こそ水平基調の伝統的なものであるけれど、メーター周囲の縁取りやスイッチ類の意匠などがイマ風に洗練されている。強そうに見せながらもモダンで、どこかスタイリッシュな感じもするインテリアは、カシオの「G-SHOCK」を連想させた。スマートフォンとの連携やタッチパネル式のインターフェイスなど、機能的にも新しい。
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走れば分かる蓄積されたノウハウ
まずはオフロード走行から試す。試乗車は3.6リッターV6と8段AT、そして4ドアボディーを組み合わせた来春日本導入予定のルビコンだ。
この手の本格四輪駆動車のオフロード試乗では“あるある”だけど、クルマの限界のはるか手前でドライバーの限界がやって来る。もうダメだ、と前進するのをためらってしまいそうな急な登坂路や、コブ状の路面、岩場であっても、アクセルペダルをじんわり踏めば、がっしり路面を捉えてじわじわと前進する。
堅牢(けんろう)で耐久性にすぐれるラダーフレーム構造(頑丈なはしご型フレームからサスペンションが生えている)、4本の脚(サスペンション)が大きく伸びたり縮んだりするリジッドアクスルといった基本構造は、モデルチェンジにあたっても不変。このクルマでオフロードを走っていると、例えば太極拳のような、中国の武術達人を連想する。ゆっくりと、けれども大きく手足が伸びて、また元に戻る。チャキチャキ走るのではなく、このゆったりとした余裕のある動きが、大きな凸凹や急勾配が立ちはだかるオフロードでは、絶大な信頼感につながる。
おもしろいのは、ドライバーは大変な状況で運転していると感じているのに、乗り心地がいいことだ。ものすごい凸凹を乗り越えても乗員に伝わるショックはマイルドだ。ステアリングホイールから手のひらに伝わる衝撃、いわゆるキックバックも同じである。このあたり、ただ悪路を乗り越えられるというだけでなく、例えば毎日、何時間も悪路を走り続けることを想定したセッティングだと感心した。
もうひとつ感じたのは、3.6リッターエンジンのトルク特性が悪路を走るのに向いていること。スペック表を見ると、347の最大トルクを4100rpmで発生しているから、アイドル回転付近で最大トルクを発生するクルマも多い現代の水準で言えば、スペック的には低回転で力を発揮するエンジンだとは言いがたい。
けれども岩場や坂道では、アクセルペダルにわずかに力を入れることでググッと4輪に力が伝わり、突破することができる。このあたり、やはりクルマはスペックじゃないというべきか、セッティングの妙と言うべきか。ジープというブランドにはノウハウが蓄積されていることを感じた。
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オンロードでは“昔ながらのクロカン”そのもの
続いてオンロード試乗へ。こちらは、売れセンだと思われる4ドアの2リッター仕様、ジープ・ラングラー アンリミテッド スポーツを選んだ。
試乗する前にwebCGスタッフと話したのは、今年は「メルセデス・ベンツGクラス」や「スズキ・ジムニー」などがモデルチェンジを受けて、オンロードでの快適性や操縦性が飛躍的に向上した、という話題だった。だからジープ・ラングラーもそうなっているのではないか、と。
オンロードに出て、ちょっとした舗装の荒れを突破する。あれ、ちょっとマイルドになっているような、いやいや、そうでもないような……。続いて、ワインディングロードというほどではないけれど、コーナーが連続するセクションをそこそこのスピードで走ってみる。結論から書くと、Gクラスやジムニーのような、劇的な改善は見られなかった。ラダーフレームやリジッドサスペンションという基本構造に由来するクセが、かなり明確に感じられる。
例えばコーナーでステアリングホイールを切ると、ワンテンポ遅れてから車体が向きを変える感がある。クルマが好んで向きを変えるのではなく、「あんたがハンドルを切るなら仕方ないよ」と言いながら、よっこらしょとコーナーを曲がる。凸凹を突破すると、タイヤやサスペンション、ボディーでショックを吸収するのではなく、車体全体が揺さぶられるような感覚がある。
むむむ、これは万人にオススメできる乗り心地ではない。「カッコいい!」と飛び付いて買ってしまった場合、家族や友人から責められたり、あるいは本人も「こんなはずではなかった……」と後悔するかもしれない。
と、ここまで書いて、いやいやそれは了見の狭い見方だという可能性もあると思い直した。実は今年、価値観がひっくり返るような経験をしたからだ。
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ファンはそんなこと気にしない
価値観がひっくり返るような経験とは、某誌で「メルセデス・ベンツの新型Gクラスを、ファッション関係の従来型オーナーに乗ってもらう」という取材をした時のことだ。ご存じのように従来型Gクラスはファッション関係者に大受けで、多くの方が乗っている。ちなみに集まっていただいた従来型オーナー5人は、ひとりもデフロックのスイッチを操作したことがなかった。なかには、「ディーラーのお兄さんから『このスイッチを押すと壊れる』と言われた」という方もいたぐらい。いくらなんでも、いくらなんでも……。
で、5人全員が新型Gクラスのほうが乗り心地や取り回しが良いことを認めつつも、同時に「普通のクルマになっちゃった」と語ったのだ。つまりNVHが向上したとか微舵領域におけるゲインが上がったといった、自動車評論的にはプラスの進化も、見る人によっては「普通になった」という評価なのだ。
というわけで、オンロード性能に驚くほどの進化が見られなかったジープ・ラングラーであるけれど、そんなことはファンやこのクルマに憧れている人にとっては、「デザインが変わらなかったこと」に比べれば大きな問題ではないのかもしれない。見た目も運転した感じも、フツーのクルマとは明らかに違うからジープ・ラングラーの存在価値があるのだ。ちょっとゴワゴワするけれど、いざという時に頼りになる、そんな突出した個性がこのクルマにはある。
ちなみに、2010年には約1900台だった日本におけるジープの販売台数は、2017年には5.3倍の1万台オーバー。今年は1万2000台を突破することが確実で、そのうちの約4割をラングラーが占めている。世界的に見ても、日本は本国アメリカに次ぐラングラーの大きな市場だという。それはやはり、他のクルマにはない、圧倒的に濃いキャラクターをラングラーが備えているからだろう。
速いとか遅いとか曲がるとか止まるとか、そんなささいなことよりも、自分を表現できるキャラクターがあることのほうがいまの日本では大事。新型ジープ・ラングラーに試乗しながら、そんなことを痛感したのだった。
乗り心地が悪いほうがフツーじゃなくてカッコいいという人が現れる、おそろしい時代になった。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
ジープ・ラングラー アンリミテッド ルビコン
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4785×1875×1868mm
ホイールベース:3008mm
車重:2021kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.6リッターV6 DOHC 24バルブ
トランスミッション:8段AT
最高出力:284ps(209kW)/6400rpm
最大トルク:347Nm(35.4kgm)/4100rpm
タイヤ:(前)LT255/75R17 111/108Q M+S/(後)LT255/75R17 111/108Q M+S(BFグッドリッチ・マッドテレーンT/A MK2)
燃費:シティー=18mpg(約7.7km/リッター)、ハイウェイ=23mpg(約9.8km/リッター)、複合=20mpg(約8.5km/リッター)(米国EPA値)
価格:--円/テスト車=--円
オプション装備:--
※数値は米国仕様を元にした参考値
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:121km
テスト形態:オフロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ジープ・ラングラー アンリミテッド スポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4870×1895×1845mm
ホイールベース:3010mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:272ps(200kW)/5250rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/3000rpm
タイヤ:(前)245/75R17 112T/(後)245/75R17 112T(ブリヂストン・デューラーA/T RH-S)
燃費:11.5km/リッター(JC08モード)
価格:494万円/テスト車=--円
オプション装備:--
テスト車の年式:2018年型
テスト開始時の走行距離:800km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(8)/高速道路(0)/山岳路(2)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
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