トヨタとソフトバンクの強力タッグ
MONETがMaaSの未来を切り開く
2019.04.01
デイリーコラム
多数の企業や自治体が参加を表明
2019年3月28日、トヨタ自動車とソフトバンクの共同出資会社MONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)による「MONET SUMMIT」が開催され、「日野自動車および本田技研工業との資本・業務提携」「MONETコンソーシアム設立」という2つのニュースが発表された。イベント冒頭には、短時間であったもののトヨタの豊田章男社長がサプライズで登場。全国280もの自治体関係者や、コンソーシアムに名を連ねる90ほどの企業関係者が参加する、盛況なイベントとなった。
モネ・テクノロジーズは、昨年(2018年)10月に電撃的に発表された、トヨタとソフトバンクの戦略的提携で生まれた企業だ。事業内容はMaaS。MaaSとは「Mobility as a Service」の略で、移動そのものをサービスにするという意味である。トヨタは、これにモビリティーサービス用の次世代自動運転車「e-Palette(イーパレット)」を組み合わせた「Autono-MaaS」事業の展開を予定している。モネ・テクノロジーズは、この新しいビジネスを実現するために設立されたのだ。
具体的には、自動運転車両と利用者、第3のサービス提供者、自治体などを結び付けるプラットフォームの開発と運営がモネ・テクノロジーズの仕事となる。2023年のイーパレットの市場投入にあわせ、サービスをスタートさせるという。
まだ設立から数カ月しかたっていないが、モネ・テクノロジーズはすでに全国150ほどの自治体との話し合いを持ち、豊田市や東京・丸の内などで実証実験を実施。全国17の自治体との連携も発表している。高齢化や人手不足などに悩む地方都市も、Autono-MaaS事業に大きな期待を寄せているといっていいだろう。
未来のビジネスを模索するのが役割
「20年後に日本で最も役立つ会社でありたい」とモネ・テクノロジーズの社長兼CEOの宮川潤一氏は言う。始まって間もない会社が何を大きなことを言うのか? といぶかしがる人もいるだろう。しかし、宮川氏の言葉は実現する可能性が高い。なぜなら、MaaSによって世界が大きく変わることが予想されるからだ。
MaaSは無人タクシーとかそういう単純で限られたサービスを指すものではない。たとえば以下のようなアイデアが実現するかもしれない。
「どこかに食事に行きたいと無人の自動運転車を呼ぶ。車両に乗ったら、“A店は500円引き”“B店は小皿ひとつ無料”と表示され、どちらかを選ぶと自動でその店に連れて行ってもらえる」
「無人の自動運転車両の内部がバーになっており、アプリで呼ぶと家まで迎えに来て、帰るときは同じように自宅に送ってくれる。他の友達も拾って走り、乗っている人は移動中に中でお酒を楽しめる、店舗の代わりになる」
このように、移動の空間と時間を次世代サービスのインフラとするのがMaaSなのだ。
ただ、大問題はどんなサービスであればビジネスになるかがまだ分からないこと。安い無人タクシーだけではビジネスにならない。ただ移動するだけでは誰ももうからない。なにかプラスアルファのサービスでお金が発生しなければ、結局のところ普及は難しい。お金がなければ、自動運転車両やサーバーの維持管理費を負担することができないからだ。
そこで生まれたのがMONETコンソーシアムだ。「次世代モビリティーサービスの推進」「移動における社会課題の解決や新たな価値創造」を目的に、「MaaS車両とサービスの企画」「他社サービスとのデータ連携」「自治体とのマッチング」「勉強会・情報交換会の実施」「課題とりまとめ・提言活動」などを行うという。あいまいもこな未来のビジネスの姿を模索するための団体といっていいだろう。
“チームジャパン”が世界に挑む
モネ・テクノロジーズの声掛けにより、MONETコンソーシアムには、すでに88社が参加を表明。小売りから保険、不動産、流通、IT、自動車関連まで、その顔ぶれは多彩だ。2019年4月を最初の申し込み期限とし、5月末、8月、10月、2020年3月に話し合いを実施するという。短期間に多くの企業が参加したのは、MaaS事業に対する期待の大きさが理由だろう。MaaSと組むことで、どんな業種も大化けする可能性がある。
また、冒頭で触れた日野およびホンダとの資本・業務提携のインパクトも大きい。MaaS車両側にトヨタだけでなく、ホンダも加わるのだ。ある意味、すでにトヨタと協力関係にあるマツダやスバル、スズキもダイハツも、将来的にはこのMONETの提供するサービスに参加するはずだ。残る日産と三菱の動向は不明だが、どちらにせよ現在のところモネ・テクノロジーズは唯一の“チームジャパン”といえる存在だろう。
ちなみに、こうしたプラットフォームビジネスは、NTTドコモやKDDIといった他のキャリアも実施したいと考えていたはず。そういう意味では、トヨタと組んだソフトバンクがスタートダッシュを決めた格好となった。また、同じ試みは日本だけでなく海外でも進められている。どのプラットフォームが世界標準になるのかという覇権争いも、今後は激しくなっていく。モネ・テクノロジーズの社長兼CEOの宮川氏の口からは「いつかは海外へ」という言葉も聞こえた。チームジャパンの船出に期待したい。
(文と写真=鈴木ケンイチ)
拡大 |

鈴木 ケンイチ
1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレース(マツダ・ロードスター・パーティレース)に参戦。新車紹介から人物取材、メカニカルなレポートまで幅広く対応。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを“分かりやすく”“深く”説明することをモットーにする。
-
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!NEW 2026.1.19 アメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。
-
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る 2026.1.16 英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。
-
市街地でハンズオフ運転が可能な市販車の登場まであと1年 日産の取り組みを再確認する 2026.1.15 日産自動車は2027年に発売する車両に、市街地でハンズフリー走行が行える次世代「ProPILOT(プロパイロット)」を搭載する。その発売まであと1年。革新的な新技術を搭載する市販車の登場は、われわれにどんなメリットをもたらすのか。あらためて考えてみた。
-
30年の取材歴で初めてのケースも 2025年の旧車イベントで出会った激レア車 2026.1.14 基本的に旧車イベントに展示されるのは希少なクルマばかりだが、取材を続けていると時折「これは!」という個体に遭遇する。30年超の取材歴を誇る沼田 亨が、2025年の後半に出会った特別なモデルを紹介する。
-
東京オートサロンでの新しい試み マツダのパーツメーカー見学ツアーに参加して 2026.1.13 マツダが「東京オートサロン2026」でFIJITSUBO、RAYS、Bremboの各ブースをめぐるコラボレーションツアーを開催。カスタムの間口を広める挑戦は、参加者にどう受け止められたのか? カスタムカー/チューニングカーの祭典で見つけた、新しい試みに密着した。
-
NEW
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
NEW
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
NEW
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。 -
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】
2026.1.17試乗記BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。 -
新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.1.16デイリーコラム英国のモーターサイクル史にあまたの逸話を残してきた名門、ノートンが、いよいよ再始動! その数奇な歴史を振り返るとともに、ミラノで発表された4台の次世代モデルを通して、彼らが思い描く未来像に迫った。



































