マツダCX-30 XD Lパッケージ(4WD/6AT)
神は細部に宿る 2020.01.23 試乗記 マツダの新型クロスオーバーSUV「CX-30」に試乗。映り込みを意識したという大胆なボディーパネルにまずは目を引かれるが、このクルマの魅力の源泉はそれだけではない。内外装の随所に施された丁寧な“仕事”によって、美しい世界観をつくり上げているのだ。必然性のあるサイズ
いまやすっかりマツダの看板シリーズになったクロスオーバーSUV。その最新モデルがCX-30だ。ポジション的には「CX-5」と「CX-3」のあいだ。屋根の低いマツダ車との関係では「マツダ3」格のSUVということになる。
3車のボディーサイズを書き出してみると、このようになる。
- CX-5:全長×全幅×全高=4545×1840×1690mm
- CX-30:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
- CX-3:全長×全幅×全高=4275×1765×1550mm
こうして寸法比較すると、CX-5がかなり大きい。逆にCX-3はイメージよりかなり小さい。デザインの統一性が高いためか、またSUVを増やすの!? と感じさせなくもないCX-30だが、マツダSUVシリーズの新顔として、ちゃんとサイズ的な必然性があったわけである。
パワートレインは1.5リッターがないことを除いてマツダ3と同じ。すなわち2リッターガソリンが2種類と、1.8リッターディーゼルである。
今回試乗したのはディーゼルの「XD Lパッケージ」の4WD(330万5500円)。ちなみに同じクリーンディーゼルを搭載したマツダ3の同級グレードは320万9555円。ついついCX-30に手が伸びてしまいそうな価格設定といえる。
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随所に漂う手づくりの逸品感
「美しく走る」という広告コピーでもおなじみのCX-30は、ビジュアル系のエクステリアが大きなセールスポイントである。
冬のギラッとした日差しの下、ソウルレッドのボディーを観察すると、リアフェンダーの面の張りが美しい。微妙な3次曲面がもたらすドアの映り込みも格別だ。Kカメラマンがいつになく激写している。
細部の仕上げも見もので、例えばワイパーが収まるボンネット終端部のパネルはネコの耳のように薄く見える。これだって大量生産の金型から生まれていることには違いないが、そう感じさせない手づくりの逸品感が随所にある。跳ね石などでちっちゃなエクボひとつできても悲しいだろうなあ、なんてやっかみしか思い浮かばない美ボディーである。
Lパッケージということもあり、インテリアもきれいで上質だ。ドア内張りやダッシュボードのフェイクレザーは本物っぽく見えるし、ステアリングやATセレクターのリアルレザーは手触りがいい。使ってナンボのSUVにこのほうがいいのかどうかは考え方だろうが、レザー感の高い室内だ。
一方、これだけデザインに重きを置いたボディーだから、リアシートや荷室はとくべつ広いわけではない。その点でもCX-3とCX-5の中間である。ノーズの長いプロポーションはマツダ3に通じるが、サイドウィンドウは後ろまで広くとられているため、3の「ファストバック」のように、昔の「日産チェリーX-1クーペ」並みに斜め後方が見えないということはない。
パワーはもっとあってもいい
ディーゼルのCX-30はゆったりした走りの中型SUVである。最高出力116PS、最大トルク270N・mの1.8リッターディーゼルターボは、マツダ3やCX-3に搭載されているものと発生回転数などのチューニングも含めて同じである。だが、1530kgの車重はマツダ3のXD Lパッケージより60kg重い。「マツダ2」ベースのCX-3比だと160kgも重い。当然、動力性能にパンチは感じない。
しかも今回、試乗に同道したのは1リッターコンパクトSUVの「トヨタ・ライズ」だった。クラスは違うし、もちろん比較テストでもなんでもないのだが、車重1tをきる軽量ボディーを元気のいいガソリン3気筒ターボで動かすライズととっかえひっかえしていると、正直、CX-30はちょっと“眠たい”なあと思った。
ただこのクリーンディーゼル、マナーのよさはさすがである。初めてライズから乗り換えたときは、こっちのほうがガソリンエンジンではないかと思った。それほど滑らかで、音も静かだ。6段ATがいまどき段数不足であるという指摘もあるようだが、乗っていて特に不満を覚えるようなことはない。それよりも、これだけスポーティーな美丈夫なのだから、カタログアピールを考えても、エンジンのアウトプットにもう少し色をつけられなかったものかと思う。
曲がりたくなるウインカー音
約360kmを走って、燃費は13.8km/リッター(満タン法)だった。トヨタ・ライズも13km/リッター台だったが、こちらはもちろんレギュラーガソリンより2割近く安い軽油でいける。2020年年明けから波乱含みの中東情勢だ。というか、波乱のない平和な中東が果たしてこの先実現するのだろうか。
ディーゼルの最上級モデルだから、運転支援システムを含めて装備は豊富だ。冬場の味方、ステアリングヒーターやシートヒーターも標準装備である。
でも、CX-30に乗っていて細かいところで妙に気に入ってしまったのはウインカーの音だった。“コチコチ”という、まったく反響が残らない音で、いままで聞いたことがない上質なウインカー作動音である。これが耳に心地よくて、いつもより多めに曲がりたくなった。外で見るLEDのウインカーもひとくせあり、余韻を残して拍動するように明滅する。「神は細部に宿る」を合言葉にさまざまな部署の人ががんばってつくったと感じさせるクルマである。
CX-30はたしかに美しく走りたい人のSUVだ。最大の魅力は、丹精込めたスタイリング。そのルックスにはガソリンエンジンのほうがよりマッチしていると思ったが、燃料コストの安いクリーンディーゼルがフツーに選べるのはもちろんマツダSUVならではである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
マツダCX-30 XD Lパッケージ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
ホイールベース:2655mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:116PS(85kW)/4000rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(トーヨー・プロクセスR56)
燃費:18.4km/リッター(WLTCモード)
価格:337万1500円/テスト車=365万0880円
オプション装備:ボディーカラー<ソウルレッドクリスタルメタリック>(6万6000円)/360°セーフティーパッケージ<360°ビューモニター+ドライバーモニタリング>(8万6880円)/スーパーUVカットガラス(フロントドア)+IRカットガラス(フロントガラス/フロントドア)、CD&DVDプレーヤー+地上デジタルTVチューナー<フルセグ>(4万9500円)/ボーズサウンドシステム<オーディオパイロット2+センターポイント2>+12スピーカー(7万7000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:2714km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:364.6km
使用燃料:26.4リッター(軽油)
参考燃費:13.8km/リッター(満タン法)/14.1km/リッター(車載燃費計計測値)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
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