BMW 320d xDriveツーリングMスポーツ(4WD/8AT)
ツーリングの名にふさわしい 2020.02.24 試乗記 新型「BMW 3シリーズ ツーリング」の日本導入7モデルのうち、まずは最高出力190PSの2リッター直4ディーゼルと4WDの組み合わせとなる「320d xDriveツーリングMスポーツ」に試乗。拡大された荷室の使い勝手や、走りの進化を確かめた。ディーゼル・ツーリングも4WDのみ
新しい320dツーリングは滑らかな高速道路上では何の不満もない。素晴らしく快適で俊足、その上経済的なグランドツアラーである。今年はどこも雪不足だが、そのまま一気に蔵王あたりまで足を延ばしたくなった。
通算7代目に当たる新型G20型「BMW 3シリーズ」は2019年1月に国内発売されたが、まず2リッターガソリン4気筒ターボの「320i」「330i」が先行、5月になってようやく2リッター4気筒ディーゼルターボを積む「320d」(なぜか「xDrive」と「xDrive Mスポーツ」のともに4WDのみの2車種)が追加導入された。ステーションワゴン版の新型ツーリング(こちらは2代目の3シリーズから設定されたために6代目)はさらに遅れて同年9月に導入されたもので、デリバリーは11月から始まった。
日本仕様はベーシックな最高出力184PSという2リッター直4ターボの「320i SE」から、同387PSとなる3リッター直6ターボの「M340i xDrive」まで7車種。そのうち2リッター直4ディーゼルターボを積む320dツーリングは2モデル設定されているが、強力なトルクを考えてのことか、どちらもセダンと同じく4WDのxDriveとなり、価格は「xDriveツーリング」が614万円、「xDriveツーリングMスポーツ」が666万円である。
以前から実はディーゼルモデルの人気が高く、先代のF30型3シリーズでは国内販売のおよそ半分をディーゼルモデルが占めているといわれていたから、ツーリングのディーゼルを待っていた人も少なくないはずだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
使いやすさへのこだわり
例によってBピラー以降は専用ボディーというが、ツーリングのボディーサイズは、同じ320d xDrive Mスポーツ比で25mm高い全高を除けばセダンとまったく同一。気になる荷室容量は500~1510リッターで、わずかながら先代モデルより増えているという(標準状態では+5リッター、後席を畳んだ最大時で+10リッター)。
セダンのトランク容量は480リッターだから、わざわざツーリングを選ぶほどでもないと考える人もいるだろうが、後席のアレンジに加えて天地方向に融通が利くのがポイントだ。
念のために記しておくと、ラゲッジスペース容量はウィンドウ下端までボックスを積み上げて計測したものであり、いざという時にはそれを超えて積むこともできる。後方視界を遮るのはお勧めできないものの、ある程度なら許容範囲という現実的な使い勝手が織り込まれているのだ。
また、リアテールゲートとは別にガラスハッチだけを開閉できるというBMWツーリングの特長をこの新型も受け継いでいる。さらに荷室のフロアには、アルミレールの内側のラバー部分がリアゲートを閉めるとわずかに上昇して積んだ荷物が滑りにくくなるというアンチスリップレールシステム(オプションのコンフォートパッケージに含まれる)なる巧妙なアイデアが備わっている。ワゴンをつくり続けてきたメーカーならではの芸の細かさである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
エンジンメーカーの面目躍如
パワートレインは当然320dセダンと同一である。型式名は従来型と同じB47型だが、実は中身にはかなりの変更が加えられている。新しいB47型直4ディーゼルターボの最大の特徴は、ターボチャージャーがこれまでのシングルからシーケンシャルツインターボに置き換えられたことだ。
大小2基のターボが回転数と負荷に応じて働くもので、プライマリー側には従来通りVGT(可変ジオメトリーターボ)が採用されている。BMWは以前からシングルターボでも「ツインパワーターボ」(排気を効率良くタービンに導くためのツインスクロールターボを指す)を称しているため紛らわしいが、今回のエンジンは正真正銘のツインターボである。4気筒の場合、排気圧が十分に得られないため低回転でのレスポンス確保に難があるが、それに対応するためのシーケンシャルターボである。また、これまで先代のF30型320dには採用されていなかった尿素水溶液を噴射するSCR触媒も導入されている。
もともとのN47型からガソリン/ディーゼルで多くのコンポーネンツを共用する最新世代モジュラーユニットのB47型に切り替わったのは2014年。その新型ディーゼルを搭載した320dが国内導入されたのは2016年春だったが、2017年末には今回新型3シリーズに搭載されたアップデート版が既に本国では発表されていた。つまりデビューからわずか3年ほどで新仕様にバージョンアップされていたことになる。EUのエミッション規制に対応するにはそれほどのスピード感が必要なのだろう。実際、新仕様のB47型は190PS(140kW)/4000rpmの最高出力と400N・m(40.8kgf・m)/1750-2500rpmの最大トルクには変化なし。狙いはドライバビリティーとエミッションの向上である。
従来型4気筒でもまったく不満はなく同クラスのディーゼルの中ではトップレベルと考えていたのだが、新型ディーゼルエンジンは低回転からさらにレスポンス良く、動き出しから身軽に反応する。その先もトップエンドに至るまでまったく頭打ちになる気配を見せず、リミッターが作動する5000rpmまでストレスなく吹け上がる。もちろん音も振動も気にならない。
普通のディーゼルエンジンの場合は、リミットのかなり手前で苦しくなるのでそもそも回す気にはならないのだが、320dはディーゼルとは思えないほど軽々とシャープに回るので、ついギリギリまで引っ張ってしまいがちだ。4WDのツーリングだから車重は1750kgとやや重いが(セダンの同グレード+70kgほど)、普通に走る際には2000rpmも回さなくとも十分に速い。
Mスポーツ以外も試したいけれど
街中でも高速道路でもほとんど非の打ち所がないような俊足ワゴンは、ワインディングロードでも当然スポーティーですがすがしい。コーナーでは面白いようにノーズがスイッと狙い通りに向きを変えるが、FWDになった新型「M135i」のいささか人工的な鋭さとはやはりちょっと種類が違う。もっと自然でリニアなフィーリングだし、またxDriveのおかげでぬれた山道でもせいぜい後輪がジリッと揺れるぐらいで安定感は抜群だ。
それよりも問題はやはり乗り心地である。19インチタイヤを履いたセダンの「330i Mスポーツ」ほどではないとはいえ、ちょっと硬すぎる。ランフラットタイヤのせいというよりも、締め上げられた足まわりのために、路面が荒れている一般道では容赦なく上下に揺すられる。もちろん、ラフなバイブレーションなどは一切感じられないが、スムーズな高速道路での快適さとはまったく別の顔をのぞかせるのだ。
人によっては、ゴツゴツした頑強な足まわりこそドイツ車らしくて頼もしいと歓迎するかもしれないが、私はもう少し穏やかな方がいい。ついでに言えばリムが太すぎるMスポーツステアリングホイールも好みに合わないので、選ぶならMスポーツではないスタンダードの320dがいい。そのうちラインナップが拡充される……はずである。
(文=高平高輝/写真=花村英典/編集=櫻井健一)
テスト車のデータ
BMW 320d xDriveツーリングMスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4715×1825×1465mm
ホイールベース:2850mm
車重:1750kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:190PS(140kW)/4000rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)225/45R18 95Y/(後)255/40R18 99Y(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック3)※ランフラットタイヤ
燃費:18.2km/リッター(JC08モード)/14.6km/リッター(WLTCモード)
価格:666万円/テスト車=790万3000円
オプション装備:イノベーションパッケージ<BMWレーザーライト+BMWヘッドアップディスプレイ+BMWジェスチャーコントロール>(24万5000円)/コンフォートパッケージ<ラゲッジコンパートメントパッケージ+ストレージパッケージ>(9万3000円)/デビューパッケージ<BMWインディビジュアルボディーカラー:ドラバイトグレー+Mライトアロイホイール+オークグレインファインウッドインテリアトリム+ヴァーネスカレザーシート>(39万2000円)/サウンドパッケージ<harman/kardonサラウンドサウンドシステム+アコースティックガラス+地上デジタルTVチューナー>(19万1000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/アクティブプロテクション(4万8000円)/パーキングアシストプラス(6万8000円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1472km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:668.0km
使用燃料:42.2リッター(軽油)
参考燃費:15.8km/リッター(満タン法)/16.1km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
-
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】 2026.8.25 BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。
-
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】 2026.8.25 カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
NEW
第60回:BYDオートジャパンの社長を直撃! いま日本で「ラッコ」を買う正義とは?
2026.8.27小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ中国BYDの軽スーパーハイトワゴン「ラッコ」がついに日本上陸を果たした。やっぱりというか期待どおりというか、その低価格と装備の充実ぶりに不躾・小沢コージも大変驚いた。BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長を直撃し、いろいろ聞いてきた。 -
NEW
BMW iX3 50 xDrive Mスポーツ(前編)
2026.8.27あの多田哲哉の自動車放談BMWの期待がかかる電気自動車「iX3」の新型に、BMWとの協業経験もあるプロのエンジニアは、その仕上がりをどう評価するのだろうか? -
NEW
これが次世代アウディの源流 ハイブリッドスーパーカー「ヌヴォラーリ」に乗って気づき感じたことは?
2026.8.27デイリーコラム2026年6月に発表されたアウディのハイブリッドスーパーカー「ヌヴォラーリ」は、同ブランドの新しいデザインフィロソフィーを体現したモデル。個性的な内外装やこだわりのつくり込み、そしてステアリングを握った印象を米モントレーから報告する。 -
NEW
第975回:【最終回】人それぞれに「最後のアルファ・ロメオ」
2026.8.27マッキナ あらモーダ!イタリア・シエナで開催された「アルファ・ロメオ・スパイダー/GTV」のささやかなオーナーミーティングを、地元在住の大矢アキオが取材。あなたにとって最後で最高のアルファ・ロメオは、いつの世代のどのモデルですか? -
「カスタム」はオラオラ路線へ!? 新しい「ホンダN-BOX」のフロントデザインを考察する
2026.8.26デイリーコラム2026年7月に登場した「ホンダN-BOX」のマイナーチェンジモデルはデザインに手が入れられており、特に「カスタム」はいわゆる「オラオラ感」が大幅にアップ。他社の同系モデルと同様の路線を歩むことになった。いまホンダのデザインに何が起きているのか? -
第126回:新型BMW X5(前編) ―これは終わりの始まりか? 迷走する“ノイエクラッセ・デザイン”に物申す―
2026.8.26カーデザイン曼荼羅スポーティーなプレミアムSUVの代名詞だった「BMW X5」が、ついに新型に! “ノイエクラッセ”のエッセンスが取り入れられたそのデザインの評価は? そもそもこの造形で、BMWはなにを表現したかったのか? 賛否のわかれる新型X5のデザインを、有識者と考えた。



















































