驚くべき介助のうまさ! スバルの最新「アイサイト」に注目せよ
2020.08.21 デイリーコラム過去20年の実績を生かして
「レガシィB4」がついに日本国内販売終了となり、「アウトバック」も国内向けフルモデルチェンジは後回し、「インプレッサ」系はもうずいぶん前から本格的なスポーツモデルが用意されなくなったし、「WRX」もここしばらくは戦線縮小っぽい。……といった今日このごろ、濃厚な日本のスバリストにとって、最後の心のよりどころは「レヴォーグ」だろう。
そんなレヴォーグの新型がついに姿をあらわして、予約受注を開始した。今度のレヴォーグもおそらく日欧での事実上のフラッグシップとなるだけに、さすがはスバル最新技術ショーケース……の様相を呈している。
改良型スバルグローバルプラットフォームに新開発の1.8リッターターボ、スバル初の連続可変ダンパーなど、そこには走行性能にまつわる新機軸も満載である。しかし、純粋技術的にもっとも注目すべきは、ついに根底からの大転換をはたした「アイサイト」だろう。
アイサイトは1999年に市場投入された「ADA(アクティブドライビングアシスト)」からの流れをくむ技術で、自動ブレーキやアダプティブクルーズコントロール(ACC)などの先進安全運転支援技術では、世界的にも“はしり”といえる存在だった。しかも、最初期のADAから最新の「アイサイトver.3」まで、その基本構成が同じだったことにも驚く。前方検知機能をステレオカメラだけ(リア側には左右レーダーとソナーが備わっていたが)でおこなう基本原則は、約20年間ずっと変わらなかった。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
「これでもか」の機能追加
新型レヴォーグで市場投入される新型アイサイトはそこが根本的に変わった。もっとも、アイサイトの代名詞たるステレオカメラは健在で、それが飛躍的に小型化されてフロントウィンドウ裏に密封(?)されるようになったのも新しい。しかし、最大の変革は前方検知機能に、ついにレーダーが併用されるようになったことである。その新型アイサイトではフロントバンパー左右それぞれの側方にレーダーが組み込まれており、ステレオカメラも広角化されているので検知範囲が大幅に拡大した。さらに新型電動ブレーキブースターと強化されたステアリング制御も相まって、交差点での横断歩行者、対向車、自転車などへの対応力が明らかに向上した。
今度のレヴォーグではそんな新型アイサイトが全車標準装備になったうえで、さらなる上級版の「アイサイトX」も登場した。アイサイトXの大きな特徴は、レーダーとステレオカメラによる新型アイサイトに、さらに高精度3D地図ユニットとドライバー監視カメラが追加されることだ。
アイサイトXではこれによって、ウインカー操作だけで半自動車線変更する「アクティブレーンチェンジアシスト」、渋滞時のストップ&ゴーがほぼ自動となる「渋滞時発進アシスト」、急病などによる運転不能状態を検知すると自動停止する「ドライバー異常時対応システム」、カーブや料金所でのオーバースピードを抑制する「カーブ前・料金所前速度制御」といった機能が追加される。そして「渋滞時ハンズオフアシスト」という名称から分かるように、国内ではBMWと日産(の「プロパイロット2.0」)に続くハンズオフ運転も実現した。
受注開始に合わせて開かれた新型レヴォーグのプロトタイプ試乗会では、そのアイサイトXもプチ体験できた。アイサイトXの個々の機能はすでに他メーカーで実用化されているものが多いが、平常時(=車線維持や追従走行など)のブレーキやステアリングの制御の滑らかさはなかなかものだ。このあたりにはADAからのノウハウの蓄積と新型レヴォーグの基本フィジカル性能をうかがわせるところである。カーブや料金所手前での速度制御が「おお、うまい」と思わず声が出てしまうほど自然なのは、それらをカメラやレーダーではなく、高精度3D地図で先読みしているからだろう。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
最先端にはあと一歩
アイサイトXでは高精度3D地図以外にも地味ではあるが大きな技術変革がある。それはステアリングの“手ばなし運転”の検知方法が、反力センサーからタッチセンサーに変わったことだ。従来の反力センサーでは、アイサイトに合わせた運転がうまくなるほどクルマ側に「手ばなし運転」と誤認されがちだったが、タッチセンサー式なら、そうしたジレンマから解放されるはずである。
続いて、ドライバー異常対応システムを体験するために、わざと気を失ってみる(=頭を下げて、そのまますべての警告を無視し続ける)と、新型レヴォーグはハザードとホーンをヒステリックに作動させながら、徐々に速度を下げてスッと停止した。まるでクルマが自分のかわりに立ち止まって「誰か助けてください!」とさけんでいるかのようで、なんともいとおしい気持ちになった。同時に、今回はクルマにドッキリをしかけているようで思わず笑いたくもなったが、現実世界でこれを使うときは、おそらく笑える状況ではないだろう。
繰り返しになるが、アイサイトXは国内ではBMWと日産に続く3例目のハンズオフ運転技術となる。ただ、高精度3D地図を使っているにもかかわらず、現時点では「渋滞時の追従走行」というBMWと同等の機能にとどまっているのはちょっと残念だ。というのも、BMWはそれをカメラとレーダーだけでやっている。いっぽう、アイサイトXと同じく高精度3D地図を使う日産プロパイロット2.0は、一歩進んだ単独高速走行でのハンズオフも実現しているのだ。
いずれにしても、現時点ではドライバーが前方から目をはなすことはできないから、正直いうと、実用上の機能に決定的な差異はまだない。ただ、日本の濃厚なスバリストにしてみれば、レヴォーグは最後のトリデであり、アイサイトはいつも世界最先端であってほしい。
(文=佐野弘宗/写真=スバル、田村 弥/編集=関 顕也)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
-
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する 2026.10.16 年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。
-
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する 2026.10.15 光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。
-
「BYDラッコ」「スズキeスカイ」登場で卍どもえに 軽乗用BEVの覇権はどこが握る? 2026.10.14 これまで「日産サクラ/三菱eKクロスEV」と「ホンダN-ONE e:」のみだったところに「BYDラッコ」と「スズキeスカイ」が加わり、軽BEV市場がにわかに盛り上がりを見せている。どれもほぼ同じ床面積を持つBEVだが、比べてみるとその中身は結構違う。今後の覇権を握るのはどの陣営か。
-
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く 2026.10.12 アルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは?
-
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く 2026.10.9 パナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。







































