BMW 218dグランクーペ プレイ エディションジョイ+(FF/8AT)/318iツーリング(FR/8AT)
飛び道具はいらない 2020.12.19 試乗記 クルマの本質は“素”のモデルにこそにじみ出る! 「218d」と「318i」、すなわち「2シリーズ グランクーペ」と「3シリーズ ツーリング」のエントリーグレードに試乗し、入門用BMWの実力をテストした。ややこしい経歴
気づけばBMWもフルラインナップメーカーだ。グループのMINIとロールス・ロイスを含めればもともと超ワイドレンジな自動車メーカーだったが、BMWブランドだけを見ても、5ドアハッチバックの「1シリーズ」からフルサイズ4ドアクーペの「8シリーズ」までそろっているうえ、「X1」から「X7」まで、SUVだけでフルラインナップが形成される。エンジンやプラットフォームのモジュラー化が進み、モデルを増やすことのメリット(販売台数増加)がデメリット(開発コスト増加)を上回るようになったことに加え、ユーザーの価値観が多様化し、伝統的なセダンやワゴンだけをつくっていたのでは取り残されてしまうからだろうが、そうじゃなくても単にライバルがやり始めたら対応するしかない。
なかでも新しいのが2シリーズだ。1シリーズから「クーペ」や「カブリオレ」が独立して生まれた。最近も同じ図式で3シリーズの「クーペ」が独立して「4シリーズ」になった。2シリーズももともとはベースの1シリーズと同様、エンジン縦置きの後輪駆動(RWD)だったが、1シリーズがMINIのコンポーネントを用いたエンジン横置きの前輪駆動(FWD)に転じる計画にのっとって、2014年、1シリーズよりも先に同社初のFWD車として新世代2シリーズ(「アクティブツアラー」というハッチバックとそのホイールベースを伸ばしてミニバン化した「グランツアラー」)が発売された。ややこしい。
しばらくクーペ/カブリオレ系2シリーズはRWDで、ハッチバック/ミニバン系2シリーズがFWDという時期が続いたが、2019年末にFWD化されたクーペ系2シリーズの第1弾として、4ドアの2シリーズ グランクーペが登場した(RWDのクーペ/カブリオレもまだ売っている)。モデルがどんどん増殖しながら世代交代が絡むので本当にややこしい。消費者の皆さんは全体をきちんと理解する必要はなく、興味を持ったモデルについてのみ調べればOK。
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キビキビと小気味いい
2のグランクーペは全長×全幅×全高=4535×1800×1430mmと、数世代前の3シリーズくらいの、老若男女、誰でも運転しやすいサイズだ。車体サイズに対してキドニーグリルが大き過ぎるのと、横から見るとちょっとプロポーションに寸詰まり感があるのが気になるが、それはBMWのグランクーペと聞くと反射的に4や8の伸びやかなプロポーションを想像してしまうからであって、例えば“2シリーズ セダン”と名乗っていれば、よくまとまっていると思えるのではないか。グランクーペを名乗りながら後席の頭上空間もしっかり確保され、スクエアで使いやすい形状の荷室もある。
乗ったのは218dグランクーペ。2020年夏に追加された2リッター直4ディーゼルターボエンジン(最高出力150PS/4000rpm、最大トルク350N・m/1750rpm-2500rpm)が搭載されている。パワーは平均的。現代のクルマは総じて動力性能が十分なので、平均的ということは不満なしということだ。特にディーゼルエンジンなので、実用域に力強さがあり、使いやすい。WLTCモード燃費は17.1km/リッター。電気仕掛けなしということを考えれば御の字だろう。
この日は先に「5シリーズ」や3シリーズに試乗したため、それらと比べると218dの快適性は一歩劣る。同じブランドで安いほうが快適だと商品ラインナップとしておかしいので、そこは仕方ない。ただし、しっとりとした手応えのステアリングフィールは上級モデルに通じるものがある。218dには快適さよりも軽快さを感じる。キビキビとした小気味よい挙動が目立つ。
車両価格が420万円で、テスト車のように「iDriveナビゲーションパッケージ」や「ハイラインパッケージ」(レザーのシートヒーター付き電動フロントシート)などのオプションを付けると515万9000円となる。額面を見ると、やっぱりBMWは同クラスの国産車よりも割高なんだなと感じる。実際には残価を高く設定できることもあって月々の支払いはさほど高額にはならないはずだが、このクルマにはまずBMWを好きになってもらう役割があるはずなので、もう少し第一印象としての価格が安いといいのにな。
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漂う相棒感
3シリーズ ツーリングのエントリーモデルである318iツーリングにも試乗した。2019年秋に日本導入された現行3シリーズ ツーリングはこれまで「320i」がエントリーモデルだったが、2020年9月に318iが追加された。320iと同じ2リッター直4ターボエンジンを搭載するが、320iが最高出力184PS/5000rpm、最大トルク300N・m/1350-4000rpmなのに対し、318iは同156PS/4500rpm、同250N・m/1300-4300rpmと、28PSと50N・mのスペックダウン。数値面では地味でおとなしいが、実際に乗ってみても地味でおとなしい。アクセルペダルを床まで踏んづけてもドカーンと加速するわけではない。
それがものの20分も乗っていると、妙になじむというか、まるで5年も6年も乗り続けているかのような相棒感が漂い始める。おそらくこのあたりが実用において過不足のない、ちょうどよいスペックなのだろう。エンジンが何かを主張してくることなく、求め(アクセルペダルの踏み方)に応じて実力の範囲内でパワーを紡ぐ。刺激はないが、痛痒(つうよう)もない。8段ATがこれまた縁の下で仕事をしまくって、結果的に自らの存在感を消し去っている。試乗後に変速についていかなる印象も残っていないということは、タイミングが適切で、変速ショックも気にならないということだ。WLTCモード燃費は13.3km/リッター。もうひと声欲しいが、電気系のアシストがなければこんなものか。
エントリーモデルと表現したが、価格は523万円。さらにテスト車には、レーザーライト(600m先まで照射できるLEDヘッドランプ)やヘッドアップディスプレイ、ジェスチャーコントロール(スイッチに触れなくてもジェスチャーでオーディオなどを操作できる機能)などが盛り込まれた「イノベーションパッケージ」や、「アンチスリップレールシステム」(走行中のみ荷室フロアからゴム製レールが出てきて荷物が滑るのを防ぎ、停車するとレールがへこみ、荷物を取り出しやすくするユニークな機能)などからなる「コンフォートパッケージ」といった165万円分のオプションが付く。
日本ではジャストサイズ
〆て688万円の代物なので、装備に不満があろうはずがない。それにBMWが誇るエッセンシャルな装備は標準で備わる。例えば高性能3眼カメラとレーダーを用いた精度と正確性の高い運転支援システム。これによって、周囲の道路交通や車両の状況に応じて直ちにステアリングを操作することができる状態にある限り(ドライバー監視カメラがよそ見していないかどうかを常にチェックしている)、60km/h以下でステアリングホイールから手を放したまま走行することができる。手を放せることがそのまま体の疲労度の低下につながるというわけではないが、気分的には明らかに楽だし、一歩進んだ感を味わえるのもよい。
荷室の容量は先代モデルから5リッター増加し、500リッターとなった。後席を倒せば1510リッターと十分で、凹凸が少なくデッドスペースが生まれにくい形状。リアハッチ上部のガラス部分だけを開閉できるのは、あればあったで便利。
この日は5シリーズの後にこの318iに試乗した。連続して試すと、3シリーズのコンパクトさ、日本におけるジャストサイズ感をあらためて認識できる。318iには突出した動力性能や自慢できる豪華さはないが、飛び道具のないクルマだからこそ、走る、止まる、曲がるの基本性能の良しあしが際立つ。万人に薦めやすい。
(文=塩見 智/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)
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テスト車のデータ
BMW 218dグランクーペ プレイ エディションジョイ+
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4535×1800×1430mm
ホイールベース:2670mm
車重:1510kg
駆動方式:FF
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(110kW)/4000rpm
最大トルク:350N・m(35.7kgf・m)/1750-2500rpm
タイヤ:(前)225/45R17 94Y/(後)225/45R17 94Y(ブリヂストン・トランザT005 RFT)
燃費:17.1km/リッター(WLTCモード)
価格:420万円/テスト車=515万9000円
オプション装備:ボディーカラー<ミネラルホワイト>(8万円)/パーフォレーテッドダコタレザー<ブラック/ブラック>(0円)/iDriveナビゲーションパッケージ(24万9000円)/ハイラインパッケージ(25万円)/17インチマルチスポークアルミホイール(7万円)/イルミネーテッドベルリンインテリアトリム(3万4000円)/アクティブクルーズコントロール(10万3000円)/BMWヘッドアップディスプレイ(12万3000円)/HiFiスピーカーシステム<205W、10スピーカー>(5万円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:1250km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km/リッター
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BMW 318iツーリング
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4715×1825×1470mm
ホイールベース:2850mm
車重:1610kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:156PS(115kW)/4500rpm
最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1300-4300rpm
タイヤ:(前)225/50R17 98Y/(後)225/50R17 98Y(ブリヂストン・トランザT005 RFT)
燃費:13.3km/リッター(WLTCモード)
価格:523万円/テスト車=688万円
オプション装備:ボディーカラー<タンザナイトブルー>(26万7000円)/イノベーションパッケージ(24万5000円)/コンフォートパッケージ(15万4000円)プラスパッケージ(8万円)/サウンドパッケージ(19万1000円)/ハイラインパッケージ(34万9000円)/Vスポーク“スタイリング775”アロイホイール<オービットグレー>(4万2000円)/電動パノラマガラスサンルーフ(20万6000円)/アクティブプロテクション(4万8000円)/パーキングアシストプラス(6万8000円)
テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:876km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

塩見 智
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