あなたはもう支払った? 自動車税納税の季節にクルマ関連税制の是非を考える
2021.05.31 デイリーコラム嫌なものから目をそらしたい
クルマ生活と税金は切っても切れない関係だ。クルマを買い、所有し、走らせるだけで、日々、あの手この手で税金が徴収される。
たとえば、新車購入時の「自動車税」もしくは「軽自動車税」、「環境性能割(かつての取得税)」、そして「自動車重量税」に「消費税」がある。このうちの重量税は車検ごとに支払わなければならない。
また、燃料の一滴にも税金がかかっている。具体的にいうと、ガソリンには「揮発油税+地方揮発油税(以下、合わせてガソリン税)」、ディーゼル軽油には「軽油引取税」、さらに両方に石油税が課せられる。その額は1リッターあたりでガソリン税が合計53.8円(沖縄県を除く)と石油税が2.8円、軽油では軽油取引税32.1円と石油税2.8円。これが燃料の価格に上乗せされている。しかも、ガソリンではその税込み価格にさらに消費税がかかる……という二重課税問題も、ずっと放置されたままだ(軽油引取税は消費税課税対象外なので、二重課税問題はガソリンのほうが大きい)。
ただ、クルマの税金については、普段は考えないクセがついているのは筆者だけだろうか……。思い返してみると、クルマ購入時は事務手続き料もひっくるめて“諸経費”としてあえて見て見ぬふりしていたし、いつもの給油では「今日はリッター1〇〇円かあ」と嘆くだけで、そのうちの半分近くが税金であることは普段忘れている。その理由は、クルマにまつわる税金があまりに多種多様で広範囲にわたり、しかも1年間の税負担などを計算した日には、その支払額に愕然としてしまうからかもしれない。不愉快なことや都合の悪いことを忘れ、精神状態を安定させるのは、人間の防御本能らしい。
……といった冗談はさておき、そんな筆者でも毎年4~5月の時期だけは、クルマの税金についていや応なく考えさせられてしまう。ご想像のとおり、あの自動車税の納税通知書が送られてくるからだ。
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迫りくる“旧車増税”の恐怖
私事で恐縮だが、今年の筆者のもとには、昨年購入した2020年式「ルノー・トゥインゴS」と、2010年式「ルーテシア ルノースポール」の2台分の通知書が届いた。排気量1リッターの前者が2万5000円、2リッターの後者が3万9500円で、合計6万4500円である。
「1リッター以下の自動車税は2万9500円でしょ?」とお思いの向きもいるかもしれないが、消費増税(8→10%)がされた2019年10月1日以降に新規登録されたクルマは、自動車税が減税となっている。しかも小さな排気量区分ほど減税額が大きく、その額はトゥインゴも属する1リッター以下の4500円が最大。区分が上がるごとに少しずつ圧縮されていき、2.5リッター超の減税額は一律1000円ずつとなる。
いっぽうで、2010年に新車購入したルノースポールをこのまま大切に乗り続けると、ある日から税金が引き上げられることになっているのは、今から気が重い。念のために軽く説明しておくと、新規登録から13年を超過したクルマは「技術的に旧式なので、環境負荷もいろいろ大きい」という大義名分により、自動車税と重量税が引き上げられるのだ。私のルノースポールの場合は、再来年から自動車税が6000円増の4万5500円、重量税(1.5t以下)が2万4600円から3万4200円(9600円増)となるらしい。自動車税は毎年、重量税は原則2年(車検時)ごとの支払いだから、年間あたり1万0800円の増税だ。とほほ。
……と嘆いていたら、編集担当のほった君に「そんなハシタ金、増税のうちに入りませんよ!」と叱られた。ほった君の愛車といえば、webCGの連載でもおなじみの8リッターV10の「ダッジ・バイパー」だ。そのバカでかい排気量に加えて、国内新規登録からすでに13年以上経過した“ほったバイパー”の自動車税額は年間12万7600円! それ以前から自動車税だけで、約1万7000円(!!)の増額だそうである。
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電動化時代の買い替え振興策と捉えれば……
この登録13年で突如ふりかかる“旧車増税”は、当然のごとく、クルマ好きの間ですこぶる評判が悪い。ヒストリックカーの文化的意義へのリスペクトに欠けるといわれても仕方ない面がなくはないし、また「クルマにかぎらず、まだ使えるものを捨てさせるほうが、非エコだろ!?」という言い分も、まったく正論というほかない。
しかし、旧車増税については、じつは私は基本的に反対ではない。年間1万円強程度の増税なら、それだけの理由で気に入っているク
今やすっかりおなじみとなったエコカー減税・補助金も、導入のキッカケはリーマンショックであり、その本質は景気刺激政策だった。旧車増税も似ている。最新環境車への買い替え促進を目的とする旧車増税も「CO2(と排ガス有毒物質)の排出削減」という表向きの環境政策以外に、日本を支える自動車産業に対する支援策の意味もある。なので、日本の旧車増税の主なターゲットはあくまで“古いクルマになんとなく乗り続けてしまっている人”である。そのせいでヒストリックカーを真面目に愛でるエンスージアストがわりを食ってしまうことにアンビバレントな思いも起こるが、そこの線引きは事実上不可能だろう。
また、その旧車増税にしても、古い(≒貴重)ほど負担が増えていく累進課税でもなく、その増税額も禁止税的なほどに莫大なものとはいえない。この点を見れば、そこに“ヒストリックカーいじめ”の意図がないことは明らかだ。筋金入りのエンスージアストであれば、この程度の負担増は社会的コストとして受け入れてもいいのでは……と個人的には思う。もっとも、その旧車増税もなぜかハイブリッド車が対象外だったり、重量税だけは新車登録から18年経過時にさらに引き上げられたりする点は議論の余地があろう。また「そもそも日本の自動車関連の税金は高すぎる」という点は同意する。
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現行の税制はいずれ立ちゆかなくなる
ただ、日本にかぎらず、自動車関連の税制を抜本的にあらためなければならなくなる日は近い。ハイブリッド車やダウンサイジングエンジンの普及で、現在の自動車税のような排気量に応じた課税制度そのものが、不合理になりつつあるのはいうまでもない。また、電気自動車が今後普及するかは分からないが、ガソリンや軽油の消費量が今後も減っていくのは確定的だ。かといって、家庭用と区別がつかない電気に、現在のガソリン税的なものを課すのは非現実的。さらにいうと、これからの日本はクルマそのものも減っていく。人口減少に加えて、シェアリングやサブスクリプションも基本的には拡大していくからだ。つまり、クルマ1台ごとの購入や所有に課税していく現行制度では、早かれ遅かれ立ちゆかなくなる。
2018年末に閣議決定された「平成31年度税制改正大綱」には、走行距離に対して課税する走行距離課税を視野に入れることが明記された。いわゆる走行税、もしくは通行税だ。ETCなどで道路使用料として徴収するのか、車検時などにメーターを読み取って課税するのか、具体的な姿や方法はまだ見えていない。だが、海外などの動向を見ても、現時点ではその方向性しかないことは確かだろう。
いずれにしても、クルマに乗っていると、なにかにつけて取られる税金だが、ガソリン税や自動車税は2009年に、道路特定財源から一般財源化されてしまった。それでも、せっかくクルマで取ったお金は、できるだけ道路や交通のために使ってほしい……というのがクルマ乗りの切なる願いだ。
(文=佐野弘宗/編集=堀田剛資)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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