カワサキKLX230シェルパS(6MT)
いつでも、どこへでも 2026.01.13 試乗記 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。“あの名車”の後継機種になり得る?
いきなり変な言い方になるけれど、カワサキKLX230シェルパSは、「いい意味でオフ車のカタチをしたネイキッドだなぁ」と思った。足つきはいいし、車体は軽いし、リラックスしたライディングフォームをとれる。ほどほどの動力性能が、かえって扱いやすさにつながっていて、そのうえ小回りがきいて取りまわしもしやすい。
私事で恐縮ですが、正直に告白しましょう。現在アシとしている「ヤマハ・セロー250」の次の愛車として、シェルパSは有力候補に躍り出た! ……と、大いに好感を抱いたのです。KLX230シェルパSのメーカー希望小売価格は、66万円。
2026年モデルとして今年2025年に発売されたKLX230シェルパSは、先行して販売されたKLX230シェルパの前後ホイールトラベルを縮め、シート高を845mmから825mmに下げたモデル。不整地の凹凸をものともせずに走るオフ車……というよりは、のんびり山道を行くマウンテントレイラー。最低地上高は240mmから215mmになり、前:21インチ、後ろ:18インチのタイヤサイズは同一ながら、リアタイヤはチューブレスタイプになっている。街乗りの比重をグンと増した気軽なトレッキングバイクというわけだ。
街なかでも楽しめる
かつての「KLX250」が、単気筒ながら水冷ツインカム4バルブを採用し、初期型では30PSに迫ろうという強心臓を誇る“闘う4スト”だったのと比較して、現行KLX230シリーズは、空冷シングルカムの2バルブエンジン(18PS)を搭載。「戦場で使うには、機構がシンプルでむしろ向いているのでは?」との素人考えはともかく(KLX250は自衛隊で使用されている)、新しいシェルパSは、水冷エンジンを空冷化した先代「スーパーシェルパ」の成り立ちを、忠実になぞっているといっていいのかもしれない。
そのKLX230シリーズのエンジンは、ボア×ストローク=67.0×66.0mmとスクエアに近いショートストロークタイプ。232ccのキャパシティーから、18PS/8000rpmの最高出力と、19N・m/6400rpmの最大トルクを発生し、6スピードのギアボックスとペアを組む。動力系は同社の「W230」や「メグロS1」と基本的に共通だが、KLXはリアスプロケットの歯数を増して、低速での使い勝手に配慮している。足場の悪い未舗装路でありがたいことに加え、ストップ・アンド・ゴーが多い都市部で、136kgのシェルパSを出足よく、活発に走らせるのに貢献している。
SOHC 2バルブのシングルからは驚くようなアウトプットは得られないけれど、回転に合わせて素直にパワーを紡ぐうえ実用域ではしごくスムーズなので、なかなかに使いでがあるエンジンだ。「フレンドリーなトレッキングモデル」という本来のコンセプトからは少々はずれるが、シェルパSには、街なかでエンジンをブン回して走る楽しさがある。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ちょっと気になるシートの硬さ
そんな単気筒を載せるフレームは、エンジンを左右から挟むツインチューブを備えたペリメータータイプ。クラッチをつないで走り始めたとたん、高い剛性感、そして重量物がギュッと中央付近に凝縮されているのが意識される。シェルパSが、実際のサイズ以上にコンパクトに感じられるゆえんだ。ソフトな足まわりで乗り心地よく、それでいてキビキビと走ることができる。短躯(たんく)短足ライダー(←ワタシです)最大の関心事のひとつである足つきは、全く問題ない。シートにまたがると車体がやんわりと沈み、身長165cmでも両足どちらも足裏3分の1が接地する。
次期愛車として(!?)気になった点は、シートがやたらと硬いこと。左右幅のないシートはオフ車系モデルの宿命とはいえ、のんびりツーリングも視野に入れたバイクとしてこのクッションは厳しすぎる。純正オプションでも社外品でも、ソフトなツーリングシート、出ないかしらん。
ボディーカラーは、渋い「ミディアムスモーキーグリーン」、ミリタリーテイストの「ミディアムクラウディグレー」、そして「ホワイティッシュベージュ」の3色が用意される。最後まで個人的な嗜好(しこう)を押し付けるようで心苦しいのだが、試乗車のホワイティッシュベージュがいかにも平和な感じで好ましい。そんな風に、機能とは関係ない部分で悩めるのも、KLX230シェルパSの特徴かもしれない。
(文=青木禎之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資/車両協力=カワサキモータースジャパン)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2060×920×1125mm
ホイールベース:1355mm
シート高:825mm
重量:136kg
エンジン:232cc 空冷4ストローク単気筒SOHC 2バルブ
最高出力:18PS(13kW)/8000rpm
最大トルク:19N・m(1.9kgf・m)/6400rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:34.7km/リッター(WLTCモード)
価格:66万円

青木 禎之
15年ほど勤めた出版社でリストラに遭い、2010年から強制的にフリーランスに。自ら企画し編集もこなすフォトグラファーとして、女性誌『GOLD』、モノ雑誌『Best Gear』、カメラ誌『デジキャパ!』などに寄稿していましたが、いずれも休刊。諸行無常の響きあり。主に「女性とクルマ」をテーマにした写真を手がけています。『webCG』ではライターとして、山野哲也さんの記事の取りまとめをさせていただいております。感謝。
-
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】 2026.8.24 スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD) 2026.8.22 DSオートモビルから登場した、新時代の旗艦モデル「N°8」。完全新設計のシャシーにアクティブサスペンションを組み合わせた電気自動車(BEV)は、往年の“ハイドロ”を思わせる乗り味と人車一体の走りを備えた、稀有(けう)なサルーンに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツCLA220(FF/8AT)【試乗記】 2026.8.21 メルセデス独自のオペレーティングシステムと、フル電動化を見据えた最新プラットフォームを組み合わせて開発された新型「CLA」。その先鋒として発売されたハイブリッドモデルの仕上がりを、セダンの上級グレードに試乗して確かめた。
-
マツダCX-5 L(4WD)【試乗記】 2026.8.19 マツダの販売の中軸を担うミドルクラスSUV「CX-5」が、3代目にフルモデルチェンジ。その完成度にはどうしても期待してしまうところだが、実車の仕上がりはどうだったのか? 絶対に失敗の許されない、マツダの基幹車種の実力に触れた。
-
トヨタbZ4XツーリングZ(FWD)【試乗記】 2026.8.18 クルマの進化か、充電インフラの進化か、それともCEV補助金拡充の効能かは定かではないが、ようやく日本の電気自動車(BEV)も普及期を迎えつつある。ことに「bZ4Xツーリング」は豊かな一充電走行距離と優れたドライバビリティーが自慢のトヨタの最新作だ。FWDモデルの仕上がりをリポートする。
-
NEW
OEM車で自社製品らしさを出すために、多田さんだったら何をする?
2026.8.25あの多田哲哉のクルマQ&A他メーカーが開発したクルマを、自社製品として別の名前でユーザーに供給するOEM車。エンジニアの工夫次第で、オリジナルとは異なる独自の個性を出すことはできるのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
BMW 120オリジナル(FF/7AT)【試乗記】
2026.8.25試乗記BMWの主要モデルに新グレードの「オリジナル」が設定された。位置づけとしては新たなエントリーグレードということになるが、BMWらしさを損なうことなく装備を厳選し、価格を抑えたのがポイントだという。「1シリーズ」の「120オリジナル」の仕上がりをリポートする。 -
NEW
トライアンフ・スラクストン400(6MT)【レビュー】
2026.8.25試乗記カフェレーサーの本場である、イギリスのトライアンフがリリースした「スラクストン400」。車名のとおり、カジュアルに楽しめる400ccクラスのマシンではあるのだが、その実物からは、エントリーモデルとは思えない本物の香りが漂っていた。 -
スズキeスカイ プロトタイプ(FWD)【試乗記】
2026.8.24試乗記スズキが満を持して世に問う、軽規格の新型電気自動車「eスカイ」。軽乗用車の本質である、生活の足としてのちょうどよい性能を追求したという一台は、どのようなクルマに仕上がっているのか? 2026年秋の正式発表を前に、プロトタイプモデルに試乗した。 -
デビュー4年でどう変わる? 最新型「トヨタ・クラウン クロスオーバー」の詳細を予測する
2026.8.24デイリーコラム2022年7月のデビューから4年がたち、仕様変更が予告された「トヨタ・クラウン クロスオーバー」。では、どこがどう変わるのか? 最新型の発売を前に、さまざまな角度からポイントを予測してみよう。 -
トヨタRAV4アドベンチャー(前編)
2026.8.23思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「トヨタRAV4」に試乗。ご存じのとおり今やトヨタの屋台骨を支えるSUVであり、先代モデルではグローバルでの年間販売台数が100万台に到達。世界で最も多く販売されるトヨタ車の6代目だ。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。











