新生ノートンがいよいよ始動! 名門の復活を担う次世代モーターサイクルの姿に迫る
2026.01.16 デイリーコラム「EICMA 2025」で上がった復活ののろし
イギリスを代表する歴史的なバイクブランド、ノートン・モーターサイクルズ(以下、ノートン)が、ふたたび歩み始めた。2025年11月に開催された「EICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)」で、新しい「Norton」のロゴとともに、実に4台ものニューモデルをお披露目したのだ。排気量1200cc 挟角72度のV型4気筒エンジンを搭載したスーパースポーツモデル「MANX(マンクス)R」に、それとプラットフォームを共有するネイキッドモデル「マンクス」、排気量は585ccで270°クランクの並列2気筒エンジンを搭載するアドベンチャーモデル「ATLAS(アトラス)」、それとプラットフォームを共有するツーリングモデル「アトラスGT」だ。欧州、北米、アジアの各地域にディーラーネットワークを確立し、2026年から車両販売やアフターサービスを展開するとも発表した。
ノートンは、2020年よりインドの巨大コングロマリットのひとつであるTVSグループの二輪部門、TVSモーターカンパニーの傘下となり、V型4気筒エンジンを搭載するスーパースポーツ「V4SV」、そのネイキッド版の「V4CR」、空冷並列2気筒エンジンを搭載したネオクラシックモデル「コマンド961」を展開していた。ブランド買収の直後、TVSモーターカンパニーは英国中部、バーミンガム近くの都市ソリフルに工場を新設。新生ノートンのハブ工場として稼働させていた。しかし、2025年9月に上述の3モデルの製造中止を発表。かねてブランドの再構築と、新しいプラットフォームを用いた新型車の計画が報じられており、EICMA 2025がその船出の場となったのである。
EICMA 2025のノートンブースは、厳かさを感じるほどに空気がピンと張りつめていた。お祭り騒ぎな会場の雰囲気からすれば、異質と表してもいいくらいだ。その空気感をつくり上げていたのは、新しいブランドロゴとともに発表された4つの新型車がまとうデザインだ。スタイルや搭載エンジンが統一されているわけではないが、これらの機種では同じデザイン言語が貫かれ、それが車体の隅々まで徹底されていた。
一挙に発表された次世代マシンの概要
車両の詳細を見ていくと、マンクスシリーズが採用する1200cc V4エンジンは、1万1500rpmで206PSの最高出力を、9000rpmで130N・mの最大トルクを発生する。インジェクションシステムは前バンクの2気筒、後ろバンクの2気筒で、個別に燃料供給をコントロールし、さらにそれを電子制御スロットルによって管理することで、扱いやすさも追求している。
そのエンジンが搭載されるアルミフレームは、外装によってほとんどが覆い隠されているため、具体的なレイアウトは定かではない。ただ発表によると、サーキットでのパフォーマンスのみに特化するのではなく、スポーツ性能を追求しつつも、扱いやすさや快適性にも配慮したものとなっているという。
またマンクスシリーズには、複数のトラクションコントロールやライディングモード、ローンチコントロール、傾斜を検知して車体を制御するスロープ・ディペンダントコントロールなど、さまざまな電子制御システムも搭載されているという。
いっぽうアトラスシリーズについては、エンジンや車体の詳細は公表されていない。ただ排気量は585ccながら、650~700ccクラスの並列2気筒モデルと同等のパフォーマンスを発揮。各種電子制御システムとあわせ、扱いやすさも追求しているという。このうち、アドベンチャーモデルのアトラスはフロント19インチ、リア17インチのチューブレススポークホイールを装着。オフロード走行を考慮したABSシステムも搭載している。いっぽうツアラータイプのアトラスGTは、前後17インチのキャストホイールを装着。サスペンションセッティングを変更して大型のフロントスクリーンを採用するなど、オンロード走行に軸足を置いた車体構成となっている。
過去にはロータリーのバイクも開発・市販化
ノートンは、歴史に翻弄(ほんろう)されてきたブランドだ。創業は1898年。自転車につづき原動機付き二輪車が産業として興った直後に、二輪車メーカーに部品や付属品を納入するサプライヤーとして設立された。1902年には初のオリジナルとなる原動機付き二輪車を開発し、二輪車メーカーとしてもスタートを切る。その後はマン島TTレースでも活躍し、英国の二輪車産業をけん引する存在となっていった。第2次世界大戦に突入すると、彼らは軍に二輪車を提供することで、さらに規模を拡大。それが戦後のグローバル市場における英国車の躍進を後押しすることとなった。ノートンもその勢いに乗り、存在感を高めていく。
しかし1970年代になると、日本車の台頭により英国のモーターサイクルは衰退。ノートンも他ブランドとの協業や英国政府の援助などで存続を試みるも、いずれも失敗に終わり、一度は市場から姿を消すことになった。
しかし英国の名門を惜しむ声は大きく、ノートンは1980年代後半に復活を果たす。彼らはロータリーエンジンを搭載したロードモデルを発売し、またロータリーのレースマシンで英国スーパーバイク選手権やマン島TTレースに参戦。数々の勝利を獲得し、そのレプリカモデルも販売された。2000年代には英国の実業家によってふたたび復活。新しい空冷並列2気筒エンジンを搭載したモデル「コマンド961」シリーズを発表し、事業を継続していたが、2020年にその事業は頓挫した。
現オーナーであるTVSモーターカンパニーがノートンの再建に乗り出したのは、その直後だ。前オーナーの手になるモデルを継続して販売しながら、新しい本社屋や工場を建て、メーカーとしての土台を組み直しつつ、その時を見極めていたのだ。
そして2025年のEICMAを迎えた。新しいロゴと新型車に対する来場者の反応は良好で、少なくともミラノの会場では、新生ノートンの再出発は確かな手応えをもって受け止められていた。
現状、日本での展開について詳しいニュースは入っていないが、後日、日系メディアに送られた日本語のレターには、「今後数年内に日本市場へ参入する」と明記されていた。EICMAの会場で新世代のラインナップを目にし、新生ノートンの誕生を肌で感じた筆者としては、これらのモデルが日本の公道を走る日が楽しみでならない。
(文=河野正士/写真=TVSモーターカンパニー、EICMA、newspress/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
-
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く 2026.10.12 アルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは?
-
パナソニックが市販カーナビを終売! 巨人の撤退からカーエレクトロニクスの変化を読み解く 2026.10.9 パナソニックが、市販市場向けカーナビゲーション、ドライブレコーダー、リアビューカメラの終売を発表! カーエレクトロニクス界の巨人は、なぜ市場からの撤退を選んだのか? 変化し続けるマーケットの在りようを振り返り、車載機器の未来を考察した。
-
「アプライドD」で何が変わった? スバルの「インプレッサ」と「クロストレック」の進化を探る 2026.10.8 スバルが「インプレッサ」と「クロストレック」の改良モデル「アプライドD」を発表した。モデルライフの折り返し地点となる今回の改良では、ラインナップの刷新がトピック。その内容とスバルの狙いを、スバリスト玉川ニコ氏が解説する。
-
咆哮なき電気自動車「ジャガーTYPE 01(タイプ01)」に“ジャガーの魂”は宿るのか? 2026.10.7 いよいよ正式デビューを飾った、新生ジャガーのラグジュアリー4ドアGT「TYPE 01(タイプ01)」。いったいどんなクルマなのか、従来のファンも納得できる“ジャガーらしさ”はあるのか? 先行チェックした西川 淳がリポートする。
-
人件費不要の自動運転タクシー導入! で、料金はどうなる? 2026.10.5 運転手がいない完全無人の自動運転タクシーが、2027年中に国内で運用される見通しとなった。では、われわれユーザーが享受できる具体的な恩恵は? 望ましい料金とは? 清水草一はこう考える。
-
NEW
自動運転はこの先10年でどこまで進化できる?
2026.10.13あの多田哲哉のクルマQ&A自動車業界において、再び話題になる機会が増えてきた「自動運転」。この先はどのように進化・普及するのか。既存の先進運転支援システムで十分ではないのか? 元トヨタの車両開発者、多田哲哉さんの見解を聞いた。 -
NEW
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】
2026.10.13試乗記電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。 -
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2026.10.12試乗記ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。 -
電動化された新型「A110」の登場はいつ? 来日したアルピーヌのクリエフCEOに未来戦略を聞く
2026.10.12デイリーコラムアルピーヌのフィリップ・クリエフCEOが来日し、現在推進している戦略を報道関係者に説明した。なかでも気になったのは電動化された新型「A110」と、「A110Rウルティム」に相当する特別な超高性能モデルの存在だ。その内容とは? -
第346回:EVかいわいで辰巳かいわいへ
2026.10.12カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の「サクラ」と「アリア」、そしてホンダの「スーパーONE」と、国内メーカーがリリースする3台のEVに立て続けに試乗した。三者三様の走りを味わい、リアルに感じたことをカーマニア目線で報告する。 -
スズキ・ジムニー ノマドFC(後編)
2026.10.11ミスター・スバル 辰己英治の目利きスズキが誇る本格オフローダー「ジムニー ノマド」に、“ミスター・スバル”こと辰己英治さんが試乗。クラシックなクロスカントリーモデルの舗装路での振る舞いは、かつてスバルでクルマの走りを鍛えてきた彼の目にどう映るのだろうか?














