【F1 2023】第4戦アゼルバイジャンGP続報:ペレス対フェルスタッペン、レッドブルのレースとシーズン
2023.05.01 自動車ニュース![]() |
2023年4月30日、アゼルバイジャンのバクー・シティ・サーキットで行われたF1世界選手権第4戦アゼルバイジャンGP。今季初のスプリントウイークで、フェラーリのシャルル・ルクレールが一発の速さを取り戻すも、ロングランとなればレッドブルの独擅(どくせん)場だった。
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新設された「スプリント・シュートアウト」
GPウイークをよりエキサイティングにすることを目的に、2021年シーズンから導入された100kmで争う短期決戦「スプリント」は、3年目の今季になって開催数が6レースに倍増。さらにエンターテインメント性を向上すべく、週末のスケジュールに手が加えられた。
<2022年まで>
- 金曜日:プラクティス/スプリントのグリッドを決める予選
- 土曜日:プラクティス/スプリント
- 日曜日:レース
<2023年>
- 金曜日:プラクティス/レースのグリッドを決める予選
- 土曜日:スプリントのグリッドを決める「スプリント・シュートアウト」/スプリント
- 日曜日:レース
土曜日に新設された「スプリント・シュートアウト」は、いわばスプリントに向けた“ミニ予選”で、時間は短いが予選同様に全車出走の「SQ1」、15台に絞られた「SQ2」、そしてトップ10グリッドを決する「SQ3」の3セッションで争われる。SQ1とSQ2ではミディアム、SQ3ではソフトとタイヤの指定があるのも特徴だ。スプリント自体に大きな変更はなく、ポイントもウィナーに8点、以下8位までに与えられる。
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金曜予選でフェラーリ&ルクレールが3年連続ポール
スプリントウイークは慌ただしく、新フォーマットの初戦アゼルバイジャンGPでは、この週末たった1時間しかないプラクティスの後にすぐさま予選を迎えた。
開幕から精彩を欠いていたフェラーリ&シャルル・ルクレールが、特に低速コーナーで抜群の速さを発揮し、今季初の予選P1を獲得。彼にとってバクーの市街地コースで3年連続、また自身通算19回目のポールポジションを獲得したことになる。
ルクレールの後ろには3連勝中のレッドブル勢が続き、ポイントリーダーのマックス・フェルスタッペンが0.188秒遅れの2位、セルジオ・ペレスは3位。カルロス・サインツJr.がもう1台のフェラーリを駆り4位につけた。
メルセデスのルイス・ハミルトンが5位、アストンマーティンのフェルナンド・アロンソが6位、マシンアップデートに好感触を得たマクラーレンのランド・ノリスは7位。アルファタウリの角田裕毅は大健闘の末8位と躍進した。アストンマーティンのランス・ストロールは9位、マクラーレンのオスカー・ピアストリは10位から日曜日のレースに臨むこととなった。
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“市街地コースのマスター” ペレスがスプリントで優勝
初開催のスプリント・シュートアウトは、予選同様にポールがルクレール、2位ペレス、3位フェルスタッペン、4位ラッセル、5位サインツJr.、6位ハミルトン、そして7位に直線で速いウィリアムズのアレクサンダー・アルボン、8位アロンソ、9位ストロール、10位ノリスといったグリッドとなった。
6kmのコースを17周するスプリントでは、フェルスタッペンとラッセルがマシンをヒットさせながら丁々発止とやりあい、メルセデスが前へ。その後方では、16番手スタートだった角田とチームメイトのニック・デ・ブリースが接触、フロントウイングを壊しコントロールを失った角田のアルファタウリがウォールにヒットし、バーチャルセーフティーカー&セーフティーカーが出た。
6周目の再スタート直後、さっきの仕返しとばかりにフェルスタッペンが3位を奪還すると、8周目にはペレスがトップに立ち、レッドブルが1-3。2位に落ちたルクレールは終盤にかけてペースが伸び悩み、また追うフェルスタッペンも1周目の接触でマシンにダメージを負ったこともあり、そのままの順位でチェッカードフラッグが振られることとなった。
結果、ペレスがスプリントで優勝し、ルクレールが2位、フェルスタッペンは3位でフィニッシュ。さらに4位ラッセル、5位サインツJr.、6位アロンソ、7位ハミルトン、8位ストロールまでがポイントを獲得した。
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ルクレールがトップを守るも、早々にレッドブルに先を越される
フェラーリには一発の速さがあるが、レースペースはよくないということが、スプリントで明らかになった。果たして51周のレースもそのとおりの展開となり、早々にレッドブルが前を取ってしまう。
20台中の上位17台がミディアムタイヤを履いて迎えたスタートでは、ルクレールが首位をキープし、2位フェルスタッペン、3位ペレス、4位サインツJr.、5位ハミルトン、6位アロンソらが順当にオープニングラップを終了。8番手スタートの角田は出だしで2台に抜かれるも、なんとか入賞圏の10位には踏みとどまった。
DRSが使える3周目に入ると、フェルスタッペンが瞬く間に差を詰め、4周目のメインストレートでルクレールをぶち抜きトップに浮上。6周目にはペレスもルクレールをかわし、早くもレッドブルが1-2、フェラーリが3-4という2強のフォーメーションとなった。フェラーリは無駄な抵抗はみせず、タイヤの温存に集中したため、先頭2台と後続の差は広がるばかりだった。
レッドブルの敵はレッドブル。1位フェルスタッペンと2位ペレスは、互いにファステストラップを更新しながら1秒以内で周回を重ねていたが、フェルスタッペンのタイヤがスライドし始めたことで、レースリーダーが11周目にピットに駆け込んだ。
その直後、アルファタウリのニック・デ・ブリースがコース脇にストップしたことによるセーフティーカーが出て、トップを走っていたペレスらが続々とタイヤ交換に踏み切る。これで順位は、1位ペレス、2位ルクレール、3位フェルスタッペン、4位サインツJr.、5位アロンソ、6位ラッセルとなり、フェルスタッペンは3位に転落してしまうのだった。
しかし、極めて完成度の高い今年のレッドブルにしてみたら、1-2奪還は時間の問題と言ってよかった。いや、14周目にレースが再開した途端にフェルスタッペンは2位の座をやすやすと手に入れてしまったのだから、もはや時間の問題ですらなかった。
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レッドブル、通算25回目の1-2フィニッシュ
1位ペレスと2位フェルスタッペン、序盤から順位を違えてのレッドブル同士の優勝争いは、しばし1.4秒という間隔がなかなか詰まらないでいたものの、やがてフェルスタッペンがデフとエンジンブレーキのバランスの悪さを訴えるようになると2.5秒にまで広がることになる。
レース終盤、調子を取り戻したフェルスタッペンがファステストラップを記録すれば、ペレスも最速タイムを奪い返すといった展開に。異次元の速さでライバルを突き放すレッドブルにあって、主導権は常にペレスが握り続けた。
通算6勝のうち5勝を市街地コースで記録しているペレスが、得意のバクーでスプリントに次いでレースも勝利。「セーフティーカーのタイミングはよかったね」とレース後に勝因を語るも、「フェルスタッペンとは接戦で、お互い壁にマシンをヒットさせることが度々あったぐらいだ」とチームメイトとの目に見えない戦いを振り返っていた。これでポイントリーダーのフェルスタッペンとの差は6点に縮まり、レースのみならずチャンピオンシップでもレッドブル同士の僅差の戦いが繰り広げられている。
序盤のトップから2位に甘んじてチェッカードフラッグを受けたフェルスタッペンだったが、「もちろんセーフティーカーはアンラッキーだったし、もう一度プッシュしてペレスになるべく近づくようにしていたけれど、そうしたことでタイヤのオーバーヒートが起きてしまった」と落ち着いた様子だった。
レッドブルの通算25回目の1-2フィニッシュから遠く21秒も離されたルクレールだったが、過去3戦で7位入賞が1回だけだっただけに、今季初表彰台には安堵(あんど)の息をついた、といったところかもしれない。
今季最初のスプリントウイークの次は、遠くアメリカ大陸に舞台を移してのマイアミGP。たった1週間の後、5月7日に決勝が行われる。
(文=bg)