【F1 2023】第12戦ハンガリーGP:フェルスタッペンが5月から負けなしの7連勝、レッドブル12連勝で新記録樹立
2023.07.24 自動車ニュース![]() |
2023年7月23日、ハンガリーのハンガロリンク・サーキットで行われたF1世界選手権第12戦ハンガリーGP。連続ポールこそ逃したマックス・フェルスタッペンだったが、レースでは完膚なきまでにライバルを打ちのめし、レッドブルは新たな記録を打ち立てた。
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デ・ブリースの更迭、リカルドの復帰、角田の今後
あまりに非情だったが、それなりの事情もあった──前戦イギリスGPから間もない7月11日、アルファタウリはニック・デ・ブリースの更迭を発表。空いたシートにレッドブルのリザーブドライバーだったダニエル・リカルドを据えることを決めた。
たしかにF1キャリア3年目の角田裕毅と比べてみても、デ・ブリースのパフォーマンスは見劣りしていた。今季10戦で角田に対する勝率はレース・予選とも2割。ポイントも角田が2点なのに対しデ・ブリースは0点のままだった。過去7年間にシーズン途中のドライバー変更が4回もあったレッドブル系2チームなのだから、こういう事態もめずらしくはないともいえたのだが、しかし、デビューからたった10戦でクビを言い渡されるというのは前例がない厳しいものだった。
ただ、レッドブルを取り巻く状況からしたら致し方なかったともいえる。2021年からマクラーレンで散々な2シーズンを送ってきたリカルドは、今季になって古巣レッドブルに戻り、リザーブドライバーとしてシミュレーションやPRなど裏方業務をこなしてきた。レッドブル首脳がデ・ブリースの真の実力を測りかねていたことと同じように、これまで8勝を記録してきたリカルドの現在のコンディションについても疑問が残っていた。
またレッドブルには、セルジオ・ペレスの不振という懸念材料もあった。過去5戦を振り返れば、予選ではことごとくQ3に進出できず、表彰台も1回にとどまっていたペレスは、2024年もレッドブルとの契約を残している。今シーズンはマックス・フェルスタッペンの連勝に助けられ、チームはコンストラクターズチャンピオンシップで208点もの大量リードを築けていたものの、今後を視野に入れると別のオプションも探っておきたかったのかもしれない。
日本のスーパーフォーミュラで戦うリアム・ローソンら、レッドブル育成ドライバーもいるが、F1でどこまで通用するかは未知数。つまり、10チーム中唯一の2チーム体制を組むレッドブルのF1活動にはいくつかの選択肢があり、この先のベストな体制構築のためには、なるべく早めに各オプションのエビデンスを手にしたかったのだろう。
リカルドにとってはF1への本格復帰を賭けた大きな挑戦であり、またタッグを組む角田としても、ベテランの優勝経験者を打ち負かせば名を上げるチャンスとなる。チャンピオンシップ最上位に君臨するレッドブルを巻き込んだ、最下位アルファタウリの再出発は、夏のハンガリーから始まった。
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ハミルトンが通算104回目のポール、同一サーキット最多記録更新
ハンガリーGPの予選では、F1におけるサステイナビリティー(持続可能性)向上の一環として、使用するタイヤの削減を狙った試験的なタイヤ割り当て方式「ATA=Alternative Tyre Allocation」が実施された。ドライで行われる場合、通常は13セットの割り当てのところ11セットに本数を制限。さらに全20台出走のQ1ではハードタイヤ、15台に絞られたQ2ではミディアム、トップ10グリッド決めるQ3ではソフトとコンパウンドが指定される。
次のトライアルは第15戦イタリアGPで予定され、有効性が確認されれば2024年にも導入される見込みというが、当然ながら十分に走り込めなくなる状況に、ドライバーからは不満の声も聞かれた。
そのATAの影響もあってか、予選ではトップ10台が0.577秒内にひしめく大接戦に。白熱のポールポジション争いは、メルセデスのルイス・ハミルトンが0.003秒と僅差で最速タイムをマークし、2021年サウジアラビアGP以来となる通算104回目のポールポジションを獲得した。ハミルトンにとってはハンガリーで9回目のポールとなり、同一サーキットでの最多ポール記録を更新した。
2番手に続いたのはレッドブルのフェルスタッペン。アップデートしたマシンのバランスに苦慮したことで、連続ポールは「5」で途絶えた。予選3位は好調マクラーレンをドライブするランド・ノリスでポールから0.085秒遅れ、ノリスの僚友オスカー・ピアストリも4位に続いた。
アルファ・ロメオは、ジョウ・グアンユーが自身最高の5位、バルテリ・ボッタスは7位と善戦。フェラーリは1台のみがQ3に進み、シャルル・ルクレール6位。アストンマーティンのフェルナンド・アロンソ8位、レッドブルのペレスは久々のトップ10入りを果たし9位、そしてハースのニコ・ヒュルケンベルグが今季6度目のQ3進出で10位につけた。
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フェルスタッペンがトップ、ハミルトンは4位にドロップ
今季10戦で負けなし、昨年の最終戦から11連勝中のレッドブルがハンガリーGPでも勝てば、1988年のマクラーレン・ホンダの記録を抜き、12連勝というレコード樹立となる。久々のポールに士気高まる7冠王者ハミルトンが、大記録の更新を阻止するのか──しかし、フェルスタッペン&レッドブル一強に風穴を開けるような力と速さは、他の誰も持ち合わせていなかった。
70周レースのスタートでトップに立ったのはフェルスタッペン。2位ピアストリ、3位ノリスと続き、ホイールスピンにより出遅れたハミルトンは4位に順位を落とした。ハミルトンは無線でチームに謝るも、どのみちこの日のメルセデスには、トップ争いができるほどのペースはなかった。
首位フェルスタッペンは、早々にDRS圏外の1秒以上のリードを築き、タイヤをいたわりつつ快調に飛ばした。2位ピアストリはルーキーであり、百戦錬磨のハミルトンに比べれば脅威ではなかった。
17周目に4位を走っていたハミルトンがピットに入り、ミディアムタイヤからハードに換装。これに反応し、翌周には3位ノリス、19周目には2位ピアストリもハードに履き替えた。スタートでチームメイトに出し抜かれたノリスは、タイヤ交換直後のラップを瞬足で走り抜け、ピアストリの前に出ることに成功した。
24周目、フェルスタッペンがミディアムからハードに変更すると、順位は1位フェルスタッペン、2位ノリス、3位ピアストリとなり、4位ハミルトンはフェルスタッペンからすでに20秒近くも離され、後ろから追い上げてきた5位ペレスに注意を傾けなければならなかった。
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フェルスタッペン7連勝、レッドブル12連勝で新記録樹立
43周目、ハミルトンを抜きあぐねいていた5位ペレスがピットに飛び込み、同時に3位ピアストリもタイヤ交換を実施。45周目には2位ノリスもピット作業を済ませた。
その後、ピアストリの真後ろにつけたペレスは、47周目にマクラーレンをオーバーテイクすることに成功。50周目にハミルトン、52周目にフェルスタッペンがそれぞれ2度目のタイヤ交換を済ませると、1位フェルスタッペン、2位ノリス、3位ペレス、4位ピアストリ、5位ハミルトンというオーダーとなった。
歓喜のポールからポディウム圏外に脱落したハミルトン。それでも57周目にピアストリから4位の座を奪い、ルーキーに敗北するという屈辱を味わうことはなかった。2位ノリスには3位ペレスが迫り、残り10周でギャップは3.2秒となったものの、最後の最後にノリスが踏ん張りポジションを守り切った。
フェルスタッペンはノリスに33秒ものリードを築き、ファステストラップも奪って完勝。これで5月のマイアミGPから7連勝、チャンピオンシップのリードは110点にまで拡大し、もはや誰も届かないであろう孤高のポジションに到達してしまった。
そしてレッドブルは、前人未到の12連勝を記録。35年間破られることのなかったレコードの更新に、スランプに陥っていたペレスの3位表彰台といううれしい結果もついてきた。またチームとしては、250回目のポディウムフィニッシュを記録したことになった。
そして、いっそう高らかな歓喜の声があがったのがマクラーレンだ。ノリスは2戦連続で2位と健闘。ピアストリもルーキーながら大きなミスをすることもなく5位でゴールし、コンストラクターズランキング5位のチームは、6位アルピーヌに40点もの大差をつけることができた。レッドブルがシーズンを席巻している2023年シーズン前半戦だが、その後方では群雄割拠の様相を呈している。
次の第13戦ベルギーGP決勝は、7月30日に行われる。
(文=bg)