目玉のプログラム「トーキョーフューチャーツアー」は多様な未来をフィーチャー【ジャパンモビリティショー2023】

2023.10.26 自動車ニュース 鈴木 真人
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ジャパンモビリティショー2023の目玉とされる催し、「トーキョーフューチャーツアー」のオープニングシーン。
ジャパンモビリティショー2023の目玉とされる催し、「トーキョーフューチャーツアー」のオープニングシーン。拡大

ジャパンモビリティショー2023(一般公開:10月28日~11月5日)では、「モビリティーが変える未来の東京」を紹介する特別プログラムも用意されている。一体どんな体験ができるのか、その内容をリポートする。

まずは広々とした空間で、巨大スクリーンを通して「未来の東京」をイメージ。
まずは広々とした空間で、巨大スクリーンを通して「未来の東京」をイメージ。拡大
「Immersive Theater」に続いては、演者によるパフォーマンスで未来のモビリティーライフが示される。“動くベンチ”や“自走する車いす”など、「人が乗っているだけで運んでくれるモビリティー」が多数登場する。
「Immersive Theater」に続いては、演者によるパフォーマンスで未来のモビリティーライフが示される。“動くベンチ”や“自走する車いす”など、「人が乗っているだけで運んでくれるモビリティー」が多数登場する。拡大
場内では、写真のような空飛ぶモビリティーも多数見受けられた。
場内では、写真のような空飛ぶモビリティーも多数見受けられた。拡大
こちらは自動パーキングのシミュレーション。実用化がリアルに期待できるシステムである。
こちらは自動パーキングのシミュレーション。実用化がリアルに期待できるシステムである。拡大
「トーキョーフューチャーツアー」では、映画『ゴジラ-1.0』とのコラボレーションにより、「ゴジラに壊された街の復興シーン」を表現。有事のときでもモビリティーが活躍する様子が紹介される。
「トーキョーフューチャーツアー」では、映画『ゴジラ-1.0』とのコラボレーションにより、「ゴジラに壊された街の復興シーン」を表現。有事のときでもモビリティーが活躍する様子が紹介される。拡大
来場者はつい見落としがちだが、フロアには大きな”ゴジラの足あと”も……。
来場者はつい見落としがちだが、フロアには大きな”ゴジラの足あと”も……。拡大
Play & Mobilityゾーンでのひとこま。ロボットが実現する楽しい未来はイメージできるものの、モビリティーとの関係性はやや希薄に感じられる。
Play & Mobilityゾーンでのひとこま。ロボットが実現する楽しい未来はイメージできるものの、モビリティーとの関係性はやや希薄に感じられる。拡大
場内では、移動キッチンタイプのモビリティーも登場する。3Dプリンターで寿司を握る「未来寿司」や、ケーキが回転寿司のように場内をぐるぐる回るものなど、展示内容はさまざまだ。
場内では、移動キッチンタイプのモビリティーも登場する。3Dプリンターで寿司を握る「未来寿司」や、ケーキが回転寿司のように場内をぐるぐる回るものなど、展示内容はさまざまだ。拡大

「東京モーターショー」から「ジャパンモビリティショー」に名称変更されたことで、このイベントのテーマはクルマだけでなくモビリティー全体に広がったことになる。でも、一般にこのコンセプトが理解されているかというといささか心もとない。「トーキョーフューチャー ツアー」は、イベントの趣旨をわかりやすく表現するための企画のようで、東京国際展示場(東京ビッグサイト)の西展示棟1Fという“一等地”で開催されている。

入場すると「Immersive Theater」という大きな空間があり、スクリーンに映像が映し出される。未来の東京をモビリティーに乗って案内する趣向だ。スモークが立ち込めるなかで派手な照明とサラウンドスピーカーでフューチャー感を演出する。描き出されるのは、絵に描いたようなハッピーな未来図だ。見せ方は新しくても、2023年の人間でも1970年ごろに真鍋 博が示した楽観的な想像力と変わらないのが面白い。

終盤にかかるとアラートが鳴り響いて東京が大混乱に陥る。ゴジラが現れて、街を破壊するのだ。映画『ゴジラ-1.0(ゴジラ マイナスワン)』とのコラボである。この作品は1945年の東京を舞台にしているので時代的には食い合わせが悪いのだが、細かいことを気にしてはいけない。これは伏線で、会場内にはゴジラに破壊されたゾーンがある。うっかりすると気がつかずに通り過ぎてしまうので、注意深く地面を見ながら歩いたほうがいい。

映像が終わると、壁の向こうから不穏な重低音が響いてきた。なんだかヤバそうな人がいる危険な場所のようである。恐る恐るのぞくと、音を発していたのは白装束のヒューマンビートボクサーたちだった。彼らのパフォーマンスに合わせ、さまざまなマイクロモビリティーが後ろについて動いていく。ソファに寝転がったまま、あるいはベンチに並んで移動する。新奇であることは確かだが、実現性があるのかどうかはよくわからない。

荷物を載せた台車が歩く人の後からカルガモのようについていく搬送ロボットは使えそうだと思った。駐車場のマップを記憶して自動パーキングを行うソニーのシステムや、「モトコンポ」のような電動バイクなど、有用と思われる展示も発見。ここはLife & Mobilityゾーンで、意図がわかりやすい。確かに未来のテクノロジーを示しているようではある。次のEmergency & Mobilityゾーンもまあ理解できた。災害復興に使われる働くモビリティーの未来を提案している。

Eat & Mobilityゾーンに入ると、頭が追いつかなくなってきた。移動キッチン的なものがあるのは当然なのだが、3Dプリンターで寿司を握る「未来寿司」とか回転寿司の手法でケーキをぐるぐる回す展示、ロボット調理機でつくるチャーハンといった珍品まであって、カオスである。Play & Mobilityゾーンにはサウナが出展されていて、困惑してしまった。

会場全体を回って、散漫な印象が残った。モビリティーという概念を浸透させようとして、手を広げすぎた感がある。ユートピアとディストピアが混在しているようで、明確なビジョンが見えない。もしかすると、未来はわれわれの意思と行動でいかようにも変えられるということを示すために、わざと無秩序を演出したのだろうか。そんな深い狙いが隠されていたとしたら、脱帽するしかない。

(文=鈴木真人/写真=峰 昌宏/編集=関 顕也)

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