都市型イベント「DEFENDER EXPERIENCE TOKYO 2023」でホンモノの魅力を体感
2023.11.02 デイリーコラムディフェンダーの世界観を体感できるイベント
「1947年のこと。 ウェールズの砂浜で、一人の男が、あるクルマの形をスケッチしました。 そのクルマがランドローバーです。 タフで勇敢、どんな地形でも乗り越え、世界中の人々の心を捉えながら、歴史を変え続けるクルマです」
これは、ランドローバーのオフィシャルサイトにあるコメントである。その翌年の1948年、「ランドローバー・シリーズ1」がアムステルダムモーターショーで発表される。そこから3四半世紀。2023年は75周年を迎える記念イヤーとなる。
道なき道を行き、未開の地を切り開いてきたランドローバーは、ここであえて説明するまでもなく、タフなクロスカントリーモデルを擁する英国の多目的車ブランドとして名をはせている。現在はジャガー・ランドローバーの一部門として、同社が掲げる「REIMAGINE(リイマジン)」計画により「ディフェンダー」がブランド化された。JLRというコーポレートアイデンティティーを掲げ、JLRの下にレンジローバー、ディフェンダー、ディスカバリーそしてジャガーという4つのハウス・オブ・ブランドを置くという。
もっとも、ランドローバーという伝統の名称がなくなるわけではない。「LAND ROVER」のエンブレムは重要なヘリテージマークとして、今後もレンジローバーとディフェンダー、ディスカバリーの各モデルに用いられる。
今回リポートする東京・豊洲で開催された「DEFENDER EXPERIENCE TOKYO 2023」は、JLRの4つのブランドのうち、ディフェンダーにフォーカスしたオーナーとファン向けのアウトドアイベントである。例年、長野・白馬を舞台に行われていたイベントの舞台を変更。都市型イベントにチューニングしたものだ。
DEFENDER EXPERIENCE TOKYO 2023は「卓越した走破性と世界観を体感できるオーナー、ファン向けのアウトドア、ライフスタイル体験イベント」とうたわれており、ディフェンダーオーナー以外もエントリーできる。イベント開催日となった2023年10月28日と29日の両日は多くの参加者が会場に詰め掛け、参加者用の駐車エリアをのぞくと、ディフェンダーを筆頭にレンジローバーやジャガーといったJLRブランドの車両以外に、他ブランドのSUVが(それも少なくない数を)確認できた。
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実体験に勝るものなし
DEFENDER EXPERIENCE TOKYO 2023の会場に入ると、まずは3台のヒストリックモデルが出迎えてくれた。1996年の「ディフェンダー90」と1948年の「ランドローバー・シリーズ1」、そして1964年の「ランドローバー・シリーズ2A」である。シリーズ1を見てタミヤのプラモデル、ミリタリーミニチュアシリーズの「英国陸軍SASランドローバー・ピンクパンサー」を思い出した方は、かなりのマニアといっていいはずだ。私の場合は1976年に発売されたこのキットとの出会いが、ランドローバーを知るきっかけだった。
その奥にはアーティストのボブファウンデーションの手になるアートカーと、「ディフェンダー110」のV8モデルをベースとした特別仕様車「CARPATHIAN EDITION CURATED FOR JAPAN(カルパチアンエディション キュレーテッドフォージャパン)」や「ディフェンダー110 75thリミテッドエディション」などの最新ラインナップが並ぶ。
初日の午前中に行われた「DEFENDER & BREAKFAST」はディフェンダーオーナー限定のミーティングだが、同会場にはオーナー以外の人でも楽しめるアクティビティーがいくつも用意されていた。なかでも順番待ちの列が途切れることなく終日にぎわっていたのが、高さ5m、最大傾斜43度の専用スロープをインストラクターの運転で体験する「ツインテラポッド」と、「ミニテラポッド・バンク・トレイントラックス」の試乗体験プログラムである。
最大傾斜43度といっても、コックピットから見るツインテラポッドを下るその風景は、真っ逆さまという表現が決して大げさではない。ディフェンダーのヒルディセント機能によって低速で確実なグリップのもとで安全に傾斜を下るが、初めて体験した参加者は「遊園地のジェットコースターよりスリリング」「すごい!」「あんな急坂を下りられるなんてびっくり」と、興奮を隠せない様子だった。
ミニテラポッドやバンク、走行中のボンネット下が透けて見える「クリアサイトグラウンドビュー」機能が確かめられるトレイントラックスなど、悪路運転を疑似体験できるプログラムはディフェンダーの購入検討者だけでなくオーナーにも人気で、「やっぱり(うちのクルマは)すごいね」という声が聞かれた。
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盛りだくさんのプログラム
フラワーアレンジメントやヨガのワークショップ、シルクスクリーンやカッティングボード、ウオーターボトルの製作体験教室など、参加型のプログラムが充実しているのもこのイベントの特徴だ。ディフェンダーの個性を彩るアクセサリーパーツの販売と購入後の無償取り付けも会場で行われていた。
そのほかファッションやカルチャー、アウトドアをテーマにしたスペシャルトークショーなども実施。初日にはプロボクサーの那須川天心さんによるトークショーや、関口シンゴさんがゲストボーカルにHiro-a-keyさんと藤原さくらさんを迎えてのアコースティックライブパフォーマンスが行われるなど、多彩なゲストがステージに登場した。夜にはアウトドアシネマと題し、映画『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』がステージエリアで上映された。
2日目はDJ Cellyさんのパフォーマンス「CHILL MUSIC」でステージプログラムがスタート。午後には日本で唯一と紹介されるBBQ芸人、たけだバーベキューさんのトーク&クッキングライブや、ディフェンダーのブランドアンバサダーを務めるラグビーワールドカップ2023フランス大会日本代表の稲垣啓太選手、松島幸太朗選手、元ラグビー日本代表の福岡堅樹さんらによるラグビートークショーが、夕方にはヒューマンビートボックスの世界大会「Grand Beatbox Battle 2023 TOKYO(GBB2023)」のクルー部門で優勝したビートボックスクルー兼音楽プロデューサー集団 「SARUKANI」のメンバーであるSO-SOさんによるスペシャルライブパフォーマンスが行われた。
プレミアムブランドと呼ばれる国内外の自動車ブランドは、製品に磨きをかけるいっぽうで、最近ではUXと略されるユーザーエクスペリエンスに力を入れていると聞く。製品=クルマは個性があってクオリティーも高いのが当たり前。ならばどこで差異化を図るか。そして、いかにしてそのブランドの世界観や価値、ヒストリーを伝えるかが重要視されている。
ディフェンダーの走破性をリアルに確かめ、アウトドアでグルメやライブプログラムを楽しみ満足げな表情で会場を後にする参加者を見ると、そのホンモノの魅力になるほどと納得する。同時に、クルマの面白さを感じるならリアルイベントに並ぶものはないとあらためて感じた。
(文=櫻井健一/写真=ジャガー・ランドローバー・ジャパン、webCG/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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