BMW R12(6MT)
気のおけない相棒 2025.04.25 JAIA輸入二輪車試乗会2025 排気量1.2リッターの空油冷フラットツインを搭載した、BMWのクルーザーモデル「R12」。ライバルとも、BMWの他のモデルとも一味違う、このバイクならではの魅力とは? リラックスしてボクサーサウンドを楽しむ妙味をリポートする。自然体で乗れる大人のクルーザー
さいきん乗ったBMWのラインナップのなかで、ダントツに乗りやすかったモデルがこのR12だ。そう言い切れる。スッと跨(またが)ってキュンとエンジンをかけてシュッと走りだせる。大型バイクなのに「デカさに負けないぞ!」の気負いがいらない。居丈高に見えるBMWのビッグな車列にあって、“無印”のR12は、素晴らしく乗りやすくてフレンドリーだった。
まず足つきがベリーグッド。どれもこれもシート高がハイアベレージなBMW軍団だが、R12は身長172cmのジャパニーズにもとても優しい754mm。車重227kgを意識させないほど車体起こしが楽チンなら、押して進めることもそれほど苦にならない。クルーザーといわれるジャンルのバイクはこのあたりが不得手だったりするのが通例だけど、R12はそのあたりを軽く飛び越えていた。うーん、いいかも。
いつもながらに感心させられるのは、空油冷と表現されるフラットツインエンジンの回転フィールだ。スムーズなのに味がしっかりとあって、全域でトルクフル。これぞ中庸セット! 重心が低くてストロークもなさそうに見える足まわりも、いざ走りだせばことのほかよく動くので、ずっと安心感が途切れない。ホイール径はフロント:19インチ、リア:16インチ。クセのないライトなハンドリングに気をよくしてコーナーで車体をバンクさせると、意外とあっけなくバンクセンサーが地面と接触する。「もっと肩の力を抜きな~」と言われているようだが、決して悪い気持ちにならないのは、R12がオトナの雰囲気なマシンだから。そうそう。いにしえのトースタータンクを想起させるティアドロップ型タンク、そのフォルムもかなりステキです。
停車中にスロットルをクイっと開ければ、ボディーをわずかに左右に揺らすいつものトルクリアクション。いとおしい。軽いクラッチレバーを引き、節度感のあるシフトを1速に入れて軽やかにスタート……。走りだしたそのタイミングで、ライディングポジションがコンパクトなことに気がつく。上半身はのけぞるでも屈(かが)むでもなく、適度に前傾し、安楽かつ自然体。そのままの気やすさでコーナーをヒラヒラと駆け抜けていく。その大人びたあしらいと素性のよさよ! つい旧型の「ハーレーダビッドソン・スポーツスター」を思い起こしてしまう筆者はいけない子?
いやー、R12。すごくいい。欲しいかも。そして虚空を見つめながら、「コミコミで200万円は軽く超えるよなあ」とつぶやくのである。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2210×830×1110mm
ホイールベース:1520mm
シート高:754mm
重量:227kg
エンジン:1169cc 空油冷4ストローク水平対向2気筒DOHC 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:95PS(70kW)/6500rpm
最大トルク:110N・m(11.2kgf・m)/6000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:19.6km/リッター(WMTCモード)
価格:199万9000円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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