ハーレーダビッドソン・ローライダーS(6MT)
やっぱハーレーはこうじゃないと! 2025.04.27 JAIA輸入二輪車試乗会2025 ハーレーダビッドソンのクルーザーのなかでも、ハイチューンなエンジンと無駄を削(そ)ぎ落としたスタイルが魅力の「ローライダーS」。重い車体に重いクラッチ、バンカラにライダーを蹴り出すエンジンと、このマシンはどこをとってもハーレーらしさに満ちあふれていた。ミニマルなスタイルと過剰なトルクにしびれる
年一回の輸入バイクの合同試乗イベント、JAIA輸入二輪車試乗会。毎春に開催されるその会場には、じつにさまざまな車種が集められる。全景は毎年大きく変わるわけではないが、個々のバイクのデザインだけは、時代を映しながらどんどん変化する。そのことをつぶさに感じられるのがこのJAIAのいいところなのだけど、同時に各バイクメーカーのフルラインナップにあって、「変わらんなあ」と旧友に会ったときのような懐かしい気持ちにさせてくれるバイクもある。それが、小さなビキニカウルと高い位置にセットされたバーハンドル、なによりスリムなボディーが目を引く、ハーレーダビッドソン・ローライダーSだ。
ロー&ロングに構えたフォルムは全長2360mm、ホイールベース1615mm。シート高は心穏やかな715mmながら、車重はズシッと両脚にくる304kg。取り回しがいいわけでは決してない。排気量はいまや2リッターまでもうすぐな1923ccで、最大トルクは173N・mもある。ナンセンスを覚悟しつつ、「ホンダCT125ハンターカブ」が11N・mだから、キャパが15倍以上ということを考えるとむしろ「ハンターカブ、頑張ってるなあ」と思わずにはいられない。……いやいや話がそれたぞ。とにかく、そんな世間のささいなことなどどこ吹く風。俺はオレだとばかりにスタイル不変で、超然と低く構える真っ黒なローライダーSには、いぶし銀のカッコよさが染み込んでいる。
なるほどクラッチは重い。近ごろのバイクがそろって軽くなったことを考えるまでもなく、「これもまたはハーレーらしさ!」と言わんばかりに、重い。たしかにこれが思いっきり軽かったりしたら、それはそれでハーレーらしくないのかも……と独り言。ごく短い試乗時間ながら強く印象に残ったのは、“ハイアウトプット仕様”の「ミルウォーキーエイト117」エンジンが出力するマッスルカーのごとき極太トルクだ。まるで大口径のピストルのように、トリガーを引くたびにドカンドカンと車体が前方へと飛び出していく。
かつての“ダイナ・ローライダー”がソフテイルのフレームを得て復活したのが2022年。とかく華美なハーレー兄弟たちにあって、どこかミニマルともいえるたたずまいのローライダーSだが、そのトルクだけは相変わらず過剰だった。ハーレーらしいハーレー、その生き残り。そんな言葉が頭をよぎる。
(文=宮崎正行/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
【スペック】
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=2360×890×--mm
ホイールベース:1615mm
シート高:715mm
重量:304kg
エンジン:1923cc 空油冷4ストロークV型2気筒OHV 4バルブ(1気筒あたり)
最高出力:114HP(85kW)/5020rpm
最大トルク:173N・m(17.6kgf・m)/4000rpm
トランスミッション:6段MT
燃費:5.6リッター/100km(約17.9km/リッター、EU134/2014モード)
価格:300万0800円
◇◆JAIA輸入二輪車試乗会2025◆◇

宮崎 正行
1971年生まれのライター/エディター。『MOTO NAVI』『NAVI CARS』『BICYCLE NAVI』編集部を経てフリーランスに。いろんな国のいろんな娘とお付き合いしたくて2〜3年に1回のペースでクルマを乗り換えるも、バイクはなぜかずーっと同じ空冷4発ナナハンと単気筒250に乗り続ける。本音を言えば雑誌は原稿を書くよりも編集する方が好き。あとシングルスピードの自転車とスティールパンと大盛りが好き。
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