クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

【番外編】バイパー、事故に遭う ―東京の片隅で垣間見た現代ニッポンの縮図―

2025.08.26 バイパーほったの ヘビの毒にやられまして 堀田 剛資
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!
都内某所にて、事故直後の「ダッジ・バイパー」。
都内某所にて、事故直後の「ダッジ・バイパー」。拡大

インバウンドでにぎわう令和の日本で、webCG編集部員と「ダッジ・バイパー」を襲ったささやかな悲劇とは? 「まさか自分が(笑)」なんて油断しているところに襲ってくるのが事故というもの。読者諸氏の皆さんも、運転には気をつけましょうね。

現場で撮影した傷の様子。当時は「ペンキで上塗りすればOKな程度かな」と思っていたのだが……。
現場で撮影した傷の様子。当時は「ペンキで上塗りすればOKな程度かな」と思っていたのだが……。拡大
翌日見たらご覧のとおり。これは、かなりいっちゃってるね。
翌日見たらご覧のとおり。これは、かなりいっちゃってるね。拡大
ボディーとバンパーのズレに注目。見ればこちらにも亀裂が入っている。
ボディーとバンパーのズレに注目。見ればこちらにも亀裂が入っている。拡大
修理のため、毎度おなじみ相模原の主治医のもとへ出発するの図。
修理のため、毎度おなじみ相模原の主治医のもとへ出発するの図。拡大
きたないクルマを入庫するのもどうかと思うので、「バイパー」を機械式洗車機に突っ込むことにした。見よ。バイパーのフロントウィンドウに迫りくるブラシの迫力を。
きたないクルマを入庫するのもどうかと思うので、「バイパー」を機械式洗車機に突っ込むことにした。見よ。バイパーのフロントウィンドウに迫りくるブラシの迫力を。拡大

お相手は“プリウスミサイル”

気づけば半年以上も過ぎてしまった、過日のお話をしたいと思う。

あれはまだ冬の時分。webCGほったとダッジ・バイパーは事故に遭った。などというと大げさだが、後続車にガジガジと尻をかじられた。場所は東京・渋谷の某交差点。時間は暮六つの頃だったと思う。

左折中にまろび出てきた自転車をやり過ごそうと、ブレーキを踏んだ際である。後ろからゴリゴリと音がしたのでルームミラーを見やれば、煽(あお)り屋もかくやの距離に「トヨタ・プリウス」のおデコ。ああ、こりゃ突っ込まれたなと了解するのに、さほど時間はかからなかった。

往来の迷惑になるのは避けたいので、取りあえずは交差点を出、その先の路肩にクルマを寄せる。今から思えば無防備な行動で、相手が当て逃げを図る無法者なら、泣き寝入りは必至だった。冷静なつもりでも、記者も動転していたのでしょう。もっとも、本気で逃げを打たれたら、なにをしたって防ぎようはないのですがね。日本の秩序は事故現場でさえ性善説に支えられているわけで、とにかく相手が悪辣(あくらつ)なやからでなくて、ヨカッタ、ヨカッタ。

それにしても哀れなのはプリウスである。設計の不備も、不得手な運転者が多いことも立証されてはいないのに、ネットの海では「プリウスミサイル(笑)」などと言われておもちゃにされている始末。あげく、こうしてメディア関係者に追突してネタを提供してしまうのだから、ふびんなことこのうえない。まぁ、それでもこうして記事にしちゃうんですけど。

さて、どうした語り口でいくか。おしゃれに季語でも入れてやるか。なんて考えつつバイパーを降り、プリウスのドライバーにごあいさつ。おけがはありませんか? それはよかった。110番はこちらでするので、そちらは三角灯をお願いします……と話したところで記者は「おや?」と気づいた。ハンドルを握っていたその御仁、日本人ではなかったのである。

ダッジ の中古車webCG中古車検索

ふびんな外国人と道行く人のスマホカメラ

とっぷり日の暮れた東京砂漠の片隅で、異邦人の事故当事者と2人で警察を待つ。気まずい……のは相手が日本人でも一緒だが、加えてなんか、いたたまれなくなってくる。遠い異国の地で、よりにもよってダウン着た坊主が運転する黒塗りのアメ車に突撃してしまったのだ。氏の心細さたるや、いかばかりか。なまじこちらも海外経験があるだけに、もし自分が同じ立場になったらと思うと、マジで怖い。精神の虚弱な記者のこと、トラウマになって二度と海を渡れなくなるだろう。取りあえず、この一年は人に優しくしようと思った。

それにしてもだ。週末の渋谷で、外国人が運転する3代目プリウスに追突されるなんて、なんとも令和の日本って感じではあるまいか。漠然と、こういう事故は液晶の向こう側の出来事って気がしていたのだが、こうしてどんどん他人事じゃなくなっていくんだろうな。最近は外国人の運転による事故も増えているというし、実家の父姉(母は運転しない)にも「気をつけなさいよ」と言っておこう。……まぁ、なににどう気をつければいいのかはわからないんだけど。

なんて益体のないことを考えながらも、記者にはさっきから、気になることがあった。道行く人がちらちら、ちらちら、こちらにスマホを向けてくるのだ。それはお巡りさんが到着してからも同様で、よほど事故ったバイパーが路肩にとまっているのが珍しいのだろう。無論、こっちとしてはいい気はしない。というか、写真にはバイパーのナンバーやら記者の仏頂面やら、プリウスのドライバーさんだって写り込んでいるはず。なんのつもりで写真or動画を撮っているかは知らんが、そんなもん、SNSに上げられたらたまったもんじゃない。普段はカメラを向けられても笑顔でスルーしている記者だが、さすがにこの時だけは身を乗り出した。「あの~。撮影やめてもらえます?」

努めて穏やかな口調とスマイルは保ちつつ、心のなかは臨戦態勢。まぁ、もめてもそこにお巡りさんいるし……という情けない状況分析もあっての強気だが、意外にも相手は「あ、サーセン」とすんなりスマホを引っ込めたのだ。その後も2度ほど、無許可でスマホを向ける御仁に「あの~」とモノ申したのだが、皆「サーセン」「ですよねぇ」と言ってはカメラを下げる。どうにも、自身の行動がぶしつけであることはわかっている様子である。いや、ならなんでカメラを向けるの? アルカイックスマイルで去っていく若人や外国人観光客を見送りつつ、これもまた「なんか、令和の日本って感じだなぁ」としみじみ思った。

代車としてお世話になった、ちょっと古い「メルセデス・ベンツCクラス」。これで俺も、ブルジョアの仲間入りよ。
代車としてお世話になった、ちょっと古い「メルセデス・ベンツCクラス」。これで俺も、ブルジョアの仲間入りよ。拡大
記者にとっては夢の高級車生活だったが、なんと車載オーディオがウォークマンとBluetooth接続できず。仕方なしにハードオフでAUXのケーブルを購入したのだが、今度は端子の形状が合わないという事態に。結局「Cクラス」での優雅な音楽鑑賞は断念した。つくづく、高級ドイツ車とは相性が悪い人生である。
記者にとっては夢の高級車生活だったが、なんと車載オーディオがウォークマンとBluetooth接続できず。仕方なしにハードオフでAUXのケーブルを購入したのだが、今度は端子の形状が合わないという事態に。結局「Cクラス」での優雅な音楽鑑賞は断念した。つくづく、高級ドイツ車とは相性が悪い人生である。拡大
入庫から2カ月。お尻が完治して戻ってきた「バイパー」の図。気づけば事故発生から3カ月半が経過していた。
入庫から2カ月。お尻が完治して戻ってきた「バイパー」の図。気づけば事故発生から3カ月半が経過していた。拡大
キレイに直ったリアバンパー。主治医の先生いわく、右側の「ViPER GTS」のロゴ(弾性ステッカー)のみ新品となったので、左の「DODGE」ロゴと若干色味が違ってしまったとのこと。しかし鈍感な記者の目にはサッパリわからないので、無問題だ。
キレイに直ったリアバンパー。主治医の先生いわく、右側の「ViPER GTS」のロゴ(弾性ステッカー)のみ新品となったので、左の「DODGE」ロゴと若干色味が違ってしまったとのこと。しかし鈍感な記者の目にはサッパリわからないので、無問題だ。拡大
ついでに、すり減っていたリアタイヤも交換してもらった(もちろん、こちらは自費ですよ)。銘柄は、なんと「ミシュラン・パイロットスポーツ」! 半分だけだが、これで記者も、ホントにブルジョアの仲間入り。
ついでに、すり減っていたリアタイヤも交換してもらった(もちろん、こちらは自費ですよ)。銘柄は、なんと「ミシュラン・パイロットスポーツ」! 半分だけだが、これで記者も、ホントにブルジョアの仲間入り。拡大

民事不介入はわかりますけども

当惑したといえば、もうひとつ当惑したことがあった。実は異邦人のプリウスドライバー氏……いいかげん面倒なので、以下はプリ氏といたします……は、日本語は話せるけど漢字がダメだったのだ。面倒なのが損害賠償の関係で必要となる連絡先の交換で、こちらが免許証を見せても、名前は読めないし、住所も理解できないというのである。

いや、数字は理解できるでしょ? ワタシの電話番号をメモして、住所・氏名は免許証を写メしておけばいいですよ。で、保険会社の担当さんにワタシの連絡先を伝えるとき、その写メをメールなりなんなりで送ればいいから。……とそんな風に説明しながら、こんなアドバイスをするのも事故当事者の役割なん? と、ちょっと首をかしげてしまった。

ちなみにであるが、記者とプリ氏が「どうしよう、どうしよう」と右往左往していた間、お巡りさんはなにをしていたかというと、ずっとあっちで見ないふり。「あのー……」と声をかけると、ナンパに遭ったウブな乙女のごとく「すみません。民事はちょっと(汗)」とそそくさ逃げる始末である。ああ、これが世に名高い民事不介入というやつか。ストーカーやいじめを題材にしたテレビ番組でしか聞かない言葉だと思ってたわ。

しかしである。外国人が相手の事故はすでによそでも起きてるだろうし、その現場では今回のようなコミュニケーション問題も起きているハズ。それでも「現場では当事者任せ」を決め込んでいたら、らちのあかないことになるのではないか? 記者は訝(いぶか)しんだ。

ちなみにであるが(本日2回目)、このお巡りさん、先ほどの無許可スマホ騒動の折も、民事不介入の姿勢を徹底していた。いや、さすがにそこは一言注意してくれてもよかったんじゃないの?? 官憲のルールやその現場運用が、うつろう世相に即していないというのも、いかにも令和の日本って感じではあるまいか。……いや、これについては昔っからの変わらぬ風情か。

さっそく、回復した「バイパー」で千葉の朋友のもとへ。ちなみにだが(古参の読者は御存じでしょうが)、実は記者は、元「Mini」乗りなんですよ。
さっそく、回復した「バイパー」で千葉の朋友のもとへ。ちなみにだが(古参の読者は御存じでしょうが)、実は記者は、元「Mini」乗りなんですよ。拡大
いつの間にか剥げていた、フロントカウルのクリア。どうやら入庫時の機械洗車がトドメを刺したらしい。自業自得。
いつの間にか剥げていた、フロントカウルのクリア。どうやら入庫時の機械洗車がトドメを刺したらしい。自業自得。拡大
ヘッドランプを磨いてくれた朋友に感謝。どうにもわが「バイパー」は、行く先々でいろんな人にかわいがられる。ボロだからかな?
ヘッドランプを磨いてくれた朋友に感謝。どうにもわが「バイパー」は、行く先々でいろんな人にかわいがられる。ボロだからかな?拡大
続きまして、同好の先輩S氏と三浦のリバイバルカフェで快気祝い。
続きまして、同好の先輩S氏と三浦のリバイバルカフェで快気祝い。拡大
S氏からはスゴいプレゼントをいただいた。その正体は……。
S氏からはスゴいプレゼントをいただいた。その正体は……。拡大

外国人やプリウスが悪いわけではない

以上が、年初の東京・渋谷で起きたバイパー/プリウス接触事故の顚末(てんまつ)である。オチ? そんなものはない。読者諸氏には、相手が外国人ということで法外なトラブルを期待した向きもいたやも知れぬが、あいにく、そんなことは全然なかった。プリ氏はちゃんと任意保険に加入しており、後日、先方の保険会社より「今回は過失割合が10:0になりますので……」との連絡が来た。それでしまいである。

考えてみれば、そりゃそうだろう。外人さんがみんな無頼の徒なわけがない(笑)。そうした点は匿名かいわいでミサイルとやゆされるプリウスも同じで、根拠もナシにアイコニックななにかを忌避しても意味がないと、あらためて思った次第だ。……なんて言いつつ、記者も事故からしばらくは、プリウスや外国人のクルマに近づかれると眉がピクピクしていたのですがね。しょうがないよ、人間だもの。

まぁ無意識の防衛本能がおかしなベクトルに発展しないよう自覚&自戒するのと、あとは自分からヘンな事故は起こさぬよう、気をつけましょう。人生初のゴールド免許取得を前に、そんな風に過日の出来事を思い出した処暑の記者であった。

(webCG堀田剛資<webCG”Happy”Hotta>)

でーん。1997年東京モーターショーの、クライスラーのプレス資料である!
でーん。1997年東京モーターショーの、クライスラーのプレス資料である!拡大
中身はこんな感じで、出展概要や展示車両の解説等が、立派な紙に印刷されて入っていた。USB世代の記者は、最近の取材現場で「資料はQRコードからダウンロードしてね」と言われて戸惑っている次第だが、さすがにこれは見たことがなかった。昔は、これを集めながらショー会場を駆けまわっていたのか。リゲインが何本あっても足りないな。
中身はこんな感じで、出展概要や展示車両の解説等が、立派な紙に印刷されて入っていた。USB世代の記者は、最近の取材現場で「資料はQRコードからダウンロードしてね」と言われて戸惑っている次第だが、さすがにこれは見たことがなかった。昔は、これを集めながらショー会場を駆けまわっていたのか。リゲインが何本あっても足りないな。拡大
読者諸氏よ、ご覧あれ。「ダッジ・バイパー」のポジである。末代までの家宝とさせていただきます……。
読者諸氏よ、ご覧あれ。「ダッジ・バイパー」のポジである。末代までの家宝とさせていただきます……。拡大
堀田 剛資

堀田 剛資

猫とバイクと文庫本、そして東京多摩地区をこよなく愛するwebCG編集者。好きな言葉は反骨、嫌いな言葉は権威主義。今日もダッジとトライアンフで、奥多摩かいわいをお散歩する。

バイパーほったの ヘビの毒にやられましての新着記事
  • 【番外編】バイパー、能登へ行く 2025.1.9 排気量8リッターのアメリカンマッスルカー「ダッジ・バイパー」で目指すは深秋の日本海。その旅程で記者が覚えた、AIやデンキに対する考えとは? 最後の目的地である能登半島の突端で思ったこととは? webCG編集部員が、時代遅れの怪物と中部・北陸を駆ける。
  • 第47回:114万9019円の愉悦 2022.12.21 限りある石油資源をむさぼり、今日も生ガスをばらまいて走るwebCG編集部員の「ダッジ・バイパー」。今年に入り、ずっと不調だった毒ヘビが、このほど整備から帰ってきた。どこを直し、どう変わったのか? どれくらい諭吉が飛んだのか!? 赤裸々にリポートする。
  • 第46回:クルマを買い替えようとして、結局やめた話 2022.10.3 アメリカの暴れん坊「ダッジ・バイパー」に振り回されてはや6年。webCGほったの心に、ついに魔が差す? 読者諸兄姉の皆さまは、どんなタイミングでクルマの買い替えを考えますか。お金ですか? トラブルですか? 記者の場合はこうでした。
  • 第45回:頼みの綱の民間療法 2022.5.20 漏るわ、滑るわ、雨とはいささか相性がよくないwebCG編集部員の「ダッジ・バイパー」。加えて電装系が気まぐれなのも頭痛の種だが、これら2つの悪癖に同時に襲われたら、持ち主はどんな窮地に立たされるのか? 春時雨の下で起きた事件の顛末をリポートする。
  • 第44回:100万円(?)の遊興 2022.4.6 ここのところおとなしかったwebCGほったの「ダッジ・バイパー」が、久々に牙をむいた。増大しつづける車検費用に、噴出するトラブル。ついに年間の整備代が100万円を突破するのか? 貧乏オーナーが放蕩なアメリカンスポーツの実態を語る。
バイパーほったの ヘビの毒にやられましての記事をもっとみる
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。