走るほどにCO2を減らす? マツダが発表した「モバイルカーボンキャプチャー」の可能性を探る
2025.12.11 デイリーコラム走るほどにCO2を減らす技術とは?
マツダは「ジャパンモビリティショー2025(以下、モビショー)」にCO2回収装置を展示した。2ローター・ロータリーターボエンジンのプラグインハイブリッド車「マツダ・ビジョンX(クロス)クーペ」が搭載する想定である。
この4ドアクーペのコンセプトモデルは、微細藻類由来のカーボンニュートラル燃料(CNF)を使用。走行中にエンジンの燃焼によって排出するCO2は相殺され、カーボンニュートラル走行が可能となる。さらに、先述のCO2回収装置で排気中のCO2を部分的に回収することにより、カーボンネガティブを実現するという。走行によって排出するCO2よりも、吸収するCO2のほうが多いということだ。これが想定どおりに実現すれば、ガソリンや軽油(CNFならマッチベター)を、大手を振って使えるというわけである。
マツダは「走るほどにCO2を減らす」技術に着目している。ひとつは微細藻類由来のCNF。もうひとつがCO2回収技術で、これについては2035年の実用化を目指すとしている。
「Mazda Mobile Carbon Capture(マツダモバイルカーボンキャプチャー)」と名づけられたCO2回収装置は、CO2貯蔵タンクと気液分離器、CO2吸着・脱離ユニット、そしてブロワーで構成されている。CO2貯蔵タンクと気液分離器は1基、CO2吸着・脱離ユニットとブロワーは2基ずつ搭載される。
排気はまず気液分離器で水分が除去される。CO2吸着・脱離ユニットでCO2を吸着するのに水分が邪魔するからだ。水分が除去された排気はCO2吸着・脱離ユニットに向かう。このユニットには多孔質構造を持つゼオライトが充塡(じゅうてん)されており、これがCO2を吸着する。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
数十kmの走行で100g以上のCO2を回収
吸着したCO2を今度は脱離させなければならない。CO2吸着・脱離ユニットとブロワーが2基ずつあるのはそのためで、弁で排気の流れを切り替え、一方がCO2を吸着しているときに、もう一方でCO2を脱離させる仕組み。ゼオライトは温めるとCO2を手放す性質があるという。展示品には見当たらなかったが、CO2吸着・脱離ユニットを加熱する装置も必要だということだ。さらにいうと、排気が熱いままではゼオライトにCO2が吸着してくれないので、排気を冷やす冷却器も必要なはずである。
回収したCO2はCO2貯蔵タンクにためる。モビショーのマツダブースにいた説明員によると、数十km走行すると100gから200gのCO2がたまってタンクがいっぱいになるイメージだという(ずいぶん幅が広いが)。たまったCO2はタンクごと交換するか、CO2回収装置に外部からチューブを差し込んで回収するか、その2通りを検討しているとのこと。タンクを大きくすればそのぶんCO2を回収できる量は増えるが、システムは大きくなり、重くなる。そこはジレンマだ。回収するCO2の量が多ければ多いほど、カーボンネガティブの度合いは高まることになる。
排気に含まれるCO2のうち、CO2回収装置で20%程度回収できるという。CO2を回収するなら排気ではなく吸気からでも技術的には可能である。その場合は高温の排気を冷却する必要はなく、システムはよりシンプルになる。だが、CO2の濃度が圧倒的に高い排気から回収したほうが、回収効率はいい。だからマツダはあえて、システムが大がかりになるのを承知で排気からCO2を回収することにした。システム重量は展示物の規模で50kg程度とのことだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
電気自動車だけが正義ではない?
2025年11月15日〜16日に富士スピードウェイで行われたスーパー耐久シリーズ最終戦では、「MAZDA SPIRIT RACING 3 Future Concept」がCO2回収装置を取り付けて走行した。機能確認が狙いだったのでモビショーの展示品のような2系統とはせず、ワンユニットで吸着と脱離を行う1系統のシステムが搭載された。また、モビショーの展示品には見られなかった水タンクが搭載されていた。気液分離器で排気から除去した水をためておくタンクである。
レースでは4時間の走行で84gのCO2を回収したという。まずはレース中の過酷な環境でしっかりとCO2を回収できることは確認した。2026年以降は引き続きレースで実証実験を重ね、吸着したCO2を効率良くタンクに貯蔵する技術を磨いていくことになる。その後、量産化に向けてシステムの小型化と低コスト化を図っていくプランだ。
回収したCO2は水素と反応させて合成燃料をつくることに使えるし、植物の栄養促進剤として利用することも可能。また、微細藻類の培養に使うこともできる。この場合は冒頭で触れた微細藻類由来となるCNFの製造につながり、CO2の循環が成立する。
CO2回収装置が実用化されて「走るほどにCO2を減らす」ことになれば、われわれは心おきなく「走る歓(よろこ)び」に没頭できるというわけだ。電気自動車だけが正義でも正解でもない。ロータリーエンジンだってずっと楽しんでいられるのである(要するに、これが言いたい)。
(文=世良耕太/写真=マツダ、webCG/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

世良 耕太
-
ルノーから新型車「フィランテ」が登場 仏韓中の協業が生んだ新たな旗艦はどんなクルマ? 2026.3.13 ルノーが韓国で新型クーペSUV「フィランテ」を世界初公開! 突如発表された新たな旗艦車種(?)は、どのようないきさつで誕生したのか? フランス、韓国、そして中国の協業が生んだニューモデルの概要と、そこに込められたルノーの狙いを解説する。
-
新型「リーフ」は日産の救世主になれるか BEVオーナーの見立ては? 2026.3.12 日産自動車は3代目となる電気自動車(BEV)「リーフ」の受注台数が、注文受け付け開始から約4カ月で6000台を超えたと明らかにした。その人気の秘密や特徴を、自らもBEVを所有するモータージャーナリスト生方 聡が解説する。
-
新型「RAV4 PHEV」が実現した「EV走行換算距離151km」を支える技術とは? 2026.3.11 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッドモデルではEV走行換算距離(WLTCモード)が前型の約1.5倍となる151kmに到達した。距離自体にもインパクトがあるが、果たしてこれほどの進化をどうやって実現したのか。技術的な側面から解説する。
-
「ジムニー ノマド」と「ランクル“FJ”」の超人気クロスカントリー対決! あなたはどちらを選ぶべきか? 2026.3.9 人気沸騰の「スズキ・ジムニー ノマド」は2026年夏、話題の新型クロスカントリー「トヨタ・ランドクルーザー“FJ”」と市場でぶつかる見込みだ。では、われわれユーザーが選ぶべきはどちらか? 2車種をあらためて比較する。
-
実に3年半ぶりのカムバック 「ホンダCR-V」はなぜ日本で復活を果たしたのか? 2026.3.6 5代目の販売終了から3年半のブランクを経て、日本での販売が開始された6代目「ホンダCR-V」。世界的なホンダの基幹車種は、なぜこのタイミングで日本復活を果たしたのか? CR-Vを再販に至らしめたユーザーの声と、複雑なメーカーの事情をリポートする。
-
NEW
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】
2026.3.14試乗記英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。 -
テスラ・モデルYプレミアム ロングレンジAWD(4WD)
2026.3.13JAIA輸入車試乗会2026電気自動車(BEV)「テスラ・モデルY」の最新モデルは、これまで以上に無駄を省いた潔いまでのシンプルさが特徴だ。JAIA輸入車試乗会に参加し、マイナーチェンジによってより軽くより上質に進化したアメリカンBEVの走りを確かめた。 -
ルノーから新型車「フィランテ」が登場 仏韓中の協業が生んだ新たな旗艦はどんなクルマ?
2026.3.13デイリーコラムルノーが韓国で新型クーペSUV「フィランテ」を世界初公開! 突如発表された新たな旗艦車種(?)は、どのようないきさつで誕生したのか? フランス、韓国、そして中国の協業が生んだニューモデルの概要と、そこに込められたルノーの狙いを解説する。 -
第865回:ブリヂストンが新タイヤブランド「フィネッサ」を発表 どんなクルマに最適なのか?
2026.3.13エディターから一言ブリヂストンが2026年1月に発表した「FINESSA(フィネッサ)」は、同社最新の商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載する乗用車用の新タイヤブランドである。高いウエットグリップ性能と快適な車内空間の実現がうたわれるフィネッサの特徴や走行時の印象を報告する。 -
新型「リーフ」は日産の救世主になれるか BEVオーナーの見立ては?
2026.3.12デイリーコラム日産自動車は3代目となる電気自動車(BEV)「リーフ」の受注台数が、注文受け付け開始から約4カ月で6000台を超えたと明らかにした。その人気の秘密や特徴を、自らもBEVを所有するモータージャーナリスト生方 聡が解説する。 -
ホンダN-ONE e:L(前編)
2026.3.12あの多田哲哉の自動車放談軽自動車の世界において「N」シリーズで存在感をみせるホンダ。そのフル電動バージョンたる「N-ONE e:」の仕上がりやいかに? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんがチェックした。











