インディアン・チーフ ヴィンテージ(6MT)

伝統とファン・トゥ・ライド 2026.06.12 JAIA輸入二輪車試乗会2026 後藤 武 創業は1901年というアメリカの老舗、インディアンモーターサイクルの「チーフ ヴィンテージ」に試乗。往年の「チーフ」をオマージュしたという一台は、ネオクラシックモデルとしての完璧な趣と、濃厚なファン・トゥ・ライドを併せ持つマシンに仕上がっていた。
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妥協のない走りも魅力のネオクラシック

完全になめていた。レトロなスタイルだし、スポーティーさの“ス”の字も感じられないから何気なくスロットルを開けたのである。ところがその瞬間、あまりの勢いで飛び出して、上体がのけぞり、ハンドルをつかんでいた手がスッポ抜けるかと思った。温厚そうな紳士と握手したとたん、背負い投げを食らったような衝撃だった。

パワーモードがノーマルだったら「おお、力強いじゃないか」って感じでニヤニヤしていた程度だろう。ところがゴトーが試乗したときはスポーツモード。そしてこのバイクのパワーモードは、切り替えると性格が激変する。だから右手を動かしたとたんに156N・mの大トルクがさく裂したのだった。もしかしたら編集H田が「スポーツモードにしていたらビックリするぞ」なんてイタズラしていたのかもしれない。

気を取り直して走らせてみると、このエンジンが実にいい。2000rpmも回っていれば、無敵じゃないかと思うようなトルクで加速していく。ツインの鼓動感もドスドスと気持ちよく響いてくる。低回転で若干メカノイズが気になったけれど、不快なものではないし空冷だからこんなもの。それに回り方は実にスムーズだ。レブリミットまでスーッと回っていく。

ハンドリングは予想どおりの安定感。低速でバンクさせたときもフロントが切れ込んでくるようなことがないから、教習所みたいな定速走行をしていてもまったく不安がない。切り返しは若干「よいしょ」という感じになってしまうが、それもこういうデッカいバイクのだいご味のようなもの。いやー、いいなあ、このバイク。

原油価格の高騰を筆頭に、昨今はライダーを取り巻く環境は厳しさを増すいっぽうだが、そうしたなかでバイクに求められるのは、経済的な負担を補って余りある楽しさだろう。ガソリンの価格が倍になったとしても、楽しさが2倍以上なら満足できるではないか。そうやって考えると、これからの時代にインディアン・チーフ ヴィンテージっていう選択肢は、ありなんだと思う。

ちなみにゴトーのドイツの友人には、フランクといってこいつのモチーフになった往年のインディアン・チーフに乗っている者がいる。確か1942年製だったはずで、デザインもカラーもこれとうり二つだ。20年前、彼がインディアンで日本を旅していたとき、鹿児島で待ち合わせて一緒に日本最後の秘境、トカラ列島の宝島に行ったことがあった。フランクはこの取材の直前に来日しており、わが家に滞在した際に「またトカラに行きたいよねえ」なんて話していたばかりだったから、なんか運命的なものを感じてしまった。フランクのインディアンとこのインディアン・チーフ ヴィンテージで一緒に走ったら、楽しいだろうなあ。なんて考えていたら、また魅力的なバイクに見えてきた。

インディアン・チーフ ヴィンテージ
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