第103回:試さないのはもったいない!? スポーツカートのススメ
2009.08.14 エディターから一言第103回:試さないのはもったいない!? スポーツカートのススメ
汎用エンジンで走るフォーミュラ
2009年8月1〜2日にかけて、ツインリンクもてぎでカートの耐久レース「エンデュランス・カーニバル2009 もてぎKART耐久フェスティバル」(通称K-TAI)が開催された。2001年の初回以来、9度目の開催となるこのイベントは、ツインリンクもてぎの本コースで7時間耐久レースを行うというもの。2007年には大幅なリニューアルが実施され、4ストローク・スポーツカートが大会のメインイベントとなった。
4ストのスポーツカートは、耕うん機やポンプなどに使われる汎用エンジンを搭載する。K-TAIのレギュレーションではエンジン排気量は270cc以下と定められている。多く使われているのは、ホンダのGX200(200cc)、GX270(270cc)、スバルのEX21(210cc)など。それまでメインだった100〜120ccクラスの2ストローク・カートは、高回転までギュンギュン回り、刺激的な走りが楽しめた反面、車速が高いためビギナーにはリスクが高く、レース参戦のハードルを引き上げていた感もあった。
その点、4スト・カートは、速く走ることを目的に造られたエンジンではないため、排気量は大きいものの車速は2ストほど伸びない。そしてそのぶん耐久性も高い。したがって、これからモータースポーツを始めようとする人やビギナーがより安全にレースを楽しむことができ、メンテナンスコストも抑えられることから、モータースポーツの裾野を広げるのに向いていると思う。実際、その楽しさが広まりつつあるのか、参加者は2007年に約50台だったのが、翌08年には約90台、そして09年は116台と増加の一途をたどっているのだ。
平均車速は約100キロ!
4スト・スポーツカートによるもてぎ本コース(1周4.8km)のラップタイムは、2分50秒〜3分ほど。平均車速はちょうど100km/hくらいだ。スピードだけを聞くと速く感じるかもしれないが、実際に乗ってみると不思議なことにこれがちょうどいいスピードに感じられる。レース初心者でも恐怖を感じることなく楽しめるはずだ。一方、コーナリングスピードは一般的な乗用車より速いため、腕利きにとっても退屈に感じてしまうことはないはず。これなら幅広い層がレースとスピードの魅力を楽しめると思う。
レースのルールは簡単で、7時間走行した時点で、もっとも多く周回を重ねたチームが勝ち。同一周回ならば先にチェッカーをくぐり抜けたほうが順位が上になる。給油は、1度に2リッターまでと決められており、ワンストップにつき3分の停止が義務づけられる。ここが一番のミソ。速く走っても燃費が悪いと結果的にピットストップの時間が長くなってしまい、トータルではタイムロスしてしまうことになるからだ。
参加チームをザッと見回した感じでは、多くのチームが3〜5人でチームを組んでエントリーしており、30〜40分でドライバー交代をしているもよう。実際、1周3分位のペースで走ると燃料は40分程度で底をつくため、どのチームもだいたい同じようなサイクルでドライバー交代をするようだ。概算では7時間でのべ11〜13人が乗れる計算となり、ひとりあたり2回、多い人で3回順番がまわってくる。
身も心も若返る!?
今回僕は、自動車ジャーナリストや自動車メーカー広報スタッフ、編集者などからなるレースチーム「クラブレーシング」からエントリーさせてもらった。マシンは合計4台、メンバーはメカニックやサポートスタッフを入れて30名を超える大所帯だ。このチームはK-TAIの常連組ではあるが、優勝をさほど意識していないのか、ガツガツした雰囲気がないのがいいところ(?)。いや、このチームに限らず、K-TAIに出ているコンペティターのほとんどがポッカポカな雰囲気で、みんなでイベントを盛り上げようとしている感じだ。
実際、モータースポーツの魅力をわかっていながらも、「朝早いから」とか「忙しい」「遠い」などの理由でレースから遠ざかってしまった人は少なくないと思う。僕も以前はサーキット大好き人間だったが、今ではレーシングスーツは押し入れの肥やし(?)状態。そんなこんなですっかりメタボ症候群になってしまった。ちなみに体重の増加は、カートドライバーにとって致命的である。だが、そんなことは重要じゃない。レースは参加することにも意義があるはずなのだ。
不肖ソミヤ、30代半ば。今さらプロレーサーを目指そうなどと考えるはずはなく、運転がうまくなって女の子にモテようなどとも思わない。そんな野望も下心もない身にとって、テンションが上がりっぱなしとなる日曜日のサーキットの楽しさ、すがすがしさと言ったら、スポーツジムの比じゃない。しかも周りには同じ趣味を語らいあえる仲間たちがいる。真夏のレースは、身体だけでなく、心まで若返った気にさせてくれるワンダーランドなのだ。
限界にどこまで近づけるか
カートでは、ヒール&トゥなどといった特別なテクニックはいらない。ABSやESPはおろか、パワステもブレーキサーボさえ付いていない。純粋に右足のアクセルと左足のブレーキを操り、それにステアリング操作と荷重コントロールを交えてマシンをコントロールする。サスペンションも付いていないため、マシンの動きは至極ダイレクト。そんなマシンで100km/hを超えるスピードからノーブレーキでコーナーに突っ込む。そんなとき必要なのは、機械工学や運動力学の知識云々より、「エイヤー!」の掛け声ひとつだったりする。
いやいや、カートが原始的な乗り物だと言いたいのではない。マシンを操っている感覚を乗用車以上に濃密に感じられるところが魅力だと思うのだ。だからスピードを感じられる直線も気持ちいいが、それよりも楽しいのは、自分の腕が試されるコーナー。直線ではマシンの性能より自分の腕が上回っているように感じられるけれど(だってアクセル全開だもん)、コーナーでは形勢が逆転し、マシンの限界に自分がどこまで近づけるかが試される。
といって、熱くなってしまってはタイムは伸びない。ライン取りや周囲のマシンとの位置関係などを総合的に判断しながら自分の進むべきルートを割り出すクレーバーさが求められるのだ。もちろん賢いだけでも(多分)ダメで、勢いいっぱい飛び込んでいく心意気も必要だ。
そんな色々な要素がすべてうまくいくなんてことは滅多にないが、そういう奥深いところも含めて、カートは幅広い層の人がその人なりに楽しめる競技だと思う。未経験の人は、ぜひ一度近くのレンタルカート場を訪れてみては? そして来年、K-TAIを戦いましょ〜!
取材協力=本田技研工業/ツインリンクもてぎ
(文=webCG 曽宮/写真=鈴木紳平)

曽宮 岳大
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