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【スペック】全長×全幅×全高=4795×1955×1675mm/ホイールベース=2855mm/車重=2300kg/駆動方式=4WD/4.8リッターV8DOHC32バルブ(405ps/6500rpm、51kgm/3500-5000rpm)/価格=1065万円(テスト車=1291万2500円)

ポルシェ・カイエンGTS(4WD/6MT)【試乗記】

突き抜けた存在感 2008.11.04 試乗記 サトータケシ ポルシェ・カイエンGTS(4WD/6MT)
……1291万2500円
オンロード性能を徹底的に磨いたSUVというのも矛盾があるのでは? 試乗前のそんな疑念は、いざ走り出してみると吹っ飛んだ。
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トンガった靴じゃうまく運転できない

「いったい誰が乗るのよこのクルマ」

「ポルシェ・カイエンGTS」の6段MT(!)をカキンコキンとシフトしながら走っていると、頭の中に巨大な「?」が浮かぶのだった。このクルマをシラっと乗りこなす人は、かなり高いハードルを越えた人だ。

石油の利権で一山当てたロシア人とか、ディスコの用心棒から成り上がったオランダ人総合格闘家か? あるいは、ガレージで古いライトウェイト・スポーツの手入れをする正統派エンスージアストがフライフィッシングのお供に連れていくような気もする。日本人だと誰だろう、ちょっと想像がつかない。

都心ではかなり頻繁にすれ違うので、カイエンにはすっかり慣れっこになっている。けれども、そのディテールをよくよく観察するとカイエンGTSがタダ者ではないことがわかる。

フロントマスクは「カイエン・ターボ」と同じで、ラジエターグリルがガバッと大口を開けるタイプ。これは、「カイエンS」から20psアップした405psを生み出すDFI(ダイレクトフューエルインジェクション)4.8リッターV8を冷やすため。カイエンSのV8ユニットからの変更点は主に吸気システムで、エアをできるだけたくさん、かつスムーズに供給するようチューンされている。

フロントマスクの意匠こそカイエン・ターボと同じだけれど、GTSは14mmほどフェンダーが張り出している。これは、295/35R21サイズのタイヤを装着するカイエンスポーツホイールを収めるためだ。
さらに、車高が低められた。オプションのエアサスペンションを備えた試乗車は、カイエンSより20mm低い。もしコンベンショナルなスチール製サスペンションであれば、24mm低くなっている。

ロー&ワイドなボディに凄みのあるフロントマスク。これだけなら「ゴージャスでスキャンダラスな大人の男を演出するためのアイテム」という見方もできる。カイエンGTSにはティプトロ仕様もラインナップされるけど、試乗したのは6MT。加速しようと思ったら中ブカシを入れないとスムーズにシフトダウンしない。先っちょがトンガった靴じゃ上手くギアを落とせない。


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カイエンGTSには、カイエンの他のモデルではオプションとなるサポート性の高いスポーツシートが標準装備となる。また、カイエン・ターボと同じくインテリアの要所要所にレザーがあしらわれる。
カイエンGTSには、カイエンの他のモデルではオプションとなるサポート性の高いスポーツシートが標準装備となる。また、カイエン・ターボと同じくインテリアの要所要所にレザーがあしらわれる。 拡大
エグゾーストパイプが片側2本出しなのは「カイエン・ターボ」と共通だが、GTSはさらにクローム仕上げが施されるという念の入れよう。
エグゾーストパイプが片側2本出しなのは「カイエン・ターボ」と共通だが、GTSはさらにクローム仕上げが施されるという念の入れよう。 拡大
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スウィートスポットはどこにある?

「Cayenne GTS」と刻まれたぴかぴかに光るドアシルをまたいで乗り込む。ダッシュボードやドアの周囲などにも光沢のあるアルミが使われていて、いたるところがぴかぴかしてる。オーナーの方は晴れがましい気分になるだろうけれど、借り物なもんで少し気恥ずかしい気持ちになる。

踏み応えのある、けれどそのパフォーマンスを思えば特に重くは感じないクラッチを踏み込んで、1速に入れる。スペック表に最大トルク500Nmを3500rpmで発生するとあるように、トルクは強大。アイドリングでクラッチをつないでも、2300kgの車体は苦もなく、堂々と発進する。
一度走り始めてしまえば大トルクの恩恵で市街地だったら3速に入れておけばほとんどの場面で事足りる。だから、「シフトがメンド臭い」と感じることはなかった。

とはいえ、3速がオールマイティに使えるからといって、このクルマをわざわざ“手かき”のシフトで乗る人がそんな運転をするとは思えない。いまではすっかり懐かしい言葉になってしまったけれど、「トルクバンド」を外さないよう、積極的に手足を動かしてカイエンGTSのスウィートスポットを探る。

スウィートスポットはあっけなく見つかった。アクセルペダルをぐいと踏み込むと、4000rpm付近から明らかに排気音の“抜け”がよくなる。胸のすくような加速感は、まごうことなくスポーツカーのそれだ。カイエンSの6MTとステップアップ比は同じながらも、ファイナルをローギアード化したことも、この加速に寄与している。

惜しむらくは、2速へのシフトにやや引っかかりがあることで、1→2とか3→2のリズムが少し悪くなるのがMTファンとしては残念だった。本当に小さな引っかかりなので、個体差か、あるいは調整でいかようにもなるのかもしれない。


ポルシェ・カイエンGTS(4WD/6MT)【試乗記】の画像 拡大
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床面が完璧にフラットであることと、開口部の下端が低いことから意外と(?)使い勝手のいいラゲッジスペース。
写真をクリックするとシートが倒れるさまが見られます。
床面が完璧にフラットであることと、開口部の下端が低いことから意外と(?)使い勝手のいいラゲッジスペース。
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「スポーツ」モードの明らかな効果

乗り心地は、はっきりと硬い。かなりマイルドになった最近の911カレラ系よりもハーシュネスが強いんじゃないかと思える場面すらある。
ただし、電子制御ダンパーシステム「ポルシェ・アクティブサスペンション・マネージメントシステム(PASM)」は有効で、「コンフォート」や「スポーツ」に切り替えると明確に乗り心地が変化する。

ちなみに、カイエンGTSでは「スポーツ」のスイッチを押すとエグゾーストシステムの音質も変化する。「ポルシェってこんなオモチャっぽいことをするんだっけ?」と思わないでもないけれど、「スポーツ」モードの重低音の効いた排気音はたしかに迫力モノだ。
街乗りも悪くはないけれど、「スポーツ」モードに入れて山道でペースを上げた時にこのクルマの一番おいしい部分を味わったような気がした。

ステアリングホイールは路面のコンディションを確実に伝え、いかにも頼りになりそうなブレーキがしっかりと速度を殺す。ヒール&トゥで2速に入れて、コーナー出口でフル加速。すると頭の中が真っ白になるような快音が響き−−。

ワインディングロードで本領を発揮するSUV、ヒール&トゥが似合うSUVというのも面白い。で、冒頭の疑問に立ち返る。このクルマ、一体だれが乗るんでしょう?

ルーフスポイラーは無償のオプションで装着可能。
ルーフスポイラーは無償のオプションで装着可能。 拡大
「カイエン・ターボ」と同様、エアインテーク開口部が拡大されたフロントマスクを持つ「カイエンGTS」。しかもターボよりフェンダーが張り出し、車高も低くなっていることから一種独特の迫力が生まれた。
「カイエン・ターボ」と同様、エアインテーク開口部が拡大されたフロントマスクを持つ「カイエンGTS」。しかもターボよりフェンダーが張り出し、車高も低くなっていることから一種独特の迫力が生まれた。 拡大

MTのカイエンにお乗りの方へ

快足のグランドツアラーとして高い資質を備え、MTさえ苦にしない人なら都市でオシャレに乗ってもいいし、ワインディングでは文字通り飛び道具。まさに万能、なんでもできる。

ま、「なんでも売っているということは、何も売っていないこと」みたいな言い方もあって、1065万円も出すならV6の「フォルクスワーゲン・トゥアレグ」と一番安い「ポルシェ・ボクスター」を買ったほうがいい、という穏当な考え方もあるでしょう。

でも、できることをなんでもかんでもひとつのボディに突っ込んだカイエンGTSのマッドサイエンティスト的なテンパった雰囲気は、エッジが立っている。

しばらく乗れば、このクルマのオーナー像がおぼろげにでも見えてくるかと思ったけれど、無理でした。清原和博とか若かりし日のドクター中松とかいろいろと考えたけれど、結局どんな人が乗るのか、まるで想像できない。

『webCG』読者のみなさん! GTSに限らずマニュアルのカイエンに乗っている方をご存じだったら、どんな人かご一報ください!

(文=サトータケシ/写真=高橋信宏)

テールライトとブレーキライトはLED。ホイールは、カイエンの中で最大となる21インチを履く。タイヤの銘柄はミシュランのLATITUDEスポーツで、サイズは295/35R21。
テールライトとブレーキライトはLED。ホイールは、カイエンの中で最大となる21インチを履く。タイヤの銘柄はミシュランのLATITUDEスポーツで、サイズは295/35R21。
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サトータケシ

サトータケシ

ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。

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