ヤナセ「クラシック メルセデス コレクション」に極上の1台を追加
2008.08.29 自動車ニュースヤナセ「クラシック メルセデス コレクション」に極上の1台を追加
ヤナセは、「クラシック メルセデス コレクション」に「1957年式メルセデス・ベンツ300」を加え、東京世田谷にある「ヤナセメルセデス・ベンツセンター東京」で公開した。
■世界のVIPに愛用された名車
メルセデス・ベンツとの半世紀以上にわたるパートナーシップを結んでいるヤナセでは、世界初のガソリン自動車である「ベンツ パテント モートルヴァーゲン」(レプリカ)ほか、メルセデスと歴史と文化を伝える6台の「クラシック メルセデス コレクション」を所有。「ヤナセ メルセデス・ベンツセンター東京」「ヤナセ 銀座スクエア」などのショールームにて展示公開している。
その「クラシック メルセデス コレクション」に、新たに「1957年式メルセデス・ベンツ300」が加わることになった。2008年8月29日、一般公開に先立ち、東京・世田谷区桜丘にある国内最大級の輸入車ショールーム「ヤナセ メルセデス・ベンツ センター 東京」にて、前オーナーからヤナセへの贈呈セレモニーが行われた。
「メルセデス・ベンツ300」は、1951年に登場した、戦後メルセデス初の大型リムジーネ(セダン)で、その車名はメルセデスの伝統に従いエンジンの排気量が3リッターであることに由来する。コンパクトな「Cクラス」にも3リッターエンジン搭載モデルが存在する今日では「たいしたことない」と思われるかもしれないが、それは大きな誤りである。
全長5055mm、全幅1838mm、全高1600mという堂々たるサイズのボディを持つ「メルセデス・ベンツ300」は、車格でいうなら今日の「Sクラス」以上と言っても過言ではないプレステージモデルだった。実際にローマ教皇ヨハネ23世の専用車、またアデナウワー西独首相の公用車として活躍し、日本の宮内省にも4台が納入されたという、世界のVIPに愛用された名車でなのである。
■新車からワンオーナー
今回、コレクションに加えられた1台も、飛び切りのヒストリーを持つ個体である。1957年にヤナセによって日本に輸入されて以来、ずっと同じオーナーの庇護の下にあったワンオーナー車で、ナンバーはまだ品川や練馬といった陸運支局の所在地名がなかった時代の東京ナンバーである「3 せ 1094」。しかもコンディションはノンレストアのオリジナルながら極上である。
贈呈式の主役である前オーナーは、アパレルや服飾雑貨などを扱う総合卸商社「エトワール海渡」代表取締役社長の海渡二美子氏。厳密にいえば、前オーナーは海渡社長の父君だった。海渡社長によれば、父君がこの「メルセデス・ベンツ300」を購入したのは彼が還暦を過ぎてから。運転が大好きだったという父君は自らステアリングを握り、社用に、そして家族を乗せてのドライブにと愛用したのだという。
10年ほど乗ったところで、周囲に説得されてステアリングは運転手に譲り、自らは後席の住人となったが、後ろから「もっとアクセルを踏め」とか「抜け!」などと指示していたとのこと。そして今から13年前に102歳(!)で天寿を全うするまで、「メルセデス・ベンツ300」以外には目もくれなかったそうだ。
■品のいいところがお気に入り
海渡社長によれば、父君は「メルセデス・ベンツ300」の「チャカチャカしない、品のいいところが気に入っていた」という。これが新車だった1950年代後半といえば、派手なテールフィンの生えたアメリカ車の全盛期。その時代にこのシックなメルセデスを選んだというのは、父君は相当な見識とセンスの持ち主だったに違いない。加えて相当な経済力を持ち合わせていたことは言うまでもないが。
海渡社長ご自身の印象は「乗り心地がよかったですね。もう1台、アメリカのビュイックが家にあったんですが、それはクッションがフワフワしすぎて酔ってしまうんです。ベンツは適度な柔らかさで、快適なドライブが楽しめました」とのことだった。
「きれいに飾っていただいて、父もさぞかし喜んでいるでしょう」と海渡社長が語るこの「1957年式メルセデス・ベンツ300」。しばらくは「ヤナセ メルセデス・ベンツ センター 東京」で展示・公開されている。
(文と写真=田沼 哲)
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