MINIクーパー・クラブマン(FF/6AT)【ブリーフテスト】
MINIクーパー・クラブマン(FF/6AT) 2008.05.20 試乗記 ……312万5000円総合評価……★★★★
後ろから見ないとソレと気づかない「MINI」のロングバージョン「MINIクラブマン」。後席が広くなっただけでなく、走りや乗り心地にも大きな違いがあった。
ファミリーのために
真正面から見ると、ルーフ両端に“角”(つの)があるくらいで、ハッチバックと区別するのが難しい「MINIクラブマン」。しかし、横や後ろにまわると違いは歴然。胴長のプロポーションや観音開きのリアドアなど、懐かしのモーリス・ミニ・トラベラーやオースチン・ミニ・カントリーマンの血統というのがよくわかるユニークなデザインが特徴である。
それだけではただの胴長MINIで済まされそうだが、ボディ右側にも観音開きの“クラブドア”を設けたのがこのクルマの(商売)上手なところ。「これなら後席の乗り降りも便利ですよ!」とアピールされたら、これから家族が増えるからと“卒業”を迫られている若いMINIオーナーや、ファミリーのためにMINIを諦めていた心優しいオトーサンのハートを揺さぶること間違いなし。
そんなマーケティングの巧さもさることながら、実際に運転してみると、少し大人びた性格が快適さを生み、それでいて威勢の良さを忘れていないのが実に絶妙。4m以下に収まる全長は扱いやすく、1.6リッターエンジンは低燃費が期待できるなど、コンパクトカーならではの魅力も十分だ。個性的で元気なファミリーカーがほしいという人にはオススメの一台。そういう私も、すっかりその気になっているオトーサンのひとりである。
【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
「MINI」のストレッチバージョンとして、2007年の東京モーターショーでお披露目され、2008年3月2日の「ミニの日」にデビュー。
ハッチバックモデルより全長を240mm、ホイールベースを80mm延長した、いわゆるシューティングブレイクの形状をもつ。後席への乗降がしやすいと謳われる観音開きの「クラブドア」が右側に備わる。左サイドは通常の一枚ドア。荷室へのアクセスも左右に観音開きする「スプリットドア」が採用される。
ラインナップは、1.6リッター(120ps、16.3kgm)の「クーパー」と、同ターボ(175ps、24.5kgm)の「クーパーS」の2種類。それぞれに6段ATと6段MTが用意される。
(グレード概要)
テスト車はNAの「クーパー」。外観上は、ハッチバッグ同様、ボンネットのエアスクープの有無や、マフラーエンドの形状などが識別点。
分割可倒式リアシートや、ヒーター付きの電動格納式ドアミラー、リモートコントロールキー、ヒーター付きリアウィンドウなどが標準装備される。
安全面でも、前席サイドエアバッグ&ヘッドエアバッグ、 ダイナミック・スタビリティ・コントロール(DSC)が備わる。
タイヤは、クーパーSより1インチ小さい175/65R15タイヤを装着する。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
運転席に陣取ると、ハッチバックと変わらぬ眺め。それもそのはず、MINIクラブマンのインテリアは、フロントからBピラーまではハッチバックと共通なのだ。当然、インパネ中央にはMINIならではの、大きくて丸いスピードメーターが収まり、機能性はさておき、楽しい気分にしてくれる。
インテリアのカラーや加飾パネルの素材などを好みで選べるのもMINIの特徴。MINIクラブマンでは、ボディカラーとしても用意される“ホットチョコレート”なる茶色が選択肢に加わったのが新しい。
気になったのは、エアコンやオーディオのスイッチ類がおもちゃっぽいプラスチックで、せっかくの雰囲気に水を差している点。また、細かいことだが、いまどきのクルマだけに、「iPod」用のインターフェースがアクセサリーで用意されるのはいいが、5万1450円の定価は高すぎないか? 私なら車両の「AUX IN」端子接続でガマンするけど。
(前席)……★★★
座った瞬間、シートバックがややペタっとした感触だったが、落ち着くと案外フィット感のいいスタンダードシート。サイドサポートは控えめで、窮屈さはない。スライド、リクライン、リフトはすべて手動だが、このクラスなら問題なし。ステアリングもチルトとテレスコピックが付くのでポジション調整も困らないが、ランバーサポートはほしいところ。
ハッチバック同様、回転計のみステアリングコラム上に設けられ、その小窓にスピードを表示できるのは便利だ。ルームミラーを覗くとリアドアのピラーが後方視界の邪魔になる。もう少しスリムだとありがたい。
(後席)……★★★★
後席の乗員が大人だと面倒な気もするが、反対に子供なら運転席の大人がアシストするまで勝手に降りることがないので安心である。本来、助手席側にあるべきクラブドアが、右ハンドルでは運転席側となるが、駐車場での乗り降りなら問題ないし、路上でもドライバーが注意を払えばいいだけの話。個人的には、運転席側にあってよかったと思うくらいだ。乗り降りの際、運転席を動かす必要もないし。カチッと閉まる感じは頼もしく、ボディ剛性も十分高い。
ハッチバックに比べてホイールベースが80mm延びたおかげで、レッグルームに余裕が生まれた。天井がうまく抉られているのでヘッドルームも十分。乗り心地も快適なほうだが、横の窓が開かないのはわが家の子供たちには不評だった。リクライニングは2段階で、起こすとシートバックが立ちすぎてしまう。あくまで荷室を広げるための設定である。
(荷室)……★★★
ステーションワゴンみたいなエクステリアデザインを持つMINIクラブマンだが、広いラゲッジスペースを期待すると、肩透かしを食らうかもしれない。たしかにベーシックMINIに比べると奥行きは15cmほど増えているが、全長4m弱のハッチバックとして見れば、驚くほどの広さではない。リアシートを倒せば荷室は広がるものの、フロアの段差をなくすにはオプションの「フラット・フロア」が必要だ。
観音開きのリアドアは、跳ね上げ式に比べると操作が面倒に思えるが、デザイン上の特徴なので致し方ない。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
MINIクーパー・クラブマンには、ハッチバックのMINIクーパーと同じ、1.6リッターの自然吸気ユニットが搭載される。ハッチバックに較べて約60kg重量が増しているものの、遅いという感じはなく、サイズに見合った性能といえる。
エンジンは発進時から不足のないトルクを発生し、2500rpmあたりから力強さが増してくる。ある程度回転が上がっていればアクセル操作に対するレスポンスもいい。ただ、燃費指向の6ATは比較的早めにシフトアップ、1500rpmあたりで街なかを流しているようなときに軽くアクセルを踏み増す場合に反応が鈍い。マニュアルモードでシフトダウンしてやれば不満はない。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
胴長MINIの美点は後席の居住性アップだけではない。乗り心地がいいのだ。旧型に比べると現行型の乗り心地は大きく向上したが、このMINIクラブマンではさらにフラットでマイルドな乗り心地になった。首都高の目地段差を通過する際のショックも十分許容できるレベル。試乗車にはオプションの16インチ(ランフラット)が装着されていたが、これが標準の15インチ(非ランフラット)なら、低速域でさらに快適に違いない。
マイルドになったぶん、自慢の「ゴーカート・フィーリング」は薄まったものの、それでもきびきびとした動きは健在だ。つまり、乗り心地とハンドリングが高いレベルでバランスされているというわけで、街乗りからワインディングロード、そして、ロングドライブまで、あらゆるシーンで気持ちよく走れるのがうれしい。
(写真=高橋信宏)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2008年3月25日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2008年型
テスト車の走行距離:3253km
タイヤ:(前)195/55R16(後)同じ(GOODYEAR Excellence)
オプション装備:ブリッジスポークアロイホイール16インチ(14万円)/クロームラインエクステリア(2万円)/カラーライン(ダークグレー/2万8000円)/インテリアサーフェスフルードシルバー(3万5000円)/フラットフロア(3万2000円)
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(5):山岳路(3)
テスト距離:363.7km
使用燃料:29.92リッター
参考燃費:12.15km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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