約200台のサソリが集結! 「アバルトデイズ2020」の会場から
2020.11.12 画像・写真FCAジャパンは、2020年11月7日、イタリアのスポーツカーブランド、アバルトのオーナーイベント「ABARTH DAYS 2020」(以下、アバルトデイズ)を開催した。
今年は新型コロナウイルス感染症の影響もあり、さまざまなイベントが中止に。もちろんそれは自動車関連でも同様だ。しかしながら、最近では多くの人々が感染予防に協力。会場での検温や健康状態申告書の記入などに前向きに応じるようになったことから、来場者を集うかたちのイベントも少しずつ行われるようになってきた。
こうした状況を踏まえ、アバルトデイズも規模や参加台数を大幅に縮小しつつ開催を決定。事前申し込みと抽選によって参加者を絞り、かつ車内からのコンテンツ参加を基本とするドライブインシアター形式のイベントとして行われた。当日、全国各地から集結したアバルト車は約200台。イベントスタートは14時だが、参加者たちにゆっくり会場入りしてもらうべく、ゲートオープンは10時半に設定された。
メインステージでは「アバルト595」の限定車「595スコルピオーネオーロ」の日本初公開に加え、自動車ライターの嶋田智之氏やアバルトドライビングイベントのインストラクターを務める石川沙織選手によるトークショーを実施。世界的に活躍するマジシャン、セロのマジックショーも会場を盛り上げた。
とはいえ、“三密”を避けるために車内からのコンテンツ鑑賞が基本となった今回のイベントは、例年のようなオーナー同士の交流が見られなかったことから、取材していて寂しさが感じられた。来年こそ、自由な交流が楽しめるイベントが開催できることを願わずにはいられなかった。
(文と写真=大音安弘)
-
1/30今年の「アバルトデイズ」は神奈川県大磯町の大磯ロングビーチ駐車場にて開催。参加台数は200台に絞られ、“三密”を避けるべく、基本的には車内からステージイベントを楽しむかたちとなった。
-
2/3014時よりスタートしたイベントの冒頭では、日本初公開となる限定車「アバルト595スコルピオーネオーロ」が、マジシャンのセロによるド派手な演出でお披露目された。
-
3/30アンベールされた限定車の中からは、FCAジャパンのティツィアナ・アランプレセ マーケティング本部長が登場。主催者を代表して、全国各地から集まったアバルトオーナーたちを歓迎した。
-
4/30限定車「アバルト595スコルピオーネオーロ」は、1970年代の「アウトビアンキA112」の限定車「タルガ オーロ」をモチーフとしたもので、ブラックのボディーに、ゴールドのアクセントを取り入れたものだ。世界限定2000台のうち、200台が日本に導入される。
-
5/30トークショーには、自動車ライターの嶋田智之氏とプロドリフトドライバーの石川沙織選手に加え、スーパー耐久シリーズに「アバルト695アセットコルサ」で参戦した経験を持つ蘇武喜和選手も飛び入り参加。アバルトトークに花を咲かせた。
-
アバルト の中古車webCG中古車検索
-
6/30セロは来場者のスマートフォンの電卓を使い、ランダムに選んだ参加者に誕生日など自身にまつわる数字を尋ね、計算を重ねていくマジックを披露。その計算の答えとして最終的に現れたのは、「1,107,205,951,552」。一見ただの数字の羅列にしか思えないが、セロはこれが「“11月7日”の“(20)20年”、“595”がたくさん集まるイベントが開催されている今の時間!」と解説。その時、時刻はまさに15時52分だった。この結果に、参加者たちは度肝を抜かれていた。
-
7/30会場内にはアバルトミュージアムも開設。“三密”を避けるために入場者数を限定しての見学となった。写真は、ミュージアム会場の前に展示された「フィアット・アバルト595ベルリーナ」(1964年、左)と「フィアット・アバルト695SSベルリーナ アセット コルサ」(1969年、右)。
-
8/30アバルトミュージアムでは極めて珍しい車両も展示。その一台が「チシタリア202クーペ」だ。チシタリアは、第2次世界大戦後に創業されたイタリアのスポーツカーメーカーで、エンジンにはフィアット製を採用。展示車はリアタイヤのスパッツが外されていた。
-
9/30「フィアット・アバルト131ラリー」(1976年)。世界ラリー選手権(WRC)に参戦するマシンとして、1976年のジュネーブショーでデビュー。「フィアット131」をベースにアバルトチューンのエンジンの搭載、リアサスペンションの変更、アルミやFRP製のボディーパネルによる軽量化などといった改良が施されていた。その高い実力は、1977年、1978年、1980年という3度のワールドチャンピオン獲得が証明している。
-
10/30「フィアット・アバルト850TCベルリーナ」(1963年)。「フィアット600」をベースとしたモデルで、排気量を633ccから847ccまで拡大。エンジン内部にも鍛造クランクシャフトをはじめとした強化パーツが採用された。圧縮比も高められており、最高出力は52HP、最高速度は140km/hを記録した。このため、足まわりやブレーキもその動力性能に見合うものにアップデートされている。アバルトのツーリングカーではおなじみの、エンジンフードを持ち上げて固定できる構造も、このモデルから採用された。
-
11/30「フィアット・アバルト1000TCラディアーレ ベルリーナ コルサ」(1969年)。「フィアット600」をベースに開発されたアバルトで、「850TC」より排気量の大きい982ccのエンジンを搭載する。車名の“コルサ”はレーシングバージョンを意味しており、競技向けにより性能が高められていた。ちなみに、リアのフードは標準で90°の開口状態で固定できる仕様となる。ファンからは「1000TCR」の愛称で親しまれる一台だ。
-
12/30「フィアット・アバルト1000TCラディアーレ ベルリーナ コルサ」(1970年)。1970年仕様のTCRは、軽量化に加えエンジン性能の向上も図られており、最高速度が215km/hにアップしている。この翌年にあたる1971年に、アバルト社はフィアットに吸収され、同社の一部門としてスポーツモデルの開発に従事することになる。
-
13/30「フィアット・アバルト1000ビアルベーロGTロングノーズ」(1962年)。982ccのツインカムエンジンを搭載したアバルト製GTレースカーの最終進化形。高いパフォーマンスと美しいスタイルを併せ持つファン憧れの一台だ。最高出力104HP、最高速度218km/hを誇る。
-
14/30「フィアット・アバルト1000ビアルベーロGT」(1963年)。1962年のパリサロンでデビューしたビアルベーロGTの改良型モデル。リアテールがはね上がった“ダックテール”と呼ばれるデザインが特徴。同時にエンジン性能の向上も図られ、オーバー100HPとなる最高出力102HPを実現。これにより最高速度が210km/hに達した。
-
15/30「フィアット・アバルト1000SPバルケッタ チュボラーレ」(1965年)。鋼管スペースフレームを持つアバルトのレーシングマシン。徹底した軽量化により、車両重量はわずか480kgしかない。982ccのツインカムエンジンは最高出力105HPを発生し、最高速度は230km/hを誇った。
-
16/30「フィアット・アバルト850レコードモンツァ ザガート」(1962年)。現在、アバルトのオプションとして用意されるハイパフォーマンスエキゾーストシステム「レコードモンツァ」の名前は、同車に由来する。「フィアット600」をベースに、ザガートが手がけた軽量なアルミボディーを架装。そのため、車両重量は540kgと軽かった。“レコードモンツァ”の名は、伊モンツァでの最高速度記録樹立を記念してつけられたものだ。
-
17/30「フィアット・アバルト124ラリー」(1974年)。フィアットのオープンカー「124スポルト スパイダー」をベースに生まれたラリーマシン。ベース車とは異なる足まわりを持ち、軽量化のためバンパーレスとなるのも特徴だ。グループ4規定のラリーなどで活躍した。
-
18/30「ランチア037ラリー」は、グループB規定となったWRCを戦うためにアバルトが仕立てたマシンだ。スーパーカーのようなスタイルは、他のアバルトとは一線を画す存在感である。2リッター直列4気筒DOHCエンジンにスーパーチャージャーを搭載し、ストラダーレは最高出力205PSを発生した。
-
19/30貴重なクラシック・アバルトのみが展示される「アバルトミュージアム」。今回は、室内には“レーシングアバルト”、屋外には公道やラリーで活躍したモデルを展示していた。
-
20/30アバルトが大集結する「アバルトデイズ」。参加車両の中心は「500」や「595」「695」などの“500シリーズ”だ。そこで前期型(写真向かって左)と後期型(同右。実質的に、アバルト500が595のベースグレード扱いとなって以降のモデル)のマスクの違いをチェックしてみた。イメージは同じだが、エアダクトのサイズやポジションランプ、ブラックアウトされるインテークまわりのデザインなどが異なることが分かる。
-
21/30「アバルト500」シリーズのデザインの変化を、リアからも確認。違いとしては、テールランプの意匠や、リアバンパーに新設されたバックランプとフォグランプなどが挙げられる。
-
22/30「アバルト695 70°アニヴェルサーリオ」は、昨年の「アバルトデイズ2019」で日本初公開された限定車だ。アバルトの誕生70周年を記念したモデルで、特徴的なグリーンのカラーリングと調整可能なリアスポイラーが特徴。世界限定1949台のうち、日本には200台が導入された。
-
23/30前期型の「アバルト500」シリーズで最も有名な限定車といえば「アバルト695トリブート フェラーリ」だろう。その名が示すように、フェラーリとのコラボレーションモデルで、当時のシリーズ最強スペックが与えられた。赤いボディーの印象が強いが、イエロー、ブルー、グレーも設定。東日本大震災の復興支援のため、後にホワイトのモデルも日本限定で販売されている。
-
24/30「アバルト695Cリヴァーレ」は2018年に導入された限定車で、高級ボートメーカー、リーヴァとのコラボレーションモデルだ。ブルーとグレーのツートンカラーや、インテリアのマホガニーウッドパネルなどが特徴。日本仕様はクローズドトップとキャンバストップの2タイプで、トランスミッションはともにシングルクラッチ式ATのみであった。
-
25/30こちらは「アバルト・プント エヴォ」。2007年に新生アバルトの復活を告げ、「グランデプント」「プント エヴォ」「プント」と車名を変えつつラインナップされた“アバルト・プント”シリーズだが、今回の参加台数はたった1台のみだった。広い車内と快適な乗り心地を備えるため、長距離移動にも最適。近年のアバルトでは最も万能な一台だ。
-
26/302020年での販売終了が宣言された「アバルト124スパイダー」。参加台数こそ少ないが、複数台が集うのは「アバルトデイズ」ならでは。現行のアバルトで唯一の後輪駆動モデルが失われてしまうのは残念。欲しい人は、ラストチャンスをお見逃しなく。
-
27/30当日の天候はくもりがちで、遠くに臨む箱根の山はどうやら雨模様。海沿いに位置する大磯ロングビーチの空にも、せわしなく動く雲が見られたものの、会場内を吹く風は比較的穏やかで、イベント日和だった。
-
28/30イベント恒例の集合写真は、ソーシャルディスタンスを保つかたちで実施。基本的には、オーナーが愛車に寄りそっての撮影となった。
-
29/30セロによるマジックショーの後は、閉会式へ。この日、「アバルト124スパイダー」が終売となることや、FCAジャパンが確保している最後の一台をオンラインでのチャリティーオークションにかけることが、正式に発表された。
-
30/30イベントのフィナーレには、参加車が一斉にエンジンを始動。アバルトサウンドが会場にとどろいた。新たな取り組みを交えつつ、無事開催にこぎ着けたアバルトデイズ。今年は自動車イベントが激減しているだけに、参加者たちも大いに楽しんだようだ。それでも来年のアバルドデイズは、参加者同士が気軽に交流を楽しめる環境に戻っていてほしいと願わずにはいられなかった。