新型「スバルBRZ GT300」シェイクダウンイベントの会場から
2021.02.24 画像・写真2021年2月22日、スバルのモータースポーツ統括会社であるスバルテクニカインターナショナル(STI)は、富士スピードウェイにおいて、2021年シーズンのSUPER GT(GT300クラス)を戦うニューマシン、新型「スバルBRZ GT300」のシェイクダウンを実施した。その様子とマシンのディテールを写真で紹介する。
(文と写真=マリオ高野/編集=関 顕也)
◆関連ニュース:【SUPER GT 2021】スバルとSTIが2021年の参戦体制を発表 新型「スバルBRZ GT300」を投入
-
1/25まずは新型「スバルBRZ GT300」と関係者のフォトセッションから。全体の指揮やマシンのエンジン開発はSTIが、マシン製作やチーム運営はR&D SPORTが担当するという、2009年から続くタッグが今年も継続される。ドライバーは井口卓人/山内英輝のコンビで7シーズン目。鉄壁を誇るチームワークが最大の強みとなっている。2020年シーズンで存分に発揮した速さと、取り戻した信頼性の高さを「結果」に結びつけるべく、チームの一体感がさらに高まっていることを感じさせた。
-
2/25新型「BRZ GT300」は、2021年中に国内で発売される市販版の新型「スバルBRZ」をベースとしたボディーを採用。基本のカラーは2020年のマシンにも用いられた「ギャラクティックWRブルーメタリック」で、スバルの伝統的なモータースポーツカラーである「WRブルー」の3世代目にあたる。
-
3/25「レガシィB4 GT300」で3シーズン、初代「BRZ GT300」で9シーズンを戦いながら、エンジン排気量の小ささを補うために磨きぬかれた空力性能を、新型BRZ GT300のフォルムに応用。特徴的なボンネットのエアダクトを大型化しつつ数を増やすことで、車体の先端部から吸い上げた空気を効果的に排出して路面に吸い付かせる効果を高めている。
-
4/25従来型同様、ヘッドランプやテールレンズは市販車と同じパーツを使用。リアフェンダーが短縮されたことで全長が短くなった印象を受けるものの、その全長や全幅などの寸法は従来型とほとんど変わらない。ダックテール部分のラインは市販車の新型「BRZ」と同じで、市販車が狙ったダウンフォースをさらに生かすためのフィンやディフューザーが追加されている。
-
5/25レギュレーションに従い、従来型と同様、ドア開口部まわりのパネルは市販車の新型「BRZ」と同じものを使用している。フロントノーズやサイドシル部分の形状も市販モデルのフォルムを再現。ブラックの配色は走行中の躍動感を一段と高め、なおかつ止まっていても疾走しているように見える効果をもたらす。
-
スバル BRZ の中古車webCG中古車検索
-
6/25パイプフレーム構造をはじめ、マシンの基礎的な構成は従来型と同じながら、4シーズンぶりに全面刷新。ドライサンプ用のオイルタンクの位置など、従来型では変更が難しかった箇所の問題点の解消を重ね、重量配分や慣性モーメントの改善が図られた。新型も、コーナリングの速さを最大の武器とする方向性でまとめられている。リアウイングのサイドに見られるSTIカラーのチェリーレッドの部分は、面積が拡大されている。
-
7/25特徴的なボンネットのセンターストライプにより、ブルー系のマシンが増えたGT300クラスの中でも視覚的に識別しやすくなった新型「スバルBRZ GT300」。存在感をさらに強めることを狙ったという。レース本番ではスポンサーのロゴマークも貼られる。
-
8/25今回は、フルモデルチェンジながらも基本構造は変えず、マシン全体としては細部の変更を地道に重ねたことでパフォーマンスアップを図った。マシンに大きな変更を施したシーズンは苦戦する傾向にあったが、ボディーを刷新するほどの大変更を施しながらも、チームは現状で発生する問題点を正確に把握できているという。このことからも、過去の苦い経験がしっかり生かされていることを実感させられる。
-
9/25新型のボディーデザインは、GT300クラスを識別させるイエローのヘッドライトがさらに際立つ印象を与える。取材当日は、路面温度が三十数度まで上がるほどの、2月の富士とは思えない暖かい気候に恵まれ、シェイクダウンながら良好な走行テストが実施できた。開幕までに、さらに2回の走行テストが実施される予定だ。
-
10/25機材などを搭載するトレーラーも全面刷新された。スバルのデザイン部の若手によるデザインで、中央部分に配置した「Proud of BOXER」は、体の内部に宿るボクサーエンジンの魂を表現したもの。荷室にもエアコンが備わるなど、スタッフの快適性も向上している。
-
11/25次世代エンジン待望論もあるなか、搭載されるパワーユニットはEJ20型を踏襲。STIの威信をかけて細部を見直し、2020年シーズンに持ち前の信頼性の高さを回復した。アクセル開度やレスポンスの向上などによりコーナリングからの立ち上がりが鋭くなり、富士スピードウェイの直線でも大排気量のライバル車に後れを取ることがなくなっている。EJ20型エンジンは、基本設計こそ30年前のものだが、技術革新もあり、レーシングカー用ユニットとしての潜在的な性能はまだ枯渇していない。
-
12/25ブレーキシステムはAPレーシング製のものを継続して使用。車体のバランス向上により、よりアクティブなブレーキ操作に応えられるようになった。レース中のブレーキングポイントも観戦時の注目点となる。
-
13/25ダンロップタイヤの採用は7シーズン目となった。2020年シーズンはタイヤ選択の成功率が高くなり、データや知見の蓄積が強みになりつつある。ホイールはBBS製の「RI-A」を踏襲。なお、市販のRI-AにもGTマシンで得られたノウハウがフィードバックされている。フロントフェンダー前方(写真では右側)に見られる黒い縁取りは、カラーデザインではなく空力パーツの一種。
-
14/25コックピットまわりは、ドライバーの操作性や快適性を高める方向で細部が変更されている。ステアリングホイールのセンター上部に貼られた「?????????」の文字は、レース本番ではチーフメカニック宍戸克幸氏からの熱いメッセージに変わる。
-
15/25シートには、身長の異なるドライバーそれぞれがより適切なポジションをとりやすくなる工夫が施された。ドライバーが座ると着座位置がやや後退しているように見えるのだが、それはドライビングポジションの適切化によるもの。
-
16/25ニューマシンは整備性も向上し、ピットワークのさらなる高精度化が期待できる。また、リアサスが浮き上がるのを抑える“サードダンパー”の取り付け位置も変更。これまではわずかに左寄りだったのを車体中央へと改め、車体バランスやブレーキング時の安定性をさらに高めた。
-
17/25ボディーの刷新はリスクもあり、今後は予期せぬ問題も発生するはずだ。圧倒的な速さを度々見せつけた2020年マシンは完成度が高く、ドライバーも慣れ親しんでいたことを思うと、今回の変更は惜しまれるような気もする。しかしドライバーは、「去年までのマシンは安心感があるけれど、さらによくするのは難しいかもしれないし、常に新しく変えていくことのほうが大事です」と語るなど、新型への移行を全面的に歓迎していた。
-
18/25チームの華であるレーククイーンユニット「BREEZE」の2021年メンバーも発表された。左から、津田知美さん、須藤セリナさん、あやきいくさん、平野杏梨さん。新人の須藤セリナさんを除く3人が3シーズン目を迎えるのは、BREEZE史上初。今や、チームやファンとの一体感は最強だ。
-
19/25デザイン全体の指揮をとった、スバルのデザイン部の河内 敦さん。スバルはデザイン部も「走り」を最重視する伝統があり、デザインの根幹には必ず走りのよさをイメージさせる思想が込められている。今回抜てきした若手社員たちにもそれを訓示したという。
-
20/25カラーコーディネートを担当したのはデザイン部の若手女性社員。若い感性を発揮させることを期待しての大抜てきに見事に応えた。市販車の新型「BRZ」のカラーも担当しているというから、その発売が楽しみだ。
-
21/25シェイクダウンのライブ配信でMCを務めたレースアナウンサーのピエール北川さん。SUPER GTという競技に精通した豊富な知識とトーク術は圧巻だった。もちろん、基本的には公平な立場でレースを盛り上げるが、長年苦労を続けてきたスバルチームへの思い入れも強い。
-
22/252013年から「スバルBRZ GT300」に乗り続ける井口卓人選手。従来型で一番好きだったのはデザインだというが、新型はさらに印象が良くなり、すでにゾッコンの様子。自身が得意とする富士スピードウェイのおけるマシンの戦闘力向上がかなえば、シーズン序盤からポイントランキングをリードし続けるという展開が期待できる。
-
23/252015年から井口選手とコンビを組む山内英輝選手。2020年はドライバーとしての技量の高さを見せつけ、圧巻の走りでファンを魅了した。今シーズンはポールポジションの複数回獲得も狙う。2013年の「BRZ GT300」が記録した年間5回の更新も現実味を帯びている。2021年4月には第1子が誕生することもあり、さらなる熱い走りを見せてくれるはずだ。
-
24/252020年からSTIに復帰し、エンジン開発を担当してきた小澤正弘氏。期待通りエンジンの信頼性を取り戻すなど、その手腕を発揮した。今シーズンからは総監督となり、チーム全体の指揮をとる。ニュルブルクリンク24時間耐久レースでも監督としてチームを勝利に導くなど経験や実績も豊富だ。なお前任の渋谷 真氏は、アドバイザー的な役割で、全戦でチームに帯同する。
-
25/25新しくなったボディーの空力特性とサスペンションセッティングを完璧に合わせ込むのは簡単なことではないが、積み重ねられた経験値により、新型「スバルBRZ GT300」はシーズン序盤から狙い通りのポテンシャルを発揮する可能性が十分ある。今シーズンのGT300クラスで大注目マシンのひとつだ。