ヒストリックカーレース「2021冬 フェスティバル・オブ・サイドウェイ・トロフィー」の会場から
2021.12.01 画像・写真2021年11月28日、千葉県袖ケ浦市の袖ケ浦フォレストレースウェイで、「2021冬 フェスティバル・オブ・サイドウェイ・トロフィー」が開かれた。2012年11月から毎年春と秋に開催されている(昨2020年春は新型コロナ禍により中止)このイベントは、ヒストリックカーレースの本場、イギリスのイベントを範とする四輪、三輪(サイドカー)および二輪の旧車レースである。
レースとはいえ、順位やラップタイムだけにとらわれることなく、エントラントからギャラリーまで、会場に集うすべての人間が往年のスタイルを意識することで、あたかもタイムスリップしてしまったかのような雰囲気を醸し出すことを目的としている。参加資格は原則として1969年までに製造されたモデル(継続生産車含む)で、オリジナルの持ち味を壊すような改造は認めず、使用可能なタイヤはダンロップ製バイアスレーシングタイヤのみと規定されている。
今回の四輪プログラムは「ティントップ・カップ」(ツーリングカー)および「エバーグリーン・カップ」(スポーツカー)という各10周のスプリントレースと「セブリング40mトロフィー」と題されたツーリングカー/スポーツカーによる40分耐久レース、そして「RACメモリアルラン」と呼ばれるパレード(走行会)というおなじみのもの。終日好天に恵まれ、参加者の素晴らしいマナーのおかげでアクシデントやトラブルもなく、安全かつスムーズにプログラムが進行した会場から、出走車両を中心に紹介しよう。
(文と写真=沼田 亨)
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1/40当日は青空が澄み切って雲ひとつなく、風もほとんどないという最高のイベント日和に恵まれた。
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2/40早朝のピット風景。
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3/40同じく二輪が並んだピット風景。
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4/40グリッドガールが並び、バグパイプが鳴り響く開会式。
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5/40最初に行われる四輪レースの決勝は「セブリング40mトロフィー」。量産サルーンとスポーツカーによる、ドライバー交代義務のある40分耐久レースである。スターティンググリッドには、13台が並んだ。
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6/40「セブリング40mトロフィー」は、第2ドライバーがマシンに乗る第1ドライバーに駆け寄り、タッチしてから発進する変則ルマン式スタートを採用。
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7/40主催者が設定したハンディキャップが与えられる「セブリング40mトロフィー」を制したのは、俗称“カニ目”こと1959年「オースチン・ヒーレー・スプライトMk1」。ステアリングを握っている第2ドライバーは、かつてピニンファリーナに在籍し、「エンツォ・フェラーリ」などを手がけたことで知られる工業デザイナーのケン奥山氏。
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8/40ファステストラップをたたき出しながらもハンディキャップにより2位となった1964年「ジャガーEタイプ」。
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9/406位に入った1963年「コルチナ・ロータスMk1 Sr1」。もう1台出走した「Mk1 Sr2」は8位だった。
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10/401968年「アルファ・ロメオ・ジュリア スプリント ヴェローチェ」の第2ドライバーは篠田康雄氏。40年をさかのぼる1981年に「RSオリジナルホイール ファルコン」を駆り、鈴鹿と筑波、双方のFL550のシリーズチャンピオンに輝いた方である。
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11/40中盤で争う1969年「ポルシェ911」と1960年「オースチン・ヒーレー3000」、1965年「コルチナ・ロータス Mk1 Sr2」。
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12/40ドライバー交代のピットインの際は、2分間の停止が義務づけられている。
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13/40「セブリング40mトロフィー」終了後、コース上での暫定表彰。2位表彰台左側のヒゲ姿には見覚えが……なんと1985、86年の全日本ツーリングカー選手権連覇をはじめ1980~90年代に国内外のレースで活躍した長坂尚樹氏だった。そして3位表彰台の右側は、1980年から始まったFJ1600の初代チャンピオンである坂本典正氏。並の草レースじゃないのである。
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14/40ツーリングカーによる「ティントップ・カップ」決勝のスターティンググリッドに向かうグリッドガール。
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15/40グリッド後方からの眺め。
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16/4014台が出走した「ティントップ・カップ」で、2位に24秒以上の差をつけてポールトゥフィニッシュを飾った1967年「アルファ・ロメオ1300GTジュニア」。ちなみに(クラス3なので)車名は1300だが2リッターエンジンを搭載している。
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17/402位に入った「オースチンMiniクーパー」……ではなく1959年「オースチン・セブン」(標準型Miniの最初期型)。エンジンはノーマルの850ccに対して994ccとのことだが、それでも「ティントイ・カップ」の出走車両中最小。それでこの成績は、お見事というほかない。
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18/403位となった1970年「BMW 2002」。ドイツ車はこれと先述した「ポルシェ911」の2台のみだった。
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19/406位に入った1964年「ジャガー・マーク2」。ヒストリックカーレースではおなじみのマシン。
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20/4010位争いをする1966年「ヒルマン・インプ スーパー」と1956年「アルファ・ロメオ・ジュリエッタ ベルリーナ」、1967年「モーリスMiniクーパーMk2」。
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21/40「ティントップ・カップ」決勝の暫定表彰。入賞者にはグリッドガールからレイに加えてハグのプレゼントが。2位の方は、もらえなかったわけじゃありません。
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22/40最後のレースとなる、スポーツカー16台が出走した「エバーグリーン・カップ」のスターティンググリッド。スタート前にコース上でバグパイプが演奏される。
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23/40このレースで過去何度も繰り返されてきた関口好夫氏の1966年「ロータス26R(レーシングエラン)」と田中宏昌氏の1965年「ロータス・エランS2」による、“緑のエラン”と“赤のエラン”のトップ争い。今回はポールからスタートした緑が徐々に赤との差を広げていったので、8周目(レースは全10周)ぐらいで「もう決まりだな」と思った筆者はコースに背を向け、暫定表彰が行われるホームストレートに向かって歩き始めた……。
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24/40ところが、興奮した口調の実況が聞こえてきたのでコースを振り向いたところ、5、6、7コーナーのアウト側から赤が緑を抜きにかかっていた。あわてて撮ったので、ブレているのはご容赦を。
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25/40そのままサイドバイサイドで8コーナーに向かう赤と緑の「エラン」。最終的には緑が3連勝を果たしたが、ファステストラップ(1分19秒111)は赤が取った。
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26/403位は“緑に白ストライプ”の1966年「ロータス・エランS3」。「セブリング40mトロフィー」でも3位に入ったマシンで、ドライバーは坂本典正氏。
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27/404位に入った1963年「オースチン・ヒーレー3000 Mk2」。これまた「セブリング40mトロフィー」でも4位となっており、ドライバーのひとりはこのレースを“緑のエラン”で制した関口氏だった。
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28/40このレースで最小排気量(845cc)ながら6位に食い込んだ1967年「ホンダS800」。もう1台出走したS800は11位だった。
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29/407位となった1969年「モーガン4/4」。ロードクリアランスの高さがひときわ目立つ。
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30/403台の「エラン」が表彰台を独占した「エバーグリーン・カップ」。シャンパンファイトはノンアルコールでも大いに盛り上がった。
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31/40「ヴィンテージ・ツーリストトロフィー」と呼ばれる二輪レースに出走した1967年「ブリヂストン350GTR」改レーサー。1960年代にはモーターサイクルもつくっていたブリヂストンの最終作となる輸出専用車で、日本で初めて「GTR」を名乗ったモデルである。
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32/40「サラブレッド&ゴールデンエラ&プロダクションTT」と題された二輪レースで3位となった1968年「シーリーG50」。2位でフィニッシュしたが、ジャンプスタートペナルティーにより1順位降格となった。
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33/40「サラブレッド&ゴールデンエラ&プロダクションTT」に出走した1928年「ヴェロセットKTT Mk1」。出走車両中最も古いマシンで、350cc単気筒OHVエンジンを積む。
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34/40「フレディ・ディクソン・トロフィー」と題されたサイドカーレースに出走した「グランマ」と名乗るマシン。レーシングサイドカーのパッセンジャーを見るたびに、よくぞこんな恐ろしげなモノに乗れるものだと感心する。
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35/40同乗OKのパレード走行である「RACメモリアルラン」より、1969年「サンビーム・スティレット」。「ティントップ・カップ」に出走した、リアエンジンの大衆車である「ヒルマン・インプ」の、ブランド違いのクーペ版。初代「シボレー・コルベア」を縮小したようなスタイリングを持つ。
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36/40同じくパレード走行より、これもリアエンジンの1965年「日野コンテッサ1300クーペ」。ミケロッティのデザインだが、こちらも「コルベア」の残り香が漂う。
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37/40もう1台、リアエンジンの1968年「ルノー8ゴルディーニ1300」。「MiniクーパーS」などの好敵手としてレース、ラリーで大活躍したフランスの弁当箱。
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38/40グリッドガールを乗せて走る1962年「フォード・ファルコン」。初代「マスタング」のベースにもなった米国フォードのコンパクトカーだが、英国のツーリングカーレースにも「スプリント」と名乗るクーペが出走していた。この個体は、2020年に日本公開された映画『フォードvsフェラーリ』のフォード工場のシーンで、ラインに並べるためにかき集められたうちの1台というからびっくり。
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39/40各レース、クラスの1~3位入賞者に贈られるカップ。
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40/40各レースの入賞者の表彰が終わった後、今回のベスト・オブ・サイドウェイ・トロフィーが贈られたのは、先に紹介した「フォード・ファルコン」のオーナー。「ある意味、英国車よりもイギリスのサーキットにいそうな雰囲気」が評価された。