日産エクストレイル(4WD/CVT)【海外試乗記】
「技術の日産」は死んでいない 2007.07.12 試乗記 日産エクストレイル 2007年3月のジュネーブショーでお披露目された「日産エクストレイル」。オフロード性能を試すべく会場に選ばれたギリシアで、日本発売を前に先行試乗した。支持を離さない、キープコンセプト
新型「日産エクストレイル」の試乗の舞台は、ギリシア・アテネ空港からさらに空路で1時間ほど行ったイオアニアの地。そこから内陸へと分け入り、アルバニア国境近くの山頂の村、パピンゴ村に至るオン/オフ取り混ぜ計200km近くに及んだ道程は、なるほどニューSUVの実力を推し量るにはおあつらえ向きだったといえた。
そこでは新型エクストレイルの実力のほどを、大いに体感することができたのだ。
主力モデル「2.0S(FF)」で200万円という価格や、泥だらけにしても丸ごと水洗いできるインテリアが強いインパクトをもち、日本でヤングユーザーに大人気となったエクストレイル。実は世界167カ国で累計80万台も売れたというワールドカーでもある。その厚い支持を背景に、外観は徹底したキープコンセプトでまとめられている。しかし、随分と落ち着いたように見えるのは、全長が175mm伸ばされるなどサイズが拡大されたせいだろう。
狙いはラゲッジスペースの拡大である。5名乗車時でも容量は479リッターを確保しているが、後席を倒せばなんと1773リッターものスペースが生まれるのだ。しかも新開発のマルチリンク式サスペンションのおかげでフロアはフラット。大抵の遊びのギアは室内に収めることができそうだ。
乗り心地の良さは安心感につながる
水洗いできるインテリアは踏襲。しかも課題だったクオリティは俄然向上している。その一方で意匠は、センターメーターが廃されたのを筆頭にこちらも随分落ち着いたというかフツウになった。
その点がちょっと引っ掛かりながらクルマに乗り込み、イオアニアの街なかへ。
そこでまず感心させられたのは乗り心地である。石畳や決して良好ではない舗装の上でも快適そのもの。サスペンションがしなやかに動き、そして路面をピタリと離さないでいるのを実感できるから、安心感も高いのだ。
ワインディングロードでも気持ちよく走れる。ステアリングは正確性が高く、切ったとおり素直に曲がる。これは強固なボディ剛性に加え、舵角や横Gそしてヨーレートから運転状況を読み取り、後輪にも積極的にトルクを配分してニュートラルステアを志向するオールモード4×4-iとの相乗効果でもある。背丈があるうえ、M+Sタイヤを履くために、コーナリングで攻め込めば腰砕けになるが、オフロードの走破能力を知れば、そこも十分納得できる。
アルバニア国境近くに残されていた未舗装路でもエクストレイルは不安を一切感じさせなかった。深い轍で2輪がいっぺんに浮いても残り2輪はしっかり接地。オールモード4×4-iも力強く、オフロード初心者の運転でも、泥濘だろうと岩場だろうと容易にクリアできたのだ。
汚れたブーツで乗れるのか?
エンジンは日本向けの2.5リッター+CVTも試すことができたが、率直にいえば新開発の2リッターディーゼル+6段ATの組み合わせが一番走りやすかった。最終目的地のパピンゴ村は山頂にあり、麓から急勾配を一気に駆け上がることとなったのだが、豊かな低速トルクのおかげで、それをまったく苦にすることなく、むしろ軽快とすら感じさせてくれたのだ。あいかわらずディーゼルは日本で乗れる可能性が低そうだが、日産の開発陣も本音では「コレがイチオシ」と言いたげだった。
ハイブリッド技術の立ち遅れなどもあって「技術の日産」が揺らいでいるといわれる昨今だが、ボディやサスペンション、エンジンなどクルマの基本部分に関しては、間違いなくここに来て技術、そしてノウハウは底上げが図られている。「技術の日産」はまだ死んでいない。エクストレイルに乗って素直にそう思った。
一方で気になるのは、外観や内装が妙に大人びてしまったことだ。洗えば落ちると解っていても、これだと汚れたブーツのまま乗り込むのは気がひけそう。クオリティアップは上級化や類型化ではなく、より精緻な道具感覚のような方向に繋げてほしかった。これだと若いユーザーの反応が、ちょっと心配だ。
2リッターの廉価グレードでは200万円という価格を何とか維持したいというから、それがアピールの材料になればいいのだが。間違いなく言えるのは、乗ってさえもらえれば、きっと大いに満足させられるクルマだということである。
(文=島下泰久/写真=日産自動車)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】 2026.10.16 欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
NEW
日産キックスX e-4ORCE(前編)
2026.10.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が新型「日産キックス」に試乗。デザインが新しいのはもちろんのこと、まさに下ろしたての最新のパワートレインを搭載。日産の大きな期待を背負ったコンパクトSUVである。箱根のワインディングロードでの印象を聞いた。 -
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。


































