ルノー・メガーヌRS F1チーム リミテッドエディション(FF/6MT)【試乗記】
ドライバーの思いのまま 2007.01.31 試乗記 ルノー・メガーヌRS F1チーム リミテッドエディション(FF/6MT)……379.0万円
2006年10月25日に発売されたルノーの高性能スポーツモデル「メガーヌRS」に、2005年F1チャンピオンシップ獲得を記念したモデルが登場。専用チューニングの限定モデルに試乗した。
30台の限定車
2005、2006年と、F1でコンストラクターとドライバーのダブルタイトルを獲得したルノー。その栄光にあやかったモデルが、日本でも限定30台で発売された。マイナーチェンジを受けた「ルノー・メガーヌ・ルノースポール(RS)」3ドアに用意された、“F1チーム・リミテッドエディション”である。
フランスのナショナルカラー、ブルーに塗られたボディには、F1カラーのストライプやルノーF1チームのロゴが入り、リアクォーターウインドーにはタイトル獲得記念ステッカーも貼られる。
そこに刻まれた年号は2005年だったりするけれど、ブラックアウトされたアルミホイールのおかげもあり、適度に派手で適度に精悍という、このテのクルマを欲するユーザーの心理をうまくつかんだエクステリアとなっている。
インテリアはそれ以上に派手かもしれない。ノーマルのルノースポールではグレーのレザーだったシートが、ブラック&ブルーのファブリックになるからだ。
一方で、旧型「RS」ではオレンジだったシートベルトは、おとなしいシルバーグレーになっている。高回転になるほど数字が大きくなっていくタコメーター、市販車なのに赤いセンターマークが入ったステアリングを含めて、新型「ルーテシアRS」とイメージをそろえたようだ。
サポート性のみならず、座り心地もふつうのメガーヌを上回るゼイタクなフロントシートはいままでどおり。3ドアのRSは日本仕様のメガーヌで唯一左ハンドルとなることも旧型譲りだ。
ふつうのメガーヌとは別次元
最高出力224ps、最大トルク30.6kgmを発生するエンジンも変わっていない。最近のターボエンジンは過給の段つきを抑え、自然吸気っぽさを強調する傾向が強い。だからこそメガーヌRSのエンジンが刺激的に思える。アイドリングでクラッチミートでき、2000rpmあたりでも不満なく走れるフレキシビリティも持つのだが、3000rpm近くでトルクを盛り上げたあと、炸裂するように猛然とダッシュしていくシーンは、ターボ嫌いでさえヤミツキにしてしまう。
ふつうのメガーヌとは別次元の、4気筒らしからぬスムーズな吹け上がりも特徴。ただターボをつけただけではないという、ルノースポールのこだわりの仕事ぶりを感じ取れる。
金属的なエンジンの唸りと低く太い排気音のハーモニーは、偶然にもアライアンス・パートナーのあの「日産スカイラインGT-R」に積まれていた「RB26DETT」を思わせて、ここだけ取り出しても心地よい。
このパワーを受け止める新型RSのシャシーは、昨年20台だけ限定販売された「メガーヌ・トロフィー」の足が標準装備されることが新しい。サスペンションは大幅に締め上げられ、ブレーキディスクはドリルドタイプになり、ホイール・タイヤは17インチから18インチにアップしている。
ステアリングは他のメガーヌと同じ、応答性を高めた改良型になったが、これもトロフィーにはすでに採用されていたものだ。
一体感が味わえる
おかげで乗り心地ははっきり硬くなった。旧型RSはこのクラスの高性能ハッチバックでは例外的にマイルドで、フランス車らしさを感じさせたが、それとは対照的だ。ただよくできたシートのおかげで、ダイレクトなショックは伝わってこない。それにトロフィーと比べると、少しだけアタリが柔らかくなった気がする。
ドリルドディスクのブレーキは、踏んだ瞬間のサーッという摩擦音こそ控えめになったが、強烈な効きはトロフィーそのまま。制動で感動できる数少ない市販車だ。そして反応が鋭くなったステアリングを切ると、スッとコーナーに入っていく。旧型RSで感じたノーズの重さはそこにはない。この身のこなしの素直さは、ひとまわり小さな「ルーテシアRS」を思わせる。
改良型ステアリングとシャシーの相性の良さは、ふつうのメガーヌを上回るように思えた。サイズを忘れさせる一体感が味わえたのである。
立ち上がりでアクセルペダルを大きく踏み込むと、前輪のグリップは簡単にターボパワーに負けてしまう。その状況を的確に読み取り、右足を小刻みに動かして前輪との対話を楽しみながら、強烈な脱出加速へと導いていく。あるいはコーナー中に足の力を抜くことで、リアを回り込ませて車体を一気に出口へと向ける。すべてがドライバーの思いのまま。その意味で、F1を名乗るにふさわしいハッチバックだった。
(文=森口将之/写真=高橋信宏/2007年1月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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