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メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)

都会の星に輝きを 2025.11.10 試乗記 鈴木 真人 2020年に上陸したメルセデス・ベンツの3列シート7人乗りSUV「GLB」も、いよいよモデルライフの最終章に。ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」に追加設定された新グレード「アーバンスターズ」に試乗し、その仕上がりと熟成の走りを確かめた。
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有償オプションを標準装備化

試乗車が「メルセデス・ベンツGLB」だと聞いて、たしか1年前に乗ったのになぜまた? と首をかしげた。前に乗ったのはディーゼルの4WDだったから今度はガソリン車なのかなと思ったら、同じGLB200d 4MATICだという。ただし、その後に「アーバンスターズ」と続いている。つまり、新グレードなのだ。装備が充実して上質な内外装を持つお得なモデルということである(参照)。

具体的には、有償オプションだった「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」や「AMGラインパッケージ」に含まれる多くのアイテムを標準装備化した。ブラックカラーの「20インチAMGアルミホイール」と本革シートで高級感をアップさせている。機能面では「アダプティブダンピングシステム付きサスペンション」で乗り心地とハンドリングの向上を図っているのがポイントだ。

アーバンスターズはGLBだけではない。ほかに「GLA」「CLA」「CLAシューティングブレーク」「Aクラス」にも設定される。いずれも「MFA2(Modular Front Architecture 2)」プラットフォームを用いるFFベースのコンパクトモデルだ。メルセデス・ベンツのなかではエントリークラスの位置づけと言っていいだろう。比較的安価であり、収益を上げるためにはある程度の数をさばかなければならないが、近年は販売台数が減少傾向にあるのは事実だ。テコ入れが必要なのは理解できる。

ただ、アーバンスターズというネーミングはちょっと微妙な感じがする。メルセデス・ベンツらしくない響きなのだ。直訳すれば「都会の星」、意図をくみ取るならば「都市生活を輝かせる」ということになるだろうか。洗練されていてあか抜けたセンスを持つモデルであることを表現しようとしているのかもしれない。メルセデス・ベンツは無機質な合理性が特徴だと感じられるのだが、これはあまりに情緒的だ。本国ではこのようなグレードは存在していないようで、日本の独自企画だと思われる。ブランドの若返りを狙っているとしても、ポジティブに受け取られるかはなんとも言えない。

2025年8月22日に発売された「メルセデス・ベンツGLB」の新グレード「Urban Stars(アーバンスターズ)」。ガソリン車の「GLB180」と、ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」がラインナップされる。今回は後者を長距離試乗に連れ出した。
2025年8月22日に発売された「メルセデス・ベンツGLB」の新グレード「Urban Stars(アーバンスターズ)」。ガソリン車の「GLB180」と、ディーゼル車の「GLB200d 4MATIC」がラインナップされる。今回は後者を長距離試乗に連れ出した。拡大
2リッター直4ディーゼルターボエンジンを搭載する「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」の車両本体価格は738万円。右ハンドル仕様車のみの設定だ。
2リッター直4ディーゼルターボエンジンを搭載する「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」の車両本体価格は738万円。右ハンドル仕様車のみの設定だ。拡大
「GLBアーバンスターズ」を示すエンブレムなどは装着されていないため、標準モデルとの判別は難しい。エクステリアではブラックカラーの「20インチAMGアルミホイール」が、数少ない識別ポイントのひとつとなる。
「GLBアーバンスターズ」を示すエンブレムなどは装着されていないため、標準モデルとの判別は難しい。エクステリアではブラックカラーの「20インチAMGアルミホイール」が、数少ない識別ポイントのひとつとなる。拡大
「GLB」で有償オプションだった「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」や「AMGラインパッケージ」に含まれる多くのアイテムを標準装備化した「GLBアーバンスターズ」。充実した装備と、上質な内外装を特徴とするお得なモデルと紹介できる。
「GLB」で有償オプションだった「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」や「AMGラインパッケージ」に含まれる多くのアイテムを標準装備化した「GLBアーバンスターズ」。充実した装備と、上質な内外装を特徴とするお得なモデルと紹介できる。拡大
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WILD but URBAN

GLBにアーバンという言葉を用いるのは違和感が強い。GLAとCLAは都会派といってもいいスタイルなのだが、GLBは武骨でワイルドなイメージで売っているからだ。1年ぶりに相対してみると、やはりその野性味と質朴な構えに感心する。クーペSUVが主流になり流麗なフォルムが当たり前になっているなかで、角張った筋肉質なマッチョタイプは珍しい。SUVはこうでなきゃ、という伝統的な価値観を持つユーザーにとっては喜ばしいデザインである。

外観とは異なり、インテリアはもともと都会的で先進的だった。眼前に横長のディスプレイが並ぶつくりは、最近のトレンドである。ダッシュボードからドアトリム、センターコンソールにはアンビエントライトが仕込まれていて、艶めいた光を放つ。シートやステアリングホイールに用いられている素材は上質で、どこを触っても柔らかで気持ちがいい。先進安全装備や運転支援機能、インフォテインメントシステムはもちろん最新版である。

見た目はゴツくても中身は都会的なのだ。「WILD but FORMAL」をうたうクロスオーバーSUVがあるのだから、GLBが「WILD but URBAN」を名乗ってもおかしくはない。ディーゼルエンジンがクルマの外では荒々しい音を隠さないのに車内では静粛性が保たれているのも、異なるキャラクターを共存させていることにつながる。

運転感覚にも二面性がある。街なかではディーゼルエンジンの太いトルクを生かして最小限のアクセル操作で余裕の運転ができる。高速道路ではエンジンが低回転のままで巡航し、静かさの保たれた室内でゆったりとした乗り心地を楽しむ。ワイルドさが顔を見せるのはワインディングロードだ。ダイナミックセレクトスイッチで「Sport」モードを選ぶと野太い音が響き、にわかにアグレッシブな一面をのぞかせる。減速では派手な空ぶかしを入れて素早くシフトダウンし、ドライバーに高揚感をもたらすのだ。

丘陵地のワインディングロードを行く「GLBアーバンスターズ」。「アダプティブダンピングシステム付きサスペンション」を採用し、乗り心地とハンドリングの向上を図ったのも同モデルのセリングポイントだ。
丘陵地のワインディングロードを行く「GLBアーバンスターズ」。「アダプティブダンピングシステム付きサスペンション」を採用し、乗り心地とハンドリングの向上を図ったのも同モデルのセリングポイントだ。拡大
「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」のインテリア。ナッパレザー仕立ての本革巻きスポーツステアリングホイールやカーボンルックインテリアトリムが採用されている。
「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」のインテリア。ナッパレザー仕立ての本革巻きスポーツステアリングホイールやカーボンルックインテリアトリムが採用されている。拡大
「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」に搭載される2リッター直4ディーゼルターボエンジンは、最高出力150PS/3400-4400rpm、最大トルク320N・m/1400-3200rpmを発生。トランスミッションは8段DCTが組み合わされる。
「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」に搭載される2リッター直4ディーゼルターボエンジンは、最高出力150PS/3400-4400rpm、最大トルク320N・m/1400-3200rpmを発生。トランスミッションは8段DCTが組み合わされる。拡大
ダイナミックセレクトスイッチで選択したドライブモードに連動したエンジンサウンドを演出する「スポーティーエンジンサウンド」を採用。下側にクロームをあしらったリアバンパーと、ブラックのディフューザーが目を引く。
ダイナミックセレクトスイッチで選択したドライブモードに連動したエンジンサウンドを演出する「スポーティーエンジンサウンド」を採用。下側にクロームをあしらったリアバンパーと、ブラックのディフューザーが目を引く。拡大

強みはトータルバランス

日本の交通事情ではコンパクトと表現するのは気が引けるものの、全長が4.7mを切っているのは評価していい。しかもこのサイズで3列シートの7人乗車なのが大きな特徴であり、セリングポイントになっている。3列目のスペースは限られていて大人が座るには適していないとはいえ、家族構成などの条件からどうしても必要なユーザーにとっては大きな購入動機となるだろう。シートをたためば最大で1680リッターの積載容量が得られる。ワイルドかアーバンかなどと考える前に、GLBは優秀な実用車なのだ。

車重は1800kgを超えているし空力性能が高いとは思えないボディーだが、燃費は悪くなかった。エコ運転に徹すれば、20km/リッター超えも不可能ではないだろう。プレミアムSUV市場の中間領域ともいうべきこのカテゴリーには、BMW、アウディのドイツ勢に加え、ボルボやレクサスにも強力なライバルがいる。ハンドリング、デザイン、静粛性、燃費性能などの点で、より優れたモデルが存在するのは否定できない。GLBはトータルなバランスでアドバンテージを保っている。アーバンスターズはそこにスポーティーさやプレミアム性をトッピングし、メルセデス・ベンツらしさをアピールしているのだろう。

装備や機能が充実しているのは冒頭で述べたとおりで、その割には価格が抑えられているのが重要だ。1年前に乗ったモデルは本体価格が694万円だったが、AMGラインパッケージなどのオプションが乗って合計762万7000円だった。GLBアーバンスターズは本体価格が738万円である。細かい装備の違いはあると思うが、お買い得なのは確かだ。

「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4660×1845×1700mmで、ホイールベースは2830mm。車重は1860kgと発表されている。
「GLB200d 4MATICアーバンスターズ」のボディーサイズは全長×全幅×全高=4660×1845×1700mmで、ホイールベースは2830mm。車重は1860kgと発表されている。拡大
「GLBアーバンスターズ」のシートは本革張りで、フロントシートにはヒーターと電動調整機構が標準で装備される。インテリアカラーは「ブラック」の単色(写真)か、「レッドペッパー/ブラック」のコンビカラーから選択できる。
「GLBアーバンスターズ」のシートは本革張りで、フロントシートにはヒーターと電動調整機構が標準で装備される。インテリアカラーは「ブラック」の単色(写真)か、「レッドペッパー/ブラック」のコンビカラーから選択できる。拡大
足元も頭上も余裕がある2列目シート。シートには60:40で左右個別に調整できるリクライニングとスライド、背もたれの可倒機構が備わる。
足元も頭上も余裕がある2列目シート。シートには60:40で左右個別に調整できるリクライニングとスライド、背もたれの可倒機構が備わる。拡大
3列目シートはフロアと座面の位置が近く、大人が乗り込むと、いわゆる体育座りのような姿勢を強いられる。背もたれは50:50の分割可倒機式で、積載物に合わせてシートアレンジが行える。
3列目シートはフロアと座面の位置が近く、大人が乗り込むと、いわゆる体育座りのような姿勢を強いられる。背もたれは50:50の分割可倒機式で、積載物に合わせてシートアレンジが行える。拡大

世代交代が近づいている

自家用車を置いているマンションの駐車場にかなり年季の入った「Gクラス」があったのだが、気がついたら同じ場所にGLBが止まっていた。メルセデス・ベンツ好きのオーナーが買い替えたらしい。同じメーカーのSUVとはいえ、この2台はかなり性格が違う。軍用車にルーツを持つGクラスは質実剛健の極みで、ラダーフレームの本格的なオフローダーである。GLBはワイルドな外観を持っていても実用性の高い乗用車だ。オーナーが誰だか知らないので理由を聞いたわけではないが、狭い道の多い地域なのでGクラスでは苦労が多かったと推察できる。オールラウンダーのGLBに買い替えたのは理性的な判断だ。

現在も一定の需要があるGLBではあるが、世代交代が近くなっているらしい。2026年中に次期型にバトンを渡すとも報じられている。MFA2に代わって「MMA(Mercedes-Benz Modular Architecture)」プラットフォームのモデル群が登場するはずだ。もともとBEV専用として開発されていたが、電動化戦略の変更でエンジン車やHEVにも対応するようになったといわれる。CLAもMMAを用いた新型になることが公表された。

アーバンスターズのラインナップは、いずれもそう遠くない将来にモデル寿命を終える可能性が高い。メルセデス・ベンツは戦略的な岐路に立ち、コンパクトなエントリークラスの再構築に挑んでいるのだろう。電動化への行程を新しいプラットフォームで進めていくことは、ブランド強化のために欠かせない取り組みだ。

新世代のメルセデス・ベンツがどんなモビリティーを構想しているのかは興味深いし、大きな期待がかかる。未来を楽しみにしながらも、これまでブランドの足元を支えてきたFFベースの親しみ深いモデルも忘れがたい。GLBは都会の星となって、もう一度華やかな輝きを見せてくれるのだろうか。

(文=鈴木真人/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=メルセデス・ベンツ日本)

荷室容量は3列目シート使用時の130リッターから、3列目と2列目シート格納時の1680リッターまで拡大が可能。写真は3列目シートを格納した様子。
荷室容量は3列目シート使用時の130リッターから、3列目と2列目シート格納時の1680リッターまで拡大が可能。写真は3列目シートを格納した様子。拡大
ドライブモードは「Comfort」「Eco」「Sport」「Individual」「Offroad」の5つから任意に選択できる。センターコンソールパネルのダイナミックセレクトスイッチか、センターディスプレイのタッチ画面で切り替えが可能だ。
ドライブモードは「Comfort」「Eco」「Sport」「Individual」「Offroad」の5つから任意に選択できる。センターコンソールパネルのダイナミックセレクトスイッチか、センターディスプレイのタッチ画面で切り替えが可能だ。拡大
今回の試乗車に搭載されていた「アダプティブハイビームアシストプラス」は、59万円の有償オプション「アドバンスドパッケージ」に含まれるアイテム。カメラが対向車や先行車を検知し、周囲の状況に合わせてヘッドライトの光軸を自在に調整。60km/h以上で自動的にハイビームになる。
今回の試乗車に搭載されていた「アダプティブハイビームアシストプラス」は、59万円の有償オプション「アドバンスドパッケージ」に含まれるアイテム。カメラが対向車や先行車を検知し、周囲の状況に合わせてヘッドライトの光軸を自在に調整。60km/h以上で自動的にハイビームになる。拡大
今回は高速道路と市街地を中心に約320kmを走行。車重は1800kgを超えているし空力性能が高いとは思えないボディーだが燃費は悪くなく、エコ運転に徹すれば、20km/リッター超えも不可能ではないだろう。
今回は高速道路と市街地を中心に約320kmを走行。車重は1800kgを超えているし空力性能が高いとは思えないボディーだが燃費は悪くなく、エコ運転に徹すれば、20km/リッター超えも不可能ではないだろう。拡大

テスト車のデータ

メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4660×1845×1700mm
ホイールベース:2830mm
車重:1860kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:150PS(110kW)/3400-4400rpm
最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/1400-3200rpm
タイヤ:(前)235/45R20 96W/(後)235/45R20 96W(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:15.8km/リッター(WLTCモード)
価格:738万円/テスト車=807万1000円
オプション装備:ボディーカラー<マウンテングレー[メタリック]>(10万1000円)/アドバンスドパッケージ(59万円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1840km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:324.2km
使用燃料:17.3リッター(軽油)
参考燃費:18.6km/リッター(満タン法)/16.7km/リッター(車載燃費計計測値)
 

メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ
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メルセデス・ベンツGLB200d 4MATICアーバンスターズ(4WD/8AT)【試乗記】の画像拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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