新型「シトロエンC3」が上陸 革新と独創をまとう「シトロエンらしさ」はこうして進化する
2025.11.13 デイリーコラム最新のデザイン言語をまとう
「C3」としては第4世代にあたる新型「シトロエンC3ハイブリッド」の国内販売が2025年11月6日にスタートした。C3はシトロエンの最もコンパクトなモデルであり、エントリーグレードの「プラス」が339万円、装備が充実した上位グレードの「マックス」が364万円という昨今の輸入車にしてはリーズナブルな価格もトピックである(参照)。
ステランティス グループではおなじみの1.2リッター直3ガソリンターボと6段デュアルクラッチ式ATを組み合わせたマイルドハイブリッドを搭載する新型C3ハイブリッドのボディーサイズは全長×全幅×全高=4015×1755×1590mmで、ホイールベースは2540mm。コンパクトといえるスリーサイズだが、これでも先代モデルより20mm長く、5mm幅広くなり、高さは95mmも拡大している。そのサイズ感は、トヨタの「ヤリス クロス」よりもひとまわり小さな「ライズ」に近いといえば、わかりやすいだろうか。走りの印象はすでに報告済みなので、そちらをご覧いただければ幸いだ(参照)。
はやりのSUVフォルムに生まれ変わったC3は、ひと足先に国内導入されたMPV「ベルランゴ」や、Cセグメントハッチバック「C4」に続く、シトロエンの最新デザイン言語を用いたモデルでもある。2022年のパリモーターショーで登場したコンセプトカー「Oli(オリ)」の流れをくむフロントフェイスは、ボクシーで愛嬌(あいきょう)たっぷりのデザインが特徴だ。
フロントのセンターに陣取るシトロエンのエンブレムは、2022年9月に発表された最新のダブルシェブロンだ。そのデザインは、1919年にアンドレ・シトロエンが最初に採用したオリジナルの楕円(だえん)形エンブレムを再解釈したものと紹介される。1919年に創立され、これまで106年の歴史を歩んできたシトロエンだけあってこのエンブレムが10世代目にあたるという。
どのブランドとも異なる個性的なデザインを“シトロエンらしさ”とするのなら、このC3も例に漏れない。しかし、直立したグリルに3つのセグメントに分割されたヘッドランプが収まるフロントマスクは、一世代前のシトロエンとは大きく異なるテイストだ。その流れは当然、インテリアにも広がっている。こうした最新世代モデルのデザイン的な特徴と開発の経緯を、シトロエンでカラー&マテリアルを担当する日本人デザイナー、柳沢知恵さんに聞いた。
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従来とは異なるデザインアプローチ
柳沢知恵さんは2007年に日産自動車に入社し、カラーマテリアルデザイナーとして従事。2012年から2年間ルノーに出向し、その後日産に戻るも、2015年末にシトロエンへと移籍したキャリアを持つ。最新のC3でもカラー&マテリアルを担当した。
「正円でなく、戦前のシトロエン車で使っていたようなオーバル型のエンブレムは、シトロエンの100周年を記念して発表された電気自動車『19_19コンセプト』で“復活”させたデザインテーマです。オーバルは斜めの面に置くと丸に見えてしまうので、垂直に配置。シルバーの部分には細いラインを入れて精緻に仕上げています。このダブルシェブロンは、例えばホイールアーチにもモチーフとして採用。上質さと個性を演出しています」とデザインのポイントについて説明する。
エクステリアでは、前後バンパー下部のシルバーに輝くスキッドプレートや、「先代C3の特徴でもあったエアバンプの代わりにアクセントとして採用した」と説明されるカラークリップが新しい。フロントバンパー下部とCピラー手前のリアクオーターウィンドウに配置されるカラークリップは、レッドまたはイエローがボディーカラーに合わせて採用される。フランス本国にはトリコロールやダブルシェブロンをモチーフにしたデザインもオプション設定されているという。
いっぽうインテリアは、水平基調のインストゥルメントパネルと天地がフラットにデザインされた小径ステアリングホイール、ダッシュボード上部に配置された薄型のメーターパネルが目を引く。ダッシュボードは上下2段に分かれ、下段はスニーカーにも用いられるフライニットが張られている。上段はハードプラスチックだが、下部層に明るい色調のフライニットをもってきたせいか不思議と安っぽさはない。そのどれもが、従来のシトロエンデザインとは一線を画すフィニッシュだ。
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シートは板チョコがモチーフ
このインテリアのデザインコンセプトを柳沢さんは「C-ZENラウンジ」という言葉で説明する。日本の禅を由来とするZENには、ミニマルで視覚的な雑念を排した空間=心地よい落ち着きという意味が込められており、例えばフランスで「彼はZENだね」というように、穏やかで冷静な性格を表す際にも使われるなど一般にも浸透している。なるほどそういえば、ルノーの「トゥインゴ」や「ルーテシア」「カングー」のグレード名に使われていたことを思い出す。
通常は数mmしかない表皮下のウレタン層を約10mm厚とすることで、昔ながらのソファのような座り心地を実現したと紹介される「アドバンストコンフォートシート」も、新型C3のセリングポイントである。柳沢さんは「10mmのクッション(厚)は、こだわりのポイントで、われわれが板チョコと呼んでいるそのデザインは1970年代の『CX』をイメージしたものです。バックレスト上部はグレーのファブリックを使用して(クッション部分との)コントラストをつけています」と説明する。
実際、シートの肌ざわりはとても柔らかく、心地よい。シトロエンというブランドの走行テイストから想像するソフトな乗り味にも、十分な貢献を果たしているといえる。また、ここでもBセグメントモデルにありがちなコスト重視からくるチープさは皆無。決して高級な素材を使用しているわけではないはずなのだが、こうした仕上げがうまいのもシトロエンらしさだろう。
C3のインテリアには、多くの遊び心も盛り込まれている。助手席前のグローブボックスを開けると、リッドに「11CV(通称トラクシオンアヴァン)」や「Hトラック」「2CV」「メアリ」、そして最新BEV「アミ」と、シトロエン車のイラストが刻まれる。リアのウィンドウにはニワトリとパリの街並みが小さくシルエットで描かれている。各ドアのアームレストに縫い付けられた赤い「ハッピータグ」もユニーク。タグにはドアごとに異なるメッセージが入る。
「シトロエンは“ユニークであれ”が社内共通のテーマ」と柳沢さん。C3にはそうした開発メンバーのこだわりや個性がきちんと表現されているように感じる。個性と価格を武器に、C3がこの日本でどこまで支持を集めるのか注目である。
(文=櫻井健一/写真=佐藤靖彦、ステランティス ジャパン、webCG/編集=櫻井健一)
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櫻井 健一
webCG編集。漫画『サーキットの狼』が巻き起こしたスーパーカーブームをリアルタイムで体験。『湾岸ミッドナイト』で愛車のカスタマイズにのめり込み、『頭文字D』で走りに目覚める。当時愛読していたチューニングカー雑誌の編集者を志すが、なぜか輸入車専門誌の編集者を経て、2018年よりwebCG編集部に在籍。
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