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ホンダが電動バイク用の新エンブレムを発表! 新たなブランド戦略が示す“世界5割”の野望

2025.11.14 デイリーコラム 森口 将之
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6つのニュースリリースを一斉に配信

ジャパンモビリティショー開催中の2025年11月4日、ホンダから6通ものニュースリリースが立て続けに発信された。ショーの最中になんで? と思って見てみると、すべてが二輪関連。この日、イタリア・ミラノで始まったモーターサイクルショー「EICMA 2025」に関連した内容だった。EICMAについては『webCG』でもたびたび記事にしているので説明不要かと思うが、世界最大級のモーターサイクルと関連商品の展示会である。

配信された6つのニュースリリースのうち、4つはショーで公開されたモデルに関するもの。展示車全体をまとめた出展概要のほか、「V3R 900 Eコンプレッサー プロトタイプ」「CB1000GT」「WN7」については個別にリリースが出された。

では残りの2つはというと、ひとつは二輪モデルの新しいプロダクトマークとエンブレムを、もうひとつは二輪電動事業のブランドプロミスと4つのコアバリューを、それぞれ発表したものだった。注目機種の個別情報については別の記事(その1その2)を見ていただくとして、ここではエンブレムやブランドプロミス、要はホンダ二輪事業の新しい商品/ブランド戦略について紹介していく。

「EICMA 2025」で発表された「ホンダV3R 900 Eコンプレッサー プロトタイプ」。排気量900ccのV型3気筒エンジンに電動過給機を備えている。
「EICMA 2025」で発表された「ホンダV3R 900 Eコンプレッサー プロトタイプ」。排気量900ccのV型3気筒エンジンに電動過給機を備えている。拡大
「CB1000GT」は、スポーツネイキッドの「CB1000ホーネット」とコンポーネントを共用する、スポーツツアラーだ。
「CB1000GT」は、スポーツネイキッドの「CB1000ホーネット」とコンポーネントを共用する、スポーツツアラーだ。拡大
電動モーターサイクルの「WN7」は、シーンを問わずゆとりを持って走れる動力性能が自慢。航続距離はWMTCモードで140kmとなっている。
電動モーターサイクルの「WN7」は、シーンを問わずゆとりを持って走れる動力性能が自慢。航続距離はWMTCモードで140kmとなっている。拡大
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なんでこんな中途半端なことを?

まずプロダクトマーク/エンブレムだが、電動二輪車には新しい「Honda」ロゴのマークを採用。ICE(内燃機関)車ではおなじみのウイングマークを継続するが、「ゴールドウイング」や「CBR1000RR-R」などのフラッグシップモデルには、新デザインの「Honda Flagship WING(ホンダフラッグシップウイング)」を取り入れていくという。ジャパンモビリティショーに出展された電動二輪車「EVアーバン コンセプト」「EVアウトライアー コンセプト」を見てみると、確かに上述のHondaのロゴマークがあった。

この流れ、2024年1月に米ラスベガスで開催された「CES 2024」における、四輪車の新しい「Hマーク」発表に通じるものがある(参照)。新たなHマークは、この場でお披露目された「Honda 0シリーズ」を含め、次世代電気自動車(BEV)に広く採用されるとアナウンスされた。改革に際して目印を刷新するのは、世の常なのだ。

また、この電動二輪車に用いられる新しいHondaマークだが、Honda 0シリーズのプロダクトマークや「プレリュード」のリアバッジに用いられているものと、同様のデザインとなっている。ホンダは電動車については、タイヤの数を問わず、純エンジン車/純エンジン機とは違うラインとして位置づけていくつもりなのだ。

それにしても、なぜこんな中途半端なことをするのか? ブランドを分化したいのなら、アキュラのように新ブランドを旗揚げすればよいのではないか。読者のなかには、そう思う方もいるかもしれない。

確かにクルマやバイクの世界では、トヨタの「センチュリー」のようにブランドを独立させる動きもあるが、これには大きな手間とリスクがともなう。実際、近年では新ブランドを立ち上げるにしても、むしろ既存のブランドとの共通性を主張する例が少なくない。アウディが2024年秋に旗揚げした中国専用のBEVブランド「AUDI」などは、その好例だろう。既存の「Audi」との違いは、頭文字以外が大文字か小文字かというだけ。ブランドの来歴を説明する手間を省き、イメージが定着しないリスクの低減も考慮したのだろう。

類似の効果をねらったものとしては、日本人にとってはソニーグループの展開がわかりやすい。エレクトロニクス部門は従来のロゴを使いながら、ゲームや音楽、映画部門は、どれも「SONY/Sony」の文字は受け継ぎつつ、おのおのに異なるフォントで事業部のロゴをデザインしている。ソニーグループは2000年代の不振から奇跡の復活を果たし、いまや過去最高益を記録しているが、その成功には、こうした細かなブランド戦略も寄与しているのかもしれない。

電動二輪モデルに採用されるプロダクトマーク。四輪の電動モデルと同一のマークが用いられることとなった。
電動二輪モデルに採用されるプロダクトマーク。四輪の電動モデルと同一のマークが用いられることとなった。拡大
「ジャパンモビリティショー2025」に出展された「EVアーバン コンセプト」「EVアウトライアー コンセプト」。ともに電動モデルなので、車体に新しい「Honda」ロゴのプロダクトマークが施されている。
「ジャパンモビリティショー2025」に出展された「EVアーバン コンセプト」「EVアウトライアー コンセプト」。ともに電動モデルなので、車体に新しい「Honda」ロゴのプロダクトマークが施されている。拡大
ICE車のフラッグシップモデルに装着される、「Honda Flagship WING(ホンダフラッグシップウイング)」。
ICE車のフラッグシップモデルに装着される、「Honda Flagship WING(ホンダフラッグシップウイング)」。拡大
「ホンダV3R 900 Eコンプレッサー プロトタイプ」には、よく見ると「ホンダフラッグシップウイング」が貼られている。
「ホンダV3R 900 Eコンプレッサー プロトタイプ」には、よく見ると「ホンダフラッグシップウイング」が貼られている。拡大
ファンが慣れ親しんだ、赤い「ホンダウイング」のプロダクトエンブレム。こちらも幅広い機種に継続して使用される。
ファンが慣れ親しんだ、赤い「ホンダウイング」のプロダクトエンブレム。こちらも幅広い機種に継続して使用される。拡大

ブランドは変えずにブランドの“分化”を図る

ホンダのことに話を戻そう。残るブランドプロミス/コアバリューのニュースリリースについて触れると、こちらは2030年以降の電動二輪車の新しいあり方を提案するものだ。「Expected life. Unexpected discoveries」というブランドプロミスのもと、(1)不安や障壁から解放する、(2)本能と感性を刺激する、(3)人と社会と共生する、(4)知性を共鳴させる、の4つをコアバリューとして掲げている。

実はこれも、四輪事業で先行して行われた取り組みに中身が近い。ホンダは先述のCES 2024で、Honda 0シリーズの開発アプローチ「Thin, Light, and Wise」と、5つのコアバリューを発表している(参照)。今回の電動二輪事業におけるブランドプロミス/コアバリューの発表も、建て付けは同じだ。これについては、「電動化が進んでいる四輪からまず改革を行った」という見方もできるが、2024年の販売台数は四輪が380万台なのに対して二輪は2020万台なので、「ひとまずボリュームの小さい四輪で様子を見た」とも考察できるだろう。

ホンダは2040年代に全二輪製品でのカーボンニュートラル実現を目指しており、また現在は約4割となっているグローバル市場での二輪のシェアを、将来的に5割まで持っていく目標を掲げている。となれば電動車が果たす役割は大きいし、“世界の半分”という規模は単一のブランドでまかなえるレベルではない。いっぽうで、「Honda」の5文字に対する支持は世界各国で厚く、またアキュラのように新ブランドを立ち上げても、それが定着するとは限らない。ブランドは変えずにエンブレムを使い分け、サブブランドのように扱っていくという判断は、理にかなったものといえるだろう。

いずれにせよ、二輪に関するホンダの商品/ブランド戦略が、大きな転換点を迎えたことは間違いない。それがどのように実際の製品に影響していくのか。各戦略も興味深いが、そのもとに展開される新しいモデル群にも注目したい。

(文=森口将之/写真=本田技研工業、webCG/編集=堀田剛資)

今回の、次世代電動二輪モデルに関する新戦略の発表は、「CES 2024」における「Honda 0シリーズ」の発表に類似している。
今回の、次世代電動二輪モデルに関する新戦略の発表は、「CES 2024」における「Honda 0シリーズ」の発表に類似している。拡大
森口 将之

森口 将之

モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。

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