ジープ・グランドチェロキー“オーバーランド”(5AT)【海外試乗記】
The American SUV 2002.11.19 試乗記 ジープ・グランドチェロキー“オーバーランド”(5AT) ジープブランドの最高峰「グランドチェロキー」。2003年モデルで追加された、欧州市場を見据えた2.7リッターディーゼル仕様に、自動車ジャーナリストの森口将之が試乗した。ルーツブランドの復活
ジープのフラッグシップ「グランドチェロキー」には、従来、廉価版たる「ラレード」とスタンダードな「リミテッド」の2タイプがラインナップしていたが、2003年モデルからリミテッドのさらに上をいくトップグレード「オーバーランド」が加わった。
“オーバーランド”と聞いてピンとくる人は、かなりのアメリカ車通だろう。1941年にジープを最初に作ったメーカー、ウィリス・オーバーランド社は、もともとオーバーランドという自動車メーカーをウィリスが買収することで生まれたものだ。いわばジープの“ルーツブランド”を復活させた、というわけである。
外観は、専用の17インチ5スポークアルミホイールとサイドシルガード、クロームメッキのテールパイプなどで、控えめなドレスアップにとどめられた。オーバーランド最大のアピールポイントは、キャビンにある。ダッシュボードやドアトリムのウッドパネルは本木目になり、シートはレザーとスウェードを組み合わせて、シックな上質感を醸し出している。ヨーロピアンテイストのインテリア、といえるかもしれない。
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滑らかな5気筒ディーゼル
エンジンは、形式こそ日本仕様にも積まれるガソリン4.7リッターV8SOHCだが、ハイチューンの“HO”(ハイアウトプット)仕様がおごられた。ノーマルと較べて、最高出力は223psから258ps/5200rpm、最大トルクは40.2kgmから43.4kgm/3500rpmに、それぞれアップした。しかし、今回試乗したのはこのエンジンではない。ヨーロッパ仕様のみに設定される、2.7リッター直5SOHC20バルブターボ・コモンレール式ディーゼル(CRD)だ。ヨーロッパではなくアメリカで、ディーゼルのジープに乗れるとは珍しい体験だった。
CRDはメルセデスベンツ製で、日本でも「Mクラス」の「ML270 CDI」に積まれるものと同じだ。今やジープはダイムラークライスラーの傘下(?)である。意外なところにシナジー効果が現れるものである。最高出力163ps/4000rpm、最大トルクは40.8kgm/1800〜2600rpmで、トルクは標準型のガソリン4.7リッターV8を凌ぐ。トランスミッションは5段ATのみだ。
チェロキーの2.7リッターCRDと較べて、排気量は0.1リッター小さいが、シリンダーの数がひとつ多いこともあって、性格はかなり違う。「ML270 CDI」と同じように、ターボが効き始めるのは2000rpmあたり。それ以下では、トルクがやや心もとないが、ターボが効いてからのスピードの伸びは4.7リッターV8に匹敵する。音はアイドリング以外ではディーゼルらしからぬもの。4気筒とは別物の滑らかさと静かさが、心地よく感じられた。「チェロキー」のCRDと較べると、オンロードでよさを発揮する性格に思えた。
高い悪路走破性
こう書くと、グランドチェロキーが乗用車ベースの“ライトSUV”の一員に思われてしまうかもしれないが、そんなことはない。ジープの名に恥じない悪路走破性を備える。
このサイズのSUVとしては、比較的軽い約1.9トンのボディ、短めの前後オーバーハング、前後リジッドのサスペンション、低いギア比を持つローレンジモード、前後にリミテッドスリップデフを備えた「クォドラドライブ」4WDシステム……。オフロードを走るために生まれたこれらのメカニズムは、走行条件が悪くなるほど威力を発揮する。今回は外から走りを眺めるだけだったが、リジッドならではの長いサスペンションストロークを活かした、懐の深い走りが印象に残った。
一方オンロードは、2003年モデルでサスペンションのダンピング性能がやや弱められたこともあって、今まで以上にラグジュアリーモデルらしいマイルドな乗り心地を提供してくれる。本格的な4×4として、オフロード性能を最重視するのではなく、大らかなアメリカンSUVとしてグランドチェロキーを見る人にとっては、満足できる改良だろう。
オーバーランドが日本へ導入される可能性は、4.7リッター“HO”仕様ガソリンV8エンジンの排出ガス規制への適合次第とのこと。現在検討中だ。ジープのフラッグシップにふさわしいオーバーランドが、ラレードとリミテッドに続く第3のモデルとして輸入されることを、心待ちしたい。
(文=森口将之/写真=ダイムラークライスラー/2002年10月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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