サーブ9-3カブリオレ エアロ2.0T(5AT)【海外試乗記】
スポーツカー顔負け 2003.09.13 試乗記 サーブ9-3カブリオレ エアロ2.0T(5AT) 北欧の小さなプレミアムカーメーカー、サーブ。フルモデルチェンジを果たした「9-3スポーツセダン」に続き、そのオープンモデルをリリースした。端正な「9-3カブリオレ」に、ジャーナリストの森口将之が乗った。実は売れているんです
「サーブ」というと、プレミアムブランドのなかでは脇役に甘んじている。でもそれは“セダン”に限ってのこと。“カブリオレ”についてはそんなことはない。国によっては堂々と主役を張っているほどなのだから。
サーブによれば、母国スウェーデンやイギリス、オランダでは、プレミアムブランドのオープンモデルのなかで約50%のシェアを占めているという。サーブ全体の、プレミアムブランド中のシェアが約6%というのだから、オープンモデルのそれは驚くべき数字だ。
歴史の長さが、この数字に結びついているのは間違いない。初代「900」をベースにした4シーターオープンのプロトタイプを発表したのは、いまからちょうど20年前、1983年のフランクフルトショーでのこと。3年後にこのモデルが「900カブリオレ」として市販されると、あとを継いだ2代目「900」や、その発展型の初代「9-3」にも、カブリオレは引き続きラインナップされた。
そんな流れを受け継いだ新型「9-3カブリオレ」のアピールポイントのひとつは、デザインにある。ルーフは最近はやりの電動開閉式ハードトップではなく、トラディショナルなソフトトップだが、スペシャルティ感を出すにはこちらのほうが適していると思う。左右を結ぶ幌骨が5本から6本に増やされたこともあって、ルーフはきれいなカーブを描くようになった。
オープンにする場合、畳んだトップはトノカバーのなかにしまうことになる、このカバーの開きかたがウリのひとつ。ほかのクルマでは後ろを支点にして開くカバーが、9-3では後方にスライドしていく。幌骨にマグネシウム、トノカバーにアルミと、軽量素材を使ったおかげもあって、動きはスムーズ。そしてトップを開けると、サイドウィンドウの内側を取り巻くサラウンドトリムと呼ばれるボディ同色のパネルが、車内と車外の境目を消し去り、開放感をいっそう強調してくれる。
トノカバーを後ろにスライドさせるのは、けっして“見た目狙い”だけではない。このほうが開口部を稼げるからというメリットもある。それが奏効して、開閉は20秒で完了。クローズドにすると、それに連動してトランク内の格納場所が折り畳まれ、ラゲッジ容積が235リッターから352リッターに拡大する「カーゴ・セット」なるしかけもある。見れば見るほど凝ったつくりだ。
マイルドとフラット
カブリオレの2リッター直列4気筒DOHC16バルブのターボエンジンには、2種類が用意される。スポーツセダンにはあるベーシックな「1.8t」(2リッター/150ps)はなく、175psの「2.0t」と210psの「2.0T」がラインナップされる。試乗したのは、この秋に日本で発売される予定の2.0Tで、仕様はスポーツセダンでもおなじみのスポーティグレード「エアロ」だった。このほか、2.0tの輸入も検討中だという。
キャビンはサーブが主張するとおり、正真正銘のフル4シーター。クローズド状態でもそれは変わらない。リアシートは幅こそタイトだが、身長170?の僕が前後、順番に座ってみると、ひざの前には5cmの余裕があり、頭上にもわずかな空間が残る。しかもルーフライニングは黒ではなくグレーだから、閉鎖感は思った以上に少なかった。
室内の、ブラックとグレーの2トーンをベースに、メタルのアクセントをあしらうというコーディネイトは、スポーツセダンと共通。しかし、ボディがイメージカラーの鮮やかな「ライムイエロー」だったこともあって、よりクールでシックに見える。
フロントシートは、肩の部分にベルトを内蔵するタイプになったが、座り心地はスポーツセダンとほとんど同じ。400?走り続けても疲れを感じることはなかった。
試乗コースはデンマークとスウェーデンの2国にまたがっていて、コペンハーゲンで街なかを試したあと、ゆるやかなカーブが続くカントリーロードを走る。その後、南スウェーデンのボスタッドという街へ向かい、帰りは高速道路で一気に戻るという、多彩なルートだった。
街なかではマイルドな乗り心地に好感を持った。スポーツセダンのエアロはかなり硬い印象だったが、カブリオレはやはりボディ剛性が違うからだろう、鋭いショックを絶妙にいなしてくれるのだ。といっても、オープンボディとしてはトップレベルの剛性感を備えていることも、またたしかだ。
オープンロードに出れば、このマイルド感にフラット感がプラスされ、サーブらしい、“ロングツアラー”として理想的なフィーリングになってくれる。
風の巻き込みは驚くほどすくなかった。スウェーデンの高速道路の制限速度は110?/hだが、その状況では、リアシートの上にウィンドネットを取り付け、サイドウィンドウを上げておけば、髪の毛が乱されることさえほとんどなかった。風のコントロールのうまさは、サーブが航空機づくりからスタートした会社であることを思い出させてくれた。
スポーツセダンよりもスポーティ
スポーツセダンより100?ほど重いボディに、リッター100psを越える高圧ターボエンジンを組み合わせた9-3カブリオレ。発進の瞬間に、すこしだけターボラグを感じることがあった。でもそれは一瞬のことで、2000rpmを越えてしまえば、アクセルを踏んだ瞬間に力強い加速を手に入れることができる。とくに今回のように初めて走る道では、キックダウンに頼らなくても、過給によって速度を上げていけるターボの特性がありがたかった。
ハンドリングは、「スポーツセダンより楽しいんじゃないか」と思ったほど。オープンエアの爽快感だけが理由ではない。ハイパワーの前輪駆動車とは思えない、ナチュラルなマナーはそのままに、前後の重量配分が「60:40」から「55:45」とイーブンに近づいたために、切れ味も鋭くなっているのだ。予想以上に豪快なエクゾーストサウンドをBGMにしながらのカントリーロードは、スポーツカー顔負けの楽しさだった。
帰り道の高速道路ではトップを上げて走ったが、ソフトトップがバタつくことはなく、風切り音は抑えられ、幌とボディの密着感も高いレベルにある。カブリオレとは思えないほど静かだった。この状態では、4シータークーペと呼んでもいいほどだ。
価格はスポーツセダン+100万円あたりに落ち着きそうとのこと。単純計算すると、エアロが570.0万円、2.0tが515.0万円となる。この数字をどう見るかは人によって違うだろうが、「デザイン」と「走り」、「スポーティさ」と「エレガントさ」を高度に両立させた独自のキャラクターを理解できる人にとっては、リーズナブルに思えるはずだ。
(文=森口将之/写真=日本ゼネラルモーターズ/2003年9月)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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