サーブ9-3 カブリオレ エアロ(5AT)【試乗記】
オーディオを選ぶように、屋根を開けよう 2004.12.09 試乗記 サーブ9-3 カブリオレ エアロ(5AT) ……570万円 バブル時代に一世を風靡した「900」以来、サーブのオープンモデルは独特な魅力を持ち続けている。その伝統を受け継ぐ「9-3カブリオレ」に、『SUPER CG』編集長の伊東和彦が乗った。良いカブリオレの条件
最近、カブリオレが気になって仕方がないという声を周囲からよく聞く。オープンエア・モータリングに憧れるが、2座オープン(ロードスター)は現実的ではないと考える人からの声だ。できのよい4座カブリオレがあれば、すべてを1台でカバーすることができるはずだという。
良いカブリオレであることの条件は、幌を上げた(つまりクローズした)時の格好がよいことだと思っている。オープンにしている時間よりも閉じている時間の方が長いからだ。
もちろん幌を上げた時の遮音性や耐候性、居住性が良いことはいうまでもない。
この判断基準からすれば、この「サーブ9-3カブリオレ」はたいへん優れている。ボディデザインには「後から屋根を切り継いだ」ような不自然さを感じさせないものだし、室内に乗りこんでみれば、ルーフの内張りの質感はサルーンとの遜色がないかのような質感を感じた。内張りにはシワや弛みのようなものは皆無だから、幌を開けない限りカブリオレと気づかない人もいるかしれない。
カタログによれば、内張と外皮のあいだにはフリース製の遮音・断熱材が入っているというが、このあたりは寒い冬を経験する北欧のクルマの満目躍如といったところだ。 幌の開閉は完全に自動化されて、ダッシュパネルの上に設けられたスイッチを操作するだけで済み、留め金を外したり固定したりする必要はない。大きな幌だが、ブレースやフロントレールをマグネシウム製とすることで軽量化を図っている。また、幌を収容するアルミニウム製のトノカバーは水平に持ち上がったうえで、後方に並行移動するという大きなアクションで動くが、それにもかかわらず開閉時間が約20秒と短いことは驚きだ。また、時速30km/h以下なら走行中にでも開閉できる。
この幌の操作性の良さと開閉時間の短さは、カブリオレを楽しむための必須事項だ。なぜなら、その開閉に手間がかかったら、やがて億劫になってまったく開けなくなってしまい、宝の持ち腐れとなってしまうからだ。
売り物の「低圧ターボチャージャー」
さっそくオープンエアを楽しみにいくことにしよう。この日の目的地は長野県飯山市。クルマの多い都内と関越道では幌を上げ、長野県に入って空気の色が変わったのを見計らってから幌を下ろす。高速道路でも気軽にオープンにできるのは、リアシートに備えるウィンドディフレクターのおかげだ。これを装着すれば風の巻き込みを抑えることができる。また、オープンにするとエアコンは自動的にオートからマニュアルに切り替わるので、温風を体に当て強力なシートヒーターの助けを借りれば、たいへん快適なオープンエア空間が得られる。
高速道路では、サイドガラスを上げれば90〜100km/hくらいまでなら風を不快に思うことはないだろう。空気と戯れたくなればスロットルを踏み込めばいいし、それが邪魔になったと感じたら右足を緩めればいい。空気の香りや気温の変化を感じながら風と対話するかのように速度をコントロールしながら旅をすると、走り慣れた高速道路もまったく退屈には感じなかった。もちろん風との対話に疲れたら、幌を上げればサルーンのような快適性が得られる。
日本GMが販売するサーブ9-3カブリオレには、「リニア」と「エアロ」の2種類のグレードが用意されている。エンジンは、ともに新開発のオールアルミ、2リッター4気筒DOHC16バルブターボ・インタークーラー付きだが、「リニア」には175psのユニットが、「エアロ」には210psユニットの仕様が搭載される。
今回試乗したのは、エアロであった。ターボチャージャーの経験が豊かなサーブは、比較的低い過給圧を低回転域から効かせる「低圧ターボチャージャー」を売り物にしているが、この高出力仕様の210psユニットも例外ではなく、低回転域から強いトルクを発生しており、最大トルクの30.6kgmを2500rpmで発生する(リニアは27kgm/2200rpm)。ギアボックスは、アイシンAW製のシーケンシャルモード「サーブ・セントロニック」付きの5段ATだが、エンジン特性にマッチして使いやすいと感じた。
幌を上げても不満はない
エンジン出力以外には、「リニア」と「エアロ」の差は装備品にある。最も大きな違いは前者が215/55R16のタイヤを履くのに対し、後者は225/45R17タイヤを履くことだ。このサイズから硬めの乗り心地を想像したが、予想に反して乗り心地が良いことに感銘を受けた。これはリアシートでも同様で、シート後方に大きな幌を収めているにもかかわらず、居住スペースも充分なので、サルーンとしての機能を重視するユーザーも満足できるだろう。
カブリオレのいいところは、オープンエアが身近にあるところだ。いつも開けている必要などない。普段はサルーンとして使いながら、カブリオレを楽しめる環境に出会ったら、オーディオを選ぶように開閉スイッチを操作すればいい。
相反する特徴を両立させようとすれば、どちらの要素も未完成になり、結果的に商品として魅力のないものになってしまう。
カブリオレの場合についていえば、幌を上げた時の完成度が低ければ、その商品も魅力をなくすことになってしまう。だが、今回試乗したサーブは、両者ともまったく不満を感じなかった。
セダンやミニバンに魅力を感じなくなったら、カブリオレを選択してみたらいかがだろうか。輸入車には予算に応じて豊富なカブリオレが用意されている。今回、試乗したサーブ9-3カブリオレもその候補の1台になることだろう。
(文=SUPER CG伊東和彦/写真=清水健太/2004年12月)

伊東 和彦
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