レクサスLS460 バージョンS(FR/8AT)/バージョンU “Iパッケージ”(FR/8AT)【短評(前編)】
レクサスの美点と弱点(前編) 2006.11.27 試乗記 レクサスLS460 バージョンS(FR/8AT)/バージョンU “Iパッケージ”(FR/8AT) ……930万500円/1155万9950円 レクサスブランド日本上陸からおよそ1年がたち、満を持して投入された「レクサスLS460」。リポーターは試乗するや、世界初の8段ATをはじめとするパワートレインが生み出す「レクサスワールド」を体験した。大物は最後に登場する
「毒蛇は急がない」=強者は自信を持ってゆっくりとやってくるという喩えである。
レクサスの国内展開から約1年、ついにシリーズ頂点に立つ「LS」が登場した。GS、ISが思惑に反して苦戦している日本の高級車市場における最強の切り札登場である。
九州、四国の高速道路を中心に約300?にわたって試乗し、また特設コースでその最新のインテリジェントシステムをテストした結果、現在のレクサス戦略がすべて、その美点も弱点もすべてこのLSの中に凝縮されていることを知った。
それは電気自動車のように動き出した
ユーザーの心をくすぐるその巧みなビジネス戦略に加え、レクサスのアメリカにおける成功を支えたのが「もはやこれは機械ではない」と表現された最高の洗練性である。最新のLS460においても、それが最大の武器であることは、乗った瞬間から理解される。
4.6リッターのV8を目覚めさせ、約2トンのボディがしずしずと動き始めたとき、あたかも電気自動車に乗っているかのような感じがする。無音であるだけでなく、エンジンからリアタイヤの間に何のジョイントも金属もないかのように、おそろしくスムーズに動き始める様子は、他の車では味わえないもので、まさに“レクサスワールド”である。
徹底的にクリアランスが詰められた駆動系、低回転におけるエンジン制御の見事さ、そして緻密にプログラムされ、それを構成するすべての部品も精緻に作られた8段自動変速機、それらが見事に奏功するからこそ、この絶妙な世界が作られるのだろう。
裏で支えるスムーズなエンジンと8段AT
確かにパワートレインは、LSに絶大な価値を与えている。単に静かなだけでない。もちろんスムーズだし、きれいに吹け上がる。低回転域から高回転までトルクが均一にあるから、あまりドラマティックに感じられないかもしれない。あるいは385psも出ていないように思えても仕方がない。
それはひとえにスムーズさと静かさのためで、よく観察すると、むしろ影武者のようにしっかりとクルマ全体の動きを底で支えているのがわかる。8段ATがスムーズで、ドライバーの意思を事前に読みとったように静か、かつ無振動に働いているがゆえに、かえってなんとなくスポーティさを感じにくいのかもしれない。
実際に日本の道路で体感できる速度域では、まったくスピードの感覚が掴めない。たとえば8速100km/hではエンジンは1500rpmしか回っておらず、常に舞台裏の存在だ。ましてやその中で8本のピストンが激しく上下し、ガソリンが爆発燃焼しているという実感は全くない。ほのかなハミングがスカットルの向こうから聞かれるだけで、穏やかな排気音もその気にならない限りは、感知できない。そして太いタイヤが路面を蹴っている音は、あたかも遠い潮騒のようなものだ。
200km以下で走るなら、レクサスLSは平和なクルマである。(後編に続く)
(文=大川悠/写真=荒川正幸/2006年11月)
・レクサスLS460 バージョンS(FR/8AT)/バージョンU “Iパッケージ”(FR/8AT)(後編)
http://www.webcg.net/WEBCG/impressions/000018842.html
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大川 悠
1944年生まれ。自動車専門誌『CAR GRAPHIC』編集部に在籍後、自動車専門誌『NAVI』を編集長として創刊。『webCG』の立ち上げにも関わった。現在は隠居生活の傍ら、クルマや建築、都市、デザインなどの雑文書きを楽しんでいる。
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