ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)
四番に送りバント 2026.06.01 試乗記 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。当時の事情は分かるものの……
世界的なハイブリッドシフトも相まって今や日本車の金城湯池となりつつあるCセグメント級SUV市場。そのど真ん中にいるクルマがCR-Vだ。例えば2025年の北米での販売台数は40万台オーバーと、48万台の「RAV4」を追いかける位置にいる。当然ながらホンダの世界販売においてはトップ銘柄だ。
そんな金看板が、日本市場においては引っ込めては出し……を繰り返す落ち着きのない扱いとなっているのはなぜだろう。
2010年代に4代目をいったん退場させた際には、リージョンごとに開発・販売の一気通貫を励行する六極体制が招いた高コスト化の見直しに伴い、SUVの国内販売を「ヴェゼル」に束ねるという目的があった。その後、再投入された5代目が2022年に退いた理由は、グローバル化によるサイズ拡大が国内にミートしないという分析のもと、日本の需要を「ZR-V」に担わせるという計画に基づいたものだ。
そして今回、6代目のCR-Vが他地域から一周遅れて日本市場に再々投入されるようになったのは、ZR-Vではサイズが小さいという日本市場の声をくんだものだという。
……と、絵に描いたような「だめんず」ぶりに、女子ならずともブチキレて当然ではないだろうか。変化の激しすぎるご時世ゆえデマンドの読み違えは致し方ない一面もあるとはいえ、この優柔不断が販売ナンバー1銘柄にラインナップの埋め草まがいの仕事をやらせているわけだ。ついでに加えれば「インサイト」もまたしかりで、気づけば同じ名前を4つのモデルに与えている。第1形態の崇高さや愛らしさはいずこやら、話がゴジラなら第4形態は東京壊滅級の大惨事だ。洞察力不足にもほどがある。
世界のSUVの中心的サイズ
と、そんな周囲のもんもんをこれからどうやって解きほぐしていくのかがホンダの四輪事業に求められるミッションのひとつとなるのだろう。幸いなのは既売車種たちをみるに、魅力的な商品を生むエンジニアリング的な素地は残っていることだ。ことパワートレインについては、ライバルの隙を突いて攻めるものを備えている。その要が「e:HEV」に用いられる2リッター4気筒エンジンだ。グダグダの末、タイから輸入されることと相成ったCR-Vが搭載するのもこのユニットである。
全長4700mmの全幅1865mmという数値は、アウディになぞらえれば「Q3」というより「Q5」に近い。それでもCR-Vはアーキテクチャー的には「シビック」などと同じくCセグメント級ということになる。多少の差はあれどRAV4や「ローグ(エクストレイル)」「フォレスター」なども同じくくりだ。そしてフルモデルチェンジした「CX-5」もこれらに寸法を合わせてきた。個人的にはデカいなあとは思うが、これが世のSUVの中央値ということになる。
それでもデザインがスクエア基調に変わり、感覚的にも車両感覚がつかみやすいこともあってか、運転しづらさを感じることはない。後端部のキックアップはCR-Vのアイデンティティーだから仕方ないとして、そこ以外のベルトラインは水平で側方視界の切り取られ方も自然だし、ピラー内側のトリム形状も他のホンダ車と同様に死角を抑える配慮がなされている。
内装も昨今のホンダ車らしく水平線がしっかり通されていて、面白みには乏しいかもしれないが、清潔で健康的な印象だ。人間工学的にもきれいにつじつまが合っているから、ドラポジ設定を詰め気味に設定しても違和感や窮屈さは感じられない。と、その位置決めで後席に回ってみると、前型よりさらに40mm伸ばされたホイールベースのおかげもあってか、足元空間の広さは2つ上のセグメントにも迫るほどだ。加えて荷室長も前型より50mm長くなっているが、前型と違って後席を倒して荷室を拡大した際に段差ができてしまう。ホンダ車の荷室は完全フラットという先入観がある自分にとって、これは残念なポイントだった。
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機械式4WDならではの挙動
CR-Vの四駆システムはe:HEVのパワートレインながらリアアクスルはモーターではなくエンジンから機械的に接続・駆動する変則的な方法だ。スバルの「S:HEV」も同様に機械的な接続だが、低負荷巡航などごく一部の状況を除けば常に後軸が回っている。ホンダのそれはドライブモードや運転状況に応じて、間にかませた多板クラッチで駆動トルクをリニアに制御するリアルタイムAWDを採用している。
CR-Vはその制御判定にヨーレートや舵角など旋回側のデータを加えて「インテリジェントコントロール」化したのが特徴だ。ミューの低い降雪路での試乗では、アクセルを抜くだけで後軸の駆動を止めて軽くはない車体をスッとイン側に寄せるなど、安心感の高い振る舞いに感心させられた覚えがある。ゴリゴリの凹凸路など難所の走破性方面に過度な期待は禁物だが、継続的な縦方向のトラクション能力など、メカ四駆を残している意味は確かにあるなと思わされた。ホンダはすでに後軸をモーター駆動とする新しいハイブリッド四駆のシステムを開発中だが、車種によっては現状のリアルタイムAWDを採用し続ける意味もあるだろう。世界各地で販売され多用途に乗られるCR-Vなどはその筆頭となるはずだ。
この四駆をつかさどるくだんの2リッター4気筒エンジンは、とにかく音・振動まわりのデキがよく、発電メインなe:HEVの仕事をさせても気に障るところがまったくない。そして高負荷状態では軽やかな回転フィールとともに気持ちのいい吹け音も聞かせてくれる。「プレリュード」やシビックの「S+シフト」も、このエンジンがなければ魅力が著しくスポイルされるだろう。巨艦トヨタのTHS+e-Fourに対すれば燃費では間違いなく一段劣るも、このパワートレインとリアルタイムAWDがあれば勝負は互角に持ち込めるだろう。なんだかんだでホンダの勝ち技は内燃機だとあらためて思い知らされる。
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弱気な販売目標にも納得
個人的にホンダのクルマの乗り心地と運動性能のバランス点は、特にCセグメント級においては欧州ブランドとガチで対峙(たいじ)できるところにあると思っているが、そんなひいき目を抜きにしてもCR-Vの走りの質感にはちょっと驚かされた。クラス離れしているのは後席の広さだけではなく、そのライドフィールはDセグメント級と言っても過言ではない。真っすぐを普通に走ってみても車体はズンッと据わっていて、大径タイヤをものともせず多少の凹凸は事もなげにいなしていく。バネ下からの情報はきちんと伝わりながらも上屋の動きは始終フラットで、仮に乗員が揺すられたとしてもその動きはおうようだ。スラスラとニュートラルな山道での曲がりからはにわかに想像できない、むっちりと実の詰まった転がりの感触はライバルとは一線を画している。
さりとて、Dセグメント級に近づきつつあるのは価格もしかりと知れば興ざめしてしまうのも無理はない。昨今のホンダのクルマは日産やマツダとは違ってブッコミというかインクルーシブというか、さまざまな装備をあらかた載せての値づけが多い。CR-Vはタイ生産の輸入車扱いということもあってほぼ全盛り、満艦飾の取材車でさえ後載せはカーペットやETCくらいのものだった。その周知が足りないとはいえ、そして最上位グレードとはいえ、やっぱり577万円余りの値札では厳しい。ちなみに同じくハイブリッド四駆のみの設定となるRAV4の価格は450万円~だ。価格で太刀打ちしようにも、この円安ではにっちもさっちもいかないだろう。
果たしてCR-V、それもあっての月販目標400台なのだろうか。結果的には値札にくじけそうなお客さんを安定供給のZR-Vに誘導するためのかませ犬に……と、意地悪くいえばそんな風にもみえてくる。乗ればホンダの今を語るにふさわしい出来栄えであるだけに、ホームで真正面から戦わせてもらえないこの苦しい状況はひたすら惜しい。
(文=渡辺敏史/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=本田技研工業)
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テスト車のデータ
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4700×1865×1690mm
ホイールベース:2700mm
車重:1830kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
エンジン最高出力:148PS(109kW)/6100rpm
エンジン最大トルク:183N・m(18.7kgf・m)/4500rpm
モーター最高出力:184PS(135kW)/5000-8000rpm
モーター最大トルク:335N・m(34.2kgf・m)/0-2000rpm
タイヤ:(前)235/55R19 101Y XL/(後)235/55R19 101Y XL(ミシュラン・ラティチュード スポーツ3)
燃費:18.0km/リッター(WLTCモード)
価格:577万9400円/テスト車=597万7400円
オプション装備:ボディーカラー<プラチナホワイトパール>(4万4000円) ※以下、販売店オプション フロアマットカーペット<プレミアム>(5万9400円)/ドライブレコーダー2カメラ(5万9400円)/発話型ETC2.0車載器(3万0800円)/取り付けアタッチメント(4400円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:2643km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(6)/山岳路(1)
テスト距離:206.7km
使用燃料:13.6リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:15.2km/リッター(満タン法)/15.3km/リッター(車載燃費計計測値)

渡辺 敏史
自動車評論家。中古車に新車、国産車に輸入車、チューニングカーから未来の乗り物まで、どんなボールも打ち返す縦横無尽の自動車ライター。二輪・四輪誌の編集に携わった後でフリーランスとして独立。海外の取材にも積極的で、今日も空港カレーに舌鼓を打ちつつ、世界中を飛び回る。
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