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第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る

2026.06.06 エディターから一言 玉川 ニコ
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スバルの群馬製作所で行われた、新オフセット前面衝突試験のデモンストレーションの様子。50km/hといえば一般道を流す程度の車速だが、それでも衝撃はすさまじく、試験車両の「フォレスター」は宙に浮かんばかりだった。
スバルの群馬製作所で行われた、新オフセット前面衝突試験のデモンストレーションの様子。50km/hといえば一般道を流す程度の車速だが、それでも衝撃はすさまじく、試験車両の「フォレスター」は宙に浮かんばかりだった。拡大

相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!?  人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメント(JNCAP)で最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。

衝突試験のデモンストレーションに供された「スバル・フォレスター」。本取材会の後、2026年5月28日に2025年度のJNCAPで「ファイブスター大賞」を獲得したことが正式に発表された。
衝突試験のデモンストレーションに供された「スバル・フォレスター」。本取材会の後、2026年5月28日に2025年度のJNCAPで「ファイブスター大賞」を獲得したことが正式に発表された。拡大
スバルの安全技術開発に関する取り組みを説明する、商品革新本部の藤居拓也プロジェクトゼネラルマネージャー。
スバルの安全技術開発に関する取り組みを説明する、商品革新本部の藤居拓也プロジェクトゼネラルマネージャー。拡大
新しいオフセット前面衝突試験は、より「自動車同士の正面衝突事故」を想定したものとなっている。テスト内容としては、試験車両とアルミハニカム製のデフォーマブルバリアを備えた総重量1200kgの台車を、50km/hで対面走行させ、試験自動車の運転席側(全幅の50%)を衝突させるというものだ。
新しいオフセット前面衝突試験は、より「自動車同士の正面衝突事故」を想定したものとなっている。テスト内容としては、試験車両とアルミハニカム製のデフォーマブルバリアを備えた総重量1200kgの台車を、50km/hで対面走行させ、試験自動車の運転席側(全幅の50%)を衝突させるというものだ。拡大
衝突によって変形した台車のデフォーマブルバリア。バリアには実際の自動車のように、変形とともに荷重が増加する(奥側が固くなっており、つぶれるほど荷重が増える)よう設計されている。その形状の変化から、衝突相手のクルマに対する加害性についても評価できるのだ。
衝突によって変形した台車のデフォーマブルバリア。バリアには実際の自動車のように、変形とともに荷重が増加する(奥側が固くなっており、つぶれるほど荷重が増える)よう設計されている。その形状の変化から、衝突相手のクルマに対する加害性についても評価できるのだ。拡大

新しい衝突試験でも高評価を獲得

2026年の5月某日、スバルの群馬製作所内 衝突試験場において、「SUBARUフォレスター JNCAP『自動車安全性能2025 ファイブスター大賞』受賞を受けた安全訴求イベント」という、いささか長いタイトルの取材会が実施された。

イベント名にある“JNCAP”とは、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が実施する、自動車の安全性能評価のことだ。事前の案内メールによれば「取材会では、2025年4月に発表した『フォレスター』を用いた衝突試験のデモや、予防安全性能の解説を実施します」とあったので、筆者は今年度のJNCAPで実施された「新オフセット前面衝突」と同じ実験を、あらためてスバルの衝突試験場で行い、その様子と結果をメディアに見てもらう――という内容だろうと思ったわけだが、実際はそうではなかった。

いや。JNCAP2025で好成績を収めたフォレスターを、あらためてガッチャーンッ! とやるのが取材会のメインディッシュであったことは事実だ。だが、もしイベント全体の内容を誰かに伝えるのであれば、筆者ならこう書くだろう。「スバルの“総合安全技術”をあらためて説明する取材会が、同社の群馬製作所内 衝突試験場で開催されました」と。

とはいえ、前菜から順番にメニューを説明してもかえってまどろっこしいので、まずはメインのお皿である「フォレスターの実車を使った新オフセット前面衝突」の様子からご報告しよう。

JNCAPのオフセット前面衝突試験は、2024年度から新方式が採用されている。それまでは「壁に固定されたアルミ製のバリアに、自車幅の約40%を衝突させる」という方式を採っていたが、2024年度からは「試験車両と移動する専用台車をそれぞれ50km/hで走らせ、お互いの幅の50%ずつを衝突させる」という方式に変更。そして従来の方式が「自車の乗員への衝撃軽減とキャビン変形防止」を主な評価点としていたのに対し、新方式ではその内容にプラスして、「衝突した相手車両に対するダメージの軽減(共存性能)」も評価対象としている。

新型スバル・フォレスターはJNCAP2025における同テストで「レベル5」の最高評価を得たわけだが、それとまったく同様のテストが、スバル群馬製作所内の衝突試験場で行われたのだ。

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乗員の生存空間を確保し、速やかな救出を可能にする

「衝突の瞬間は本当に“一瞬”であり、人間のまばたきは、一般的に約0.2秒といわれています。まばたきをすると前面衝突の瞬間を見損ないますので、みなさん、まばたき厳禁でお願いします」というアナウンスとカウントダウンの後、レール上を向かって左からフォレスターが、右からJNCAPで使用されるものとまったく同じ台車が、それぞれ50km/hで進入してくる。そしてごう音とともにオフセット前面衝突が発生し、双方のフロントセクションが大破した。

50km/hというのは「広い幹線道路をのんびり安全に流している程度」の速度だが、そんな状態で走っていても、相対速度100km/hともなればこんなにも激しい衝突音が発生するのか。そしてクルマは大破するのか――と、まずはそんなことにビビる。そして「死ぬのも殺すのも嫌だから、今後はよりいっそうの安全運転に励もう……」と決意しながら、フロントセクションが大破したフォレスターに近づいた。

「あの衝突だと普通に考えて死ぬかもしれないし、よくて大腿(だいたい)骨骨折だろうな……」などと考えつつクルマを観察してみると、あら、意外とそうでもない。もちろんフロントセクションは派手に逝っているわけだが、キャビンは「ほぼ無傷」と言ってもさほど大げさではない状態。ドアを開けても、「エンジンなどが車内にめり込んで、ドライバーとパッセンジャーの脚部を激しく損傷させる」という状態でもなかった。というか、この状態でもドアが普通に開くではないか。いや「普通に開く」はやや大げさだが、ある程度は普通に開くため、これなら事故後に、乗員が車内に閉じ込められてしまうこともないだろう。

少し離れた場所には、JNCAP2025の「フルラップ前面衝突」で使用されたフォレスターも展示されていたため、そちらの詳細も見てみたが、その状態は基本的に、今まさに目の前でオフセット衝突を披露した車両と同様である。すなわちフロントセクションは(オフセットのとき以上に)激しく損傷しているが、キャビンは特に大きくは変形しておらず、ドアも普通に開く――ということだ。

デモンストレーション直後の試験車両の様子。すさまじい衝撃でフロントセクションは大破しているが、キャビンの形状は保たれている。
デモンストレーション直後の試験車両の様子。すさまじい衝撃でフロントセクションは大破しているが、キャビンの形状は保たれている。拡大
キャビンやドアまわりについては、衝突の衝撃でドアが開かないようにする(乗員が放出されないようにするため)のと同時に、事故後には極力きちんとドアが開くよう、各部が設計されている。スムーズな乗員救助を可能にするためだ。
キャビンやドアまわりについては、衝突の衝撃でドアが開かないようにする(乗員が放出されないようにするため)のと同時に、事故後には極力きちんとドアが開くよう、各部が設計されている。スムーズな乗員救助を可能にするためだ。拡大
エアバッグが展開した車内の様子。インストゥルメントパネルまわりの形状も保たれており、筆者が懸念していたヒザまわりも含めて、生存スペースは確保されていた。
エアバッグが展開した車内の様子。インストゥルメントパネルまわりの形状も保たれており、筆者が懸念していたヒザまわりも含めて、生存スペースは確保されていた。拡大
JNCAP2025の「フルラップ前面衝突」に供された「フォレスター」。この試験では、コンクリー卜の障壁に車速50km/hで衝突させるのだが、フォレスターはそこでも高い安全性能を示した。
JNCAP2025の「フルラップ前面衝突」に供された「フォレスター」。この試験では、コンクリー卜の障壁に車速50km/hで衝突させるのだが、フォレスターはそこでも高い安全性能を示した。拡大

衝突試験のすべての評価で「レベル5」の評価を得る

衝突の際に自車のキャビンと乗員を守り、なおかつ相手方へのダメージも軽減させる強度計算や構造設計は、つくり手にとって、開発に終わりのない難しい問題に違いない。むろん、このフォレスターの性能をしてもゴールというわけではないのだろうが、それでもこのクルマは、先述したとおり、JNCAP2025の新オフセット前面衝突試験で満点のレベル5を獲得。のみならず、「フルラップ前面衝突」「側面衝突」「後面衝突頸部(けいぶ)保護」「歩行者頭部保護」「歩行者脚部保護」「シートベルトリマインダー」の各項目でもレベル5の評価を得ており、衝突安全性能評価の総評で「Aランク」を獲得した。

さらに「予防安全性能評価」もAランクとされた結果、「予防安全と衝突安全の合計得点が154.07点以上で、なおかつ事故自動緊急通報装置が先進型である車両」に与えられる「ファイブスター(★★★★★)」を受賞。そしてファイブスター受賞車両のなかでも最高得点車に与えられる、「ファイブスター大賞」も受賞したわけだ。

……以上。新オフセット前面衝突とJNCAP2025におけるフォレスターのファイブスター大賞受賞についてご報告してきたわけだが、この内容が取材会当日のすべてではなかった。実験場内での衝突実験が行われる前に、繰り返し(本当に繰り返し!)、「スバルおよびスバル フォレスターの総合安全の取り組み」について、各担当部署からのプレゼンテーションが行われたのだ。

その内容は、誤解を恐れず言えば退屈だった。なぜならば筆者は「プライベートでもスバル車に乗っている(いちおう)プロの自動車ライター」として、スバルの総合安全に対する取り組み全般について、すでにある程度は理解していたからだ。

「ファイブスター大賞」とは、要は「その年にJNCAPで試験された車両のなかでも、最も成績が高かったクルマ」に与えられる賞だ。2020年に、それぞれ個別に表彰されていた衝突安全、予防安全の大賞が統合され、かつ事故自動通報装置の評価も組み込むかたちで誕生した。
「ファイブスター大賞」とは、要は「その年にJNCAPで試験された車両のなかでも、最も成績が高かったクルマ」に与えられる賞だ。2020年に、それぞれ個別に表彰されていた衝突安全、予防安全の大賞が統合され、かつ事故自動通報装置の評価も組み込むかたちで誕生した。拡大
スバルは「レヴォーグ」(2020年度)、「レガシィ アウトバック」(2021年度)、「クロストレック/インプレッサ」(2023年度)、そして今回の「フォレスター」(2025年度)と、過去に5度も「ファイブスター大賞」を獲得している。
スバルは「レヴォーグ」(2020年度)、「レガシィ アウトバック」(2021年度)、「クロストレック/インプレッサ」(2023年度)、そして今回の「フォレスター」(2025年度)と、過去に5度も「ファイブスター大賞」を獲得している。拡大
長年にわたり、安全性能の開発に積極的に取り組んできたスバル。JNCAPでは現在の表彰制度が始まる前にも、多数のクルマが「衝突安全性能評価大賞」などを獲得してきた。写真はスバルにとって最初の“JNCAP大賞”受賞車である3代目「インプレッサ」(2007年度受賞)。
長年にわたり、安全性能の開発に積極的に取り組んできたスバル。JNCAPでは現在の表彰制度が始まる前にも、多数のクルマが「衝突安全性能評価大賞」などを獲得してきた。写真はスバルにとって最初の“JNCAP大賞”受賞車である3代目「インプレッサ」(2007年度受賞)。拡大

すべての取り組みに熱意を感じる

中島飛行機という航空機メーカーを源流としているだけあって、「絶対に事故を起こさせない」という安全思想と「搭乗者の安全を守る」技術が、モノづくりの根底にあるということ。「アイサイト」や衝突安全うんぬんの前に「0次安全(視界のよさ/パッケージ)」と「走行安全(動的性能/危険回避性能)」を大事にしているということ。そして新型フォレスターでは、「予防安全」の一部として、広角単眼カメラがアイサイトに搭載されたこと等々については、「いまさらおっしゃらずとも、知ってますがな」と言うほかなかった。

勉強不足ゆえに筆者が知らなかったことといえば、「新型フォレスターは、サイクリストの頭部衝突エリアをカバーし、事故時の致命傷リスクを大幅に軽減する『サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ』を世界初採用していた」ということぐらいである。

だが入れ替わり立ち替わり、各分野の開発担当者が行った0次安全/走行安全/予防安全/衝突安全のプレゼンテーションは、退屈であると同時に、スバルというメーカーの性格を象徴するものでもあったように思う。誰からも共通して、「本当に知っていただきたいのはフォレスターのファイブスター大賞受賞うんぬんではなく、わが社の“根本的で総合的な安全への取り組み”についてなのです」という心の声が、聞こえてきたような気がした。

幸いにして筆者は、運転免許を取得して以来ウン十年、交通事故を起こしたことももらったこともない。それゆえ、日々進化する衝突安全性能やエアバッグ等々の恩恵を受けた経験は一度もないのだが、スバル車の0次安全と走行安全には、ここ数年間、かなりの恩恵を受けていると本気で思う。そして、体や目などがより“おっさん化”していく今後数年から10年ほど先の自分を考えると、不本意ではあるが、衝突安全などに関する性能の恩恵にあずかってしまう可能性も、ゼロではないのだ。

だからこそ「事故を未然に防ぐ技術」と、万一起きてしまったときに己と他者を守る「衝突安全性」を、ここまで真剣に、かつ効果的に追求している人々がいるメーカーと出会えた自分を、ある意味幸福に思うのである。もちろん、本当の意味での衝突安全性など、一生体感しないに越したことはないのだが。

(文=玉川ニコ/写真=スバル、玉川ニコ/編集=堀田剛資)

今回のデモで紹介された衝突安全性の高さに加え、「アイサイト」に代表される充実した予防安全・運転支援システム、操縦安定性や操作応答性の高さ、そして視界の広さや見切りのよさ等々、スバルはとにかく、クルマの安全性にこだわりを持つメーカーだ。
今回のデモで紹介された衝突安全性の高さに加え、「アイサイト」に代表される充実した予防安全・運転支援システム、操縦安定性や操作応答性の高さ、そして視界の広さや見切りのよさ等々、スバルはとにかく、クルマの安全性にこだわりを持つメーカーだ。拡大
スバルは戦前の中島飛行機を起源とする自動車メーカーであり、それゆえ自動車事業への参入当初より、安全に関する取り組みに積極的だった。
スバルは戦前の中島飛行機を起源とする自動車メーカーであり、それゆえ自動車事業への参入当初より、安全に関する取り組みに積極的だった。拡大
1958年に登場した「スバル360」のころより、安全に関する規制がないなかでも自主的に衝突実験を行ってきたというから驚きだ。
1958年に登場した「スバル360」のころより、安全に関する規制がないなかでも自主的に衝突実験を行ってきたというから驚きだ。拡大
現行型「フォレスター」に装備される「サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ」。展開範囲を従来より400mm拡大することで、サイクリストの頭部衝突エリアをカバー。事故時の致命傷リスクを軽減する設計となっている。
現行型「フォレスター」に装備される「サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ」。展開範囲を従来より400mm拡大することで、サイクリストの頭部衝突エリアをカバー。事故時の致命傷リスクを軽減する設計となっている。拡大
JNCAP2025において、衝突安全、予防安全の両方で高い評価を獲得した「スバル・フォレスター」。前者の恩恵にあずかるのはできれば避けたいところだが、未来というのはなにが起きるかわからないもの。安全なクルマを選ぶのに越したことはないだろう。
JNCAP2025において、衝突安全、予防安全の両方で高い評価を獲得した「スバル・フォレスター」。前者の恩恵にあずかるのはできれば避けたいところだが、未来というのはなにが起きるかわからないもの。安全なクルマを選ぶのに越したことはないだろう。拡大
玉川 ニコ

玉川 ニコ

自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。

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