第872回:「フォレスター」がJNCAPで最高評価を獲得! “安全”に対するスバルの不断の取り組みに迫る
2026.06.06 エディターから一言 拡大 |
相対速度100km/hの衝突後でも、普通にドアが開く!? 人気のSUV「スバル・フォレスター」が、日本の自動車アセスメント(JNCAP)で最高評価を獲得した。安全なクルマづくりを第一とするスバルの取り組みを、群馬製作所で行われた衝突試験デモの様子とともにリポートする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
新しい衝突試験でも高評価を獲得
2026年の5月某日、スバルの群馬製作所内 衝突試験場において、「SUBARUフォレスター JNCAP『自動車安全性能2025 ファイブスター大賞』受賞を受けた安全訴求イベント」という、いささか長いタイトルの取材会が実施された。
イベント名にある“JNCAP”とは、国土交通省と独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA)が実施する、自動車の安全性能評価のことだ。事前の案内メールによれば「取材会では、2025年4月に発表した『フォレスター』を用いた衝突試験のデモや、予防安全性能の解説を実施します」とあったので、筆者は今年度のJNCAPで実施された「新オフセット前面衝突」と同じ実験を、あらためてスバルの衝突試験場で行い、その様子と結果をメディアに見てもらう――という内容だろうと思ったわけだが、実際はそうではなかった。
いや。JNCAP2025で好成績を収めたフォレスターを、あらためてガッチャーンッ! とやるのが取材会のメインディッシュであったことは事実だ。だが、もしイベント全体の内容を誰かに伝えるのであれば、筆者ならこう書くだろう。「スバルの“総合安全技術”をあらためて説明する取材会が、同社の群馬製作所内 衝突試験場で開催されました」と。
とはいえ、前菜から順番にメニューを説明してもかえってまどろっこしいので、まずはメインのお皿である「フォレスターの実車を使った新オフセット前面衝突」の様子からご報告しよう。
JNCAPのオフセット前面衝突試験は、2024年度から新方式が採用されている。それまでは「壁に固定されたアルミ製のバリアに、自車幅の約40%を衝突させる」という方式を採っていたが、2024年度からは「試験車両と移動する専用台車をそれぞれ50km/hで走らせ、お互いの幅の50%ずつを衝突させる」という方式に変更。そして従来の方式が「自車の乗員への衝撃軽減とキャビン変形防止」を主な評価点としていたのに対し、新方式ではその内容にプラスして、「衝突した相手車両に対するダメージの軽減(共存性能)」も評価対象としている。
新型スバル・フォレスターはJNCAP2025における同テストで「レベル5」の最高評価を得たわけだが、それとまったく同様のテストが、スバル群馬製作所内の衝突試験場で行われたのだ。
乗員の生存空間を確保し、速やかな救出を可能にする
「衝突の瞬間は本当に“一瞬”であり、人間のまばたきは、一般的に約0.2秒といわれています。まばたきをすると前面衝突の瞬間を見損ないますので、みなさん、まばたき厳禁でお願いします」というアナウンスとカウントダウンの後、レール上を向かって左からフォレスターが、右からJNCAPで使用されるものとまったく同じ台車が、それぞれ50km/hで進入してくる。そしてごう音とともにオフセット前面衝突が発生し、双方のフロントセクションが大破した。
50km/hというのは「広い幹線道路をのんびり安全に流している程度」の速度だが、そんな状態で走っていても、相対速度100km/hともなればこんなにも激しい衝突音が発生するのか。そしてクルマは大破するのか――と、まずはそんなことにビビる。そして「死ぬのも殺すのも嫌だから、今後はよりいっそうの安全運転に励もう……」と決意しながら、フロントセクションが大破したフォレスターに近づいた。
「あの衝突だと普通に考えて死ぬかもしれないし、よくて大腿(だいたい)骨骨折だろうな……」などと考えつつクルマを観察してみると、あら、意外とそうでもない。もちろんフロントセクションは派手に逝っているわけだが、キャビンは「ほぼ無傷」と言ってもさほど大げさではない状態。ドアを開けても、「エンジンなどが車内にめり込んで、ドライバーとパッセンジャーの脚部を激しく損傷させる」という状態でもなかった。というか、この状態でもドアが普通に開くではないか。いや「普通に開く」はやや大げさだが、ある程度は普通に開くため、これなら事故後に、乗員が車内に閉じ込められてしまうこともないだろう。
少し離れた場所には、JNCAP2025の「フルラップ前面衝突」で使用されたフォレスターも展示されていたため、そちらの詳細も見てみたが、その状態は基本的に、今まさに目の前でオフセット衝突を披露した車両と同様である。すなわちフロントセクションは(オフセットのとき以上に)激しく損傷しているが、キャビンは特に大きくは変形しておらず、ドアも普通に開く――ということだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
衝突試験のすべての評価で「レベル5」の評価を得る
衝突の際に自車のキャビンと乗員を守り、なおかつ相手方へのダメージも軽減させる強度計算や構造設計は、つくり手にとって、開発に終わりのない難しい問題に違いない。むろん、このフォレスターの性能をしてもゴールというわけではないのだろうが、それでもこのクルマは、先述したとおり、JNCAP2025の新オフセット前面衝突試験で満点のレベル5を獲得。のみならず、「フルラップ前面衝突」「側面衝突」「後面衝突頸部(けいぶ)保護」「歩行者頭部保護」「歩行者脚部保護」「シートベルトリマインダー」の各項目でもレベル5の評価を得ており、衝突安全性能評価の総評で「Aランク」を獲得した。
さらに「予防安全性能評価」もAランクとされた結果、「予防安全と衝突安全の合計得点が154.07点以上で、なおかつ事故自動緊急通報装置が先進型である車両」に与えられる「ファイブスター(★★★★★)」を受賞。そしてファイブスター受賞車両のなかでも最高得点車に与えられる、「ファイブスター大賞」も受賞したわけだ。
……以上。新オフセット前面衝突とJNCAP2025におけるフォレスターのファイブスター大賞受賞についてご報告してきたわけだが、この内容が取材会当日のすべてではなかった。実験場内での衝突実験が行われる前に、繰り返し(本当に繰り返し!)、「スバルおよびスバル フォレスターの総合安全の取り組み」について、各担当部署からのプレゼンテーションが行われたのだ。
その内容は、誤解を恐れず言えば退屈だった。なぜならば筆者は「プライベートでもスバル車に乗っている(いちおう)プロの自動車ライター」として、スバルの総合安全に対する取り組み全般について、すでにある程度は理解していたからだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
すべての取り組みに熱意を感じる
中島飛行機という航空機メーカーを源流としているだけあって、「絶対に事故を起こさせない」という安全思想と「搭乗者の安全を守る」技術が、モノづくりの根底にあるということ。「アイサイト」や衝突安全うんぬんの前に「0次安全(視界のよさ/パッケージ)」と「走行安全(動的性能/危険回避性能)」を大事にしているということ。そして新型フォレスターでは、「予防安全」の一部として、広角単眼カメラがアイサイトに搭載されたこと等々については、「いまさらおっしゃらずとも、知ってますがな」と言うほかなかった。
勉強不足ゆえに筆者が知らなかったことといえば、「新型フォレスターは、サイクリストの頭部衝突エリアをカバーし、事故時の致命傷リスクを大幅に軽減する『サイクリスト対応歩行者保護エアバッグ』を世界初採用していた」ということぐらいである。
だが入れ替わり立ち替わり、各分野の開発担当者が行った0次安全/走行安全/予防安全/衝突安全のプレゼンテーションは、退屈であると同時に、スバルというメーカーの性格を象徴するものでもあったように思う。誰からも共通して、「本当に知っていただきたいのはフォレスターのファイブスター大賞受賞うんぬんではなく、わが社の“根本的で総合的な安全への取り組み”についてなのです」という心の声が、聞こえてきたような気がした。
幸いにして筆者は、運転免許を取得して以来ウン十年、交通事故を起こしたことももらったこともない。それゆえ、日々進化する衝突安全性能やエアバッグ等々の恩恵を受けた経験は一度もないのだが、スバル車の0次安全と走行安全には、ここ数年間、かなりの恩恵を受けていると本気で思う。そして、体や目などがより“おっさん化”していく今後数年から10年ほど先の自分を考えると、不本意ではあるが、衝突安全などに関する性能の恩恵にあずかってしまう可能性も、ゼロではないのだ。
だからこそ「事故を未然に防ぐ技術」と、万一起きてしまったときに己と他者を守る「衝突安全性」を、ここまで真剣に、かつ効果的に追求している人々がいるメーカーと出会えた自分を、ある意味幸福に思うのである。もちろん、本当の意味での衝突安全性など、一生体感しないに越したことはないのだが。
(文=玉川ニコ/写真=スバル、玉川ニコ/編集=堀田剛資)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |

玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
-
第875回:キモは氷上性能! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「ウインターマックス アイスプロ」を試す 2026.7.1 違いは氷の上で表れる! ダンロップの新しいスタッドレスタイヤ「WINTER MAXX ICE-Pro(ウインターマックス アイスプロ)」に、冬の北海道で試乗。氷上性能を徹底的に追求したという新製品の、パフォーマンスの一端に触れた。
-
第874回:自動運転からワイパーまで! 自動車を支えるメガサプライヤー ボッシュのあくなき挑戦 2026.6.27 世界屈指のメガサプライヤー、ボッシュが開発中の新技術を披露! 市街地での高度な運転支援技術に、日本の方言にも対応した対話型AI、サーキット走行のノウハウを教えてくれるコーチング機能等々……興味深いその中身をリポートする。
-
第873回:ウエット路面に強み ミシュランの新タイヤ「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」を試す 2026.6.19 2026年1月29日に導入が発表されたミシュランの新製品「パイロットスポーツ5エナジー」と「プライマシー5エナジー」。これまでの特徴に加え、低燃費性能や耐摩耗性、ウエットグリップ性能のアップをうたう両モデルの走りを、クローズドコースで確かめた。
-
第871回:今年もグリーンヘルは熱かった! ニュルブルクリンク24時間レース観戦記 2026.5.27 “世界一過酷な草レース”として知られ、今年も波乱が巻き起こったニュルブルクリンク24時間レース。F1王者のフェルスタッペンも参戦するとあって、大いに盛り上がったその様子を、世界を飛び回るモータースポーツカメラマンが臨場感満点でリポートする。
-
第870回:熱きホンダをとことん楽しむ これが「Honda All Type R World Meeting 2026」だ! 2026.5.15 「シビック タイプR」をはじめ、“タイプR”の車名を持つホンダの高性能車ばかりが集う、激アツのイベントが開催された。気になるその内容は? 会場となったモビリティリゾートもてぎの様子を詳しくリポートする。
-
NEW
電気自動車の人工的な走行音はどうあるべきか?
2026.7.21あの多田哲哉のクルマQ&AEVの走行時に車内で聞こえてくる人工的な“音”は、本来、どうあるべきなのか? やはり、疑似エンジン音が最適なのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんの考えを聞いてみた。 -
NEW
アストンマーティン・ヴァンテージS(FR/8AT)【試乗記】
2026.7.21試乗記アストンマーティンの擁するFRスポーツ「ヴァンテージ」が、より高性能な「ヴァンテージS」に進化。よりたくましいエンジンを獲得し、卓越したコーナリング性能に磨きをかけつつ、“優しさ”も身につけた最新モデルの走りを報告する。 -
第340回:一にエンジン、二にカッコ
2026.7.20カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。マツダ渾身(こんしん)のラージ商品群を応援するカーマニアのひとりとして、「CX-60」と「CX-80」の動向は常に気になっている。3列シートSUV、CX-80の最新モデルにあらためて試乗して感じたこととは? -
日産は“再挑戦”でホンダは“終了” 新型「エルグランド」発売に見る、プレミアムミニバンの今
2026.7.20デイリーコラムトヨタが圧倒的なシェアを占める上級ミニバンの世界において、新型「エルグランド」で復権をねらう日産。しかし、なぜフルモデルチェンジは16年ぶりになったのか? ホンダはどうするのか? この市場の今を考察する。 -
ホンダ・インサイト(FWD)【試乗記】
2026.7.20試乗記3000台の限定で販売される新型「インサイト」は、クロスオーバー風のフォルムと、これまでのホンダ車にはなかった内外装のデザインテイストが新鮮だ。中国で生産され、日本独自の名前が与えられた新型電気自動車の走りと仕上がりを、ロングドライブで確かめた。 -
ポルシェ911カレラT(後編)
2026.7.19ミスター・スバル 辰己英治の目利きスバルとSTIでクルマの走りを鍛え、モータースポーツにも積極的に取り組んできた辰己英治さん。彼の目に、“スポーツカーの水準器”こと「ポルシェ911」はどのように映ったのだろう? 走りの楽しさを追求した「カレラT」グレードに乗っての印象を聞いた。














































